命の尊厳 ─コロナ禍でのペットブーム─
生きていく中で、(これは経験を積んだ人にしかまかせられないよね?)と思う場面に遭遇しませんか?
どうも、サッポロ 濃いめのレモンサワーを愛する私です。
私が思う「経験を積んだ人にしかまかせられない」ランキングの1位は「教師」、2位は「ペットを飼うこと」です。今回はその2位のお話。
どんな動物でも、小さくてもふもふしたものはかわいいですよね。たいていの哺乳動物は、丸くて小さい生き物をみると、保護本能がわくのだという説さえあります。ペットショップでほぼ子犬、子猫だけが売られているのも道理というものです。
「かわいい」を売りにして売買するのはわかります。売りの「かわいい」を備えた「幼体」を売買するのも理解できます。しかし、それだけで売り買いをしていると、必ず悲劇を生みます。
なぜなら、それは生き物だから。
起動したときだけ画面に現れるゲームのキャラクターでもなければ、好きなときだけ引っ張りだして愛でるぬいぐるみでもありません。命と意思を持った生き物です。
生き物ということは当然、生命維持活動をします。生活リズムがあります。体調があり、意思があり、感情があります。
モノではないのです。
ですが、ペットをペットショップで売る時に、「かわいい」だけでラインナップすると、そういった当たり前のことを全く考えない人を引き寄せてしまうことになります。そう、飼い方を全く知らないド素人をです。
店頭で飼い方の説明をするでしょうか。それをちゃんと聞くでしょうか。きちんと理解して実行するでしょうか。中にはいるかもしれませんね。でも、「説明を聞きもしなければ理解もできない、当然実行もしない人」のことを常に考慮に入れて考えなければならない事柄なのです。
頭で手順を理解するのと、実際に動物を前にして実感することの間には深い隔たりがあるものです。思うように言うことを聞かない。うまくしつけられない。想像したのとは違う性格だった。大きくなりすぎた。噛み癖がある。部屋の中を汚す。臭くなる。かわいくなくなった。このような現実を目の当たりにすると、まるくて小さくてもふもふしたかわいいものが、とたんにその人の中で価値を失います。身勝手にも、じゃあ、いらないや。捨てよ。となるわけですね。
経験を積んだ人がペットを飼うべきだ、と私が断じる点はここです。生き物とは思い通りにならないもの、生き物とは独立した意思と感情があるもの、ということを経験によって知り、命の尊厳を知る人にこそ、ペットを飼う資格があるということです。逆に言えば、ペットを飼った経験を持たない人に、動物を安易に売り渡すべきではありません。
それだと経験はどうやって積んだらいいんだ?とお思いになるかもしれませんね。かんたんなことです。ペットを飼っている人に長期間ついて、教えを乞えばよいのです。もっとも良いのは、ペットの健康や福利に気を配っている熟達のブリーダーのところに行って教えてもらうとともに、命を預かってともに生きるということがどんなことなのかをその目で学ぶことでしょう。動物と暮らすということがどんなことなのかを知り、生き物を飼うことが自分に可能なのかどうかを測るいい機会になるでしょう。
店頭で行う生体販売という業態そのものが害悪というわけではありません。ただその販売の仕方が、無知にして無経験の者を引き寄せてしまうのが問題なのです。
もし、そういった生体販売のお店でペットを買う時は、店員の言動に注意深く耳を傾けてみてください。動物を飼う知識が豊富かどうか。動物を飼ったことがあるかどうか。飼育の知識も経験も無いような店員がいるところはアウトです。
そして、そのお店で売れ残った子たちがどうなるのか、聞いてみてください。ここで返答に窮するようなら、殺処分している恐れが大です。
新型コロナウィルスの蔓延によっておうち時間が増えた昨今、ペットの販売件数は倍増し、価格も右肩上がりとなっています。ペットを飼う人は、確実に増えています。けれど考えてみてください。おうち時間が多い今だから、ペットと触れ合う時間が──ペットのお世話をする時間が取れるのだとしたら。その余裕のないあの日常に戻ってしまったら、ペットたちをどうしますか?
まだあります。コロナ禍でおうち時間が増減したことによって、より鮮明になってきたのが、「ペットの飼い主ロス」ともいうべき現象です。これは飼い主が長時間おうちにいることに安心したペットがその環境に慣れきってしまい、元通りの生活に戻ると飼い主のいない不安感に襲われ、ノイローゼのような症状を発症するというものです。まさしくペットには意思も感情もあるということの表れと言えましょう。
はたしてコロナ禍が終息した後、ペットを取り巻く環境はどうなっているでしょうか。相も変わらず、悪徳業者が幅を効かせ、命の尊さを知りもしない無知な者が衝動買いし、捨てられたペットたちが何千何万と殺処分される……
そんな悲しいサイクルを止めるためにも、生き物を飼うことの教育、啓蒙活動は続けていかなければならないと思います。まずは、この悲しくも危険な、現在進行形で起こっている事実を知ることから始めましょう!
ペットと歩む、持続可能な社会へ!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、ごきげんよう。
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