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ありふれた日常と生き物【赤い魚の夫婦】グアダルーペ・ネッテル著 宇野和美訳

「グアダルーペ・ネッテルって誰?」

メキシコ出身の作家です。
メロディアスライブラリーの予告で聞いた時
「誰?」としばらく認識できませんでした。



かろうじて聞き取れた名前を元に
Google検索したら、
スペイン語圏の文学賞を受賞してました。

日本でスペイン語圏の文学作品は馴染みがなく、
未知の世界に足を踏み入れる気分。
実際に読んでみたら、あっという間に読了。


図書館で司書の方に取り寄せをお願いした時に
「この本、初めて知りました」と驚きました。
思いの外面白かったので、
この司書さんに感想を話したぐらいです。
今後、日本で注目されても不思議ではありません。


・簡単なあらすじ

タイトルも見てもどんな話か想像できません。
短編集が5つ掲載されてます。
それぞれの生き物に、
登場人物の心情が投影されています。

表題の『赤い魚の夫婦』は
ベタスプレンデンスの一種で闘魚が登場。
『ゴミ箱の中の戦争』はゴキブリ、
『牝猫』は妊娠中の猫、 
『菌類』は足の爪にいた水虫と性感染症の原因菌、
『北京の蛇』はメスから引き離されたオスの蛇。

生き物の生体に絡めて、
登場人物の心情は反映されてて驚きました。

・ラジオ放送の内容

表題の『赤い魚の夫婦』を中心に話が展開。
そろそろ子供が生まれる夫婦と赤い魚の話です。

パーソナリティの小川洋子さんも、
MCの藤丸由華さんも、
夫のヴァンサンに対して大層おかんむりでした。

放送内でたっぷり語られましたので、
私は、別の話についての感想を書きます。

・一番衝撃を受けた話

表題ではなく、あえて『菌類』について書きます。

タイトルを見ただけで、
どんな話かはイマイチピンと来ませんでした。
一言で言えば、
不倫で身を崩した女性バイオリニストの話です。

冒頭に、母親の足の爪にいたとありましたので、
おそらく爪の水虫と推定。
母親は嫌悪と拒絶反応を示したものの、
主人公わたしは、
当たり前の存在として受け入れてました。

夏のセミナーで出会ったバイオリニスト兼指揮者であるフィリップ・ラヴァルに出会いました。
その頃、母親の爪の水虫について回想。
彼らが男女の仲になるのは時間の問題でした。

最後の方で股間の痒さを訴える主人公。
具体的な病名は触れられなかったものの、
クラミジアなどの性感染症と推定。
フィリップ・ラヴァルも同じ感染症でした。

その件でも
自分の体に住み着いていると感じたため、
薬を塗るのを途中でやめてしまいました。

・感想

魚やネコなど目に見える生き物ならまだしも、
顕微鏡を使わないと見えない感染症の原因菌に
心情を投影しているのに衝撃を覚えました。

この本を見つけてきた
パーソナリティの小川洋子さんのセンスに感心。
海外の文学作品にもアンテナを巡らせているんだなぁと思いました。

人間の心と生き物の生態が絡み合ってて
心理描写が想定外の手法でした。

以上、ちえでした。
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