2024 J2 第20節 熊本vs岡山 レビュー

はじめまして。りっくといいます。
普段は関東でファジサポをしています。
初めてですがファジサポ視点でのレビューなるものを書いてみました。
温かい目でご一読いただけますと幸いです。

さて、試合についてですが…

数字に現れているものほど、簡単なゲームではありませんでした。シュート数は28対7、得点期待値は3.89対0.37。データ上で見れば、岡山が熊本を大きく上回ったゲームなのかもしれません。

しかし、最終盤までスコアは動かず、また後半は熊本が主導権を握る時間帯もありました。

それでも、岡山の強みを出しながらゲームを優位に進め、最後に得点を奪い勝利を掴むことができた。体力の限界の中で壁をこじ開けることができた。
経験のない大敗の後、一つ大きな自信をつかんだゲームだったのではないか、と思っています。

1.スタメン

岡山は前節と同じスタメン、一部メンバーは途中出場した天皇杯からの3連戦となりました。

一方の熊本は8人が天皇杯と同じ、うち7人は3連戦全てがスタメンとなるメンバーでした。
また熊本は前節(19節・秋田戦)で前半終了間際に退場者を出しており、後半丸々10人で戦った中でのメンバーとなります。

体力的な不安を抱えつつも継続路線で来た熊本と、天皇杯でターンオーバーし相対的にはリフレッシュできた岡山、という構図で迎えた一戦となります。

2.試合

岡山、熊本ともに3‐4‐3の形で試合は進んでいきました。
「以前よりも縦に速い攻撃が増えているような気がするので、そこはしっかりケアしていきたい。」DAZNでの試合前の木山監督のコメントでもあった通り、熊本は縦に早くパスを出していくことを意図していているように感じました。
その中で岡山の守り方としてはもちろん「強くいく」こと(これも試合前のコメントで触れいていましたが、いつも通りですね)。岡山としては縦に早く出させない守備がこの試合では徹底されていました。

象徴的なのはこの試合の中盤の選手たちのこぼれ球奪取数のスタッツ。熊本は中盤スタメン4人+途中出場の東山・阿部で5に対し、岡山中盤スタメン4人+途中出場の輪笠で17。
フォーメーションが噛み合う相手同士のため、局面局面でボールの奪い合いとなりやすい状況の中、相手の縦パスからの展開を阻害し、結果としてボール奪取に多く成功することができたのです。
ちなみに岡山の中盤の選手のこぼれ球奪取数17は、前節鹿児島戦(11)や前回勝利した仙台戦(2)よりも多い数字です。

とりわけ目立ったのが右WB柳貴博の奪取数5。中央はやらせず熊本の組み立てをサイドに追いやったところで奪い取れていたことがわかる数字になっています。


もう一つ、熊本の攻撃で特徴的だったのは、DFラインからのビルドアップの際に藤井・古長谷の2シャドーがかなり低い位置、具体的には岡山の竹内・藤田のWボランチよりも熊本3バック側まで降りてくることです。

上記リンクは熊本の2シャドーの一角に入った藤井のヒートマップになります。シャドーとして前目のポジションでパスを受けるだけでなく、後列まで下がって受けに来ているのがわかるのではないでしょうか。
これはおそらくボールを持った局面で数的優位をより作ることで優位に立ちながら前進したい、という意図があったのではないかと思います。
もっとも開始10分ごろまではシャドーが積極的に組み立てに参加する素振りはなかったのですが。もしかすると開始直後から熊本の縦パスを岡山が遮断できたことで、より安全に前進する策として熊本の2シャドーが低い位置に下がるようになったのかもしれません。

安定した守備を見せられている岡山は、一度ボールを奪えばまず前線3人に預ける、ということが共通認識としてできていました。その際、特にWボランチからのパスはワンタッチで出すことが徹底されていたように思います。ワンタッチで出すことで相手の動く、考える時間を抑え、もしボールを失ったとしても奪い返しにいけばいい、前目で奪うことができればそのままチャンスにつながるので、という考え方ですね。
ともすればバランスを欠いてカウンターを浴びるリスクもありますが、そこはWボランチがバランスを取りながら攻められていること、また失ったあとにすぐにボールを奪いきれていることがそうならない要因となっていました。

また前線3人(ルカオ・岩渕・早川)の関係性も非常に良いものがあります。3人それぞれが各々の動き出しをよく見てボールを配給できていました。
例えば17分のルカオの裏抜けをみた早川のパス、32分の岩渕の抜け出しを予測したルカオのヒールキック、などでしょうか。他にも随所にお互いの動き出しにあったプレーを見せていました。
岩渕・早川の2シャドーはボールを扱う技術がとても高く、またルカオも出てくるボールの質さえ間違わなければそうそうボールを失わないため、熊本のDFはかなり手を焼いているように見えました。
そして前線の動きに呼応するように、中盤の4人や、右CBの阿部も高い位置を取りパスコースの創出に関わっていました。

ワンタッチで前へ前へ出てくるボールに、次々とボールに関わってくる後列の選手たち。熊本としてはプレスでのボール奪取が難しい形になりました。

そんな中でも、熊本は中央のスペースはやらせまいと、全員での守備が徹底されていました。またこの試合は熊本GKの田代が何度も何度もビッグセーブを見せ(主観ですが試合を通じ6度のセーブ、また飛び出してのクリアもあり)、岡山としてはゴールが奪えず焦れる展開となりました。

とはいえ岡山もチーム全体で運動量を使っており、後半15分に入ると前半のようなチーム全体で縦パスに規制をかけ、ボールを奪っていくプレーが難しくなってきます。
熊本はこの時間帯から徐々に自分たちでボールを握れるようになります。
62分には岡山の前線3人やボランチが縦へのパスコースを切っている中で縦パスを通し、CF大崎のポストプレーから最終的にアーリークロスを上げる展開へ持ち込みます。直後には古長谷の持ち運びから大崎に預け、コンビネーションから古長谷が抜け出すシーンも作ります。

劣勢に立つ岡山ですが、5-4のブロックを敷く、また熊本のビルドアップの際には前線3人でラインを形成し簡単には縦パスを入れさせない、といったことを徹底できていました。
また、熊本も連戦下の影響は大きく、徐々に攻勢がトーンダウンする形になったのも岡山としては幸いだったかもしれません。

そんな中で最後に末吉がゴールをこじ開けられたのは、ただ体力的に再び優位に立てただけでなく、その直前のシーンで右サイドで攻撃を組み立て、跳ね返ったボールを左サイドに展開、右サイドへサイドチェンジ、とチームとして幾重にもサイドに揺さぶったことで熊本の足が止まったのだ、と個人的には思っています。

3.結びに

天皇杯でのショッキングな敗戦から、自分たちの戦い方を必死に見つめ直した3日間だったと推察します。この試合の結果がふるわなければ、自分たちの目指す昇格という目標だけでなく、これまで培ってきた自分たちらしさという自信も失いかねない、そんな試合だったと思います。それだけに、これだけ主導権を握り、最終的に勝つことができたのは大きな自信につながってくれると思います。

最後に末吉のゴールが決まった瞬間、もちろん喜びましたが、それ以上に安堵の気持ちが先に来ました。試合としてはかなり優位に進めていた、という点だけでなく、上記の理由から選手たちが報われて良かったという気持ちが大きかったからです。
またすぐに群馬戦が来ます。また難しい試合になると思いますが、選手が不断の努力が実を結ぶと信じて試合を見ていたいと思います。

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