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こんな凄いカンボジア人ラッパーがいたのか!

私はスポーツにあまり興味がないので、オリンピックは熱心に見ないまま。気がついたら閉会式も終わっていました。

そんな中、Nancyさんのnoteで、「オリンピックの閉会式にカンボジア人のラッパーが出演していた」と知りました。Nancyさんのnoteはこちらから。

オリンピック閉会式で舞台に立ったカンボジア人ラッパーVannDa|Nancy|Siem Reap សៀមរាប (note.com)

名前はヴァンダ(VannDa)。若くて小柄なのに、オーラとカリスマ性がすごい!

彼が閉会式に出演することは、カンボジアでも伏せられていたんでしょうか?いろんなニュースを見る限り、彼の出演はカンボジアでも衝撃的だったようで…カンボジアの方たちは嬉しかったでしょうね~。閉会式に呼ばれるとは!スターの証です。

ヴァンダの曲、Time to RiseのMVは、再生回数1億回を突破しています。以前から注目株だったのか、オリンピック効果か…いずれにしてもすごいです。

このMVに出てくる盲目の弦楽器奏者は、国民的英雄のよう。私はこのおじいちゃんアーティストを見たとき、衝撃を受けました。あのクメール・ルージュの虐殺を生き抜き、こうして若いアーティストと共演している人がいるとは…もう泣きそうでした。

ここでザっとカンボジアの歴史の紹介を…

カンボジアは1953年に独立、シアヌーク殿下のもと中立路線でしたが、1970年、ロン・ノル将軍がクーデターを起こし、親米体制となりました。シアヌーク殿下は左翼革命組織のクメール・ルージュと組み(中国が支援)、反ロン・ノル闘争を開始。1975年にはクメール・ルージュが首都プノンペンを制圧しました。

実権を握ったポル・ポト派はシアヌーク派を排除、徹底した共産主義政策を推進しました。その中に、芸術家、ホワイトカラー、教師などの知的階級の人たちの虐殺、首都住民の農村強制移住と強制労働などの政策がありました。イェール大学の調査によると、170万人が犠牲となったとのことです。

このひどい状況に対し、現状打破のためベトナムと手を組んだカンボジアの勢力が台頭。1979年に10万のベトナム軍がカンボジアに進攻してプノンペンを制圧。以後、カンボジアは約10年間、ベトナムに実質支配されることになります。

親ベトナム政権のカンボジアに対し、中国は継続してポル・ポト派を援助。これにシアヌーク派も加わり、親ベトナム政権を相手に内戦が始まります(カンボジア内戦)。

1989年にはベトナム軍が撤退、1990年には停戦が実現し、1991年にカンボジアの和平協定がパリで調印され、荒廃したカンボジアの再建が行われるようになりました。

カンボジアがASEANに加入したのは1999年です。つまりつい最近まで、カンボジアは混乱続きだったと言えます。

国の混乱のため、アメリカなど海外に逃れたカンボジア人も多いですが、彼らもまた新天地で、クメール・ルージュの虐殺や内戦での経験のPTSDに悩まされます。その子どもたちも、PTSDを抱えた親からの虐待、ニグレクトに悩み、そのことでギャングに入ったりと、世代間にわたってトラウマが継承されていくことになります。

アメリカで、PTSDを抱えたカンボジア人移民たちのケアにあたったアメリカ人医師と、カンボジア人心理療法士の話がこのPodcastで聞けます。

Therapy Ghostbusters : Invisibilia : NPR

このカンボジア人心理療法士は、従来のアメリカでの心理療法とは真逆のアプローチを取りました。それにより、カンボジア人コミュニティの人たちが回復していくエピソードは感動的です。

アメリカでは、「患者とケアする側は一定の距離を取るべし」とされていますが、カンボジア人心理療法士はまず患者と「家族になって」、信頼関係を築き上げてから、彼らの日常の世話をします(いろんな手続きの手伝いなど)。彼らを乗せた車の中で話をしながら、悩み相談に乗っていく。カンボジア人の患者にとって、医師やセラピストがパソコンを見ながら自分の経歴を聞く方法は脅威でした。なぜならそれは、クメール・ルージュが個人を尋問して、処刑か農場送りかを決定する方法とそっくりだったからです。

カンボジア人心理療法士は、カンボジア人の心のよりどころ、仏教について勉強し、それを心理療法に取り入れます。

この時間をかけて「家族になってから」、「家族として」悩みを聞く、という方法は、もしかして日本でも有効なのでは、と思いました。欧米式の「個人」が確立した人向けの心理療法より、家族的なアプローチのほうが、日本の患者も心を開きやすいのではないか。

なんだか話がいろいろ飛んでしまいましたが、私はこのような歴史、社会状況のカンボジアで、世界に通用するアーティストが出たというのがとっても嬉しく、応援したい気持ちでいっぱいです。

Time to Riseの歌詞は、カンボジア人アーティストが歌うからこそ説得力があり、世界に通用する普遍的な魅力があると思います。

Nancyさん、素敵なnote記事をありがとうございました。カンボジアに興味が出てきたかたは、ぜひNancyさんのnoteを訪れてみてくださいね~。



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