怪異 排管の中(6) 真相篇
割引あり
真相
五月の後半。空は今日も黒く厚い雲に覆われて、今にも雨を降らさんとする様相を呈していた。湿り気を帯びた暑い空気が、昼過ぎの町に漂っている。メガネをかけた背の低い男が、一人、空を恨めしそうに見上げて立っていた。と、そこへ白塗りの病院らしき建物から出てきたグレーの背広を着た大柄な男が駆け寄ってくる。
「貞平さん、お待たせしました」
「おおっ、宅間、遅いじゃねぇか!」
宅間と呼ばれた大柄な男は黒塗りの手帳を取り出すと、貞平と呼ばれた頭の薄いメガネをかけた小柄な男に見せる。二人は、広岡百合香殺人事件の担当刑事だった。
「それにしても・・・。こいつは、奇妙極まりない事件だな」
「まあ、今のところ、事件とは、まだ断定できる確証はありませんが、独房で溺れて死ぬなんて事が、あり得るんでしょうかね?」
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