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【短編小説】悪魔の水遊び-file4-

 真っ暗な空がゆっくりと朝日に彩られて、夜明けを迎える。森に棲む小鳥たちの甲高いさえずりが鼓膜こまくを揺らす。近くに流れる大きな川のせせらぎが緩やかで雄大に流れていた。

 夏の朝なのに、辺りには冷たい空気が包み込んでいる。やがて、森の木と木の間を縫って夏のお日様が顔を覗かせて、赤い光をゆっくりと差し込んでいくのである。

「うっ・・・う~ん。もう夜明けか・・・」

 イケメン夫が、うっすらと目を開けて、深緑色のコールマンテントの天井をぼんやりと見つめた。と、突然の事だった。

 隣に寝ていた可愛い娘が小さなピンク色の寝袋《シュラフ》ごとイケメン夫の右腕めがけて寝返りをうって来たのである。

「うぉっ!痛ったあああっ!」

 思わず、寝袋《シュラフ》の中で右腕を押さえて苦悶に耐えるイケメン夫。イケメン夫は悶絶もんぜつしながら、昨日のクマ一家との格闘・・いや、対決を思い出していた。

 そう、イケメン一家が昼食を作っていた時のことだ。昼食を作るため、イケメン夫と美人妻に加え、可愛い娘と将来イケメンの息子は、よりにもよってクマたちの憩いの場を勝手に占拠していたのだ。

 イケメン夫が熱していたフライパンに油を注いでいる最中だった。自分たちの憩いの場を取り戻そうとしたクマの一家が近づいてきたのである。

 慌てふためいたイケメン夫。接近するお父さん熊の勢いの押されて、手に持ったフライパンを振り上げた瞬間だった。

 注いでいた油がドジにも腕にこぼれ落ち、おっちょこちょいでゴミクズみたいな醜態により腕に大火傷を負ったのである。本当に”バカ”にもホドがある。

「おいっ!ちょっと待って!”ドジ”とか”ゴミクズ”ってなんだ!しかも、最後は”バカ”で締めくくりやがって!大体、説明文で”バカ”ってなんだっ!主役をなんだと思っているんだ!」

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