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苦しんだのはユダヤ人だけではない【あのころはフリードリヒがいた】

「ナチ政権の被害者はユダヤ人だけではない」

著者はドイツ人。
社会心理学者、児童文学者です。
彼の子ども時代に感じたことが書かれています。

ホロコースト文学の多くは
迫害されるユダヤ人目線のものが多いですが、
こちらはドイツ人の目線で書かれています。

主人公「ぼく」には、
ユダヤ人の幼なじみフリードリヒがいました。
2人は1925年生まれなので
ナチ政権が成立するのはあとの話。
それまでは家族ぐるみで親しくしていました。

徐々にユダヤ人を排除する法律ができ、
フリードリヒの一家は追い詰められていきます。

メロディアスライブラリー2013.1.27放送。

・ユダヤ人排除は徐々に進行

まだナチス政権が成立する前の1930年に
「ぼく」の母方の祖父が家に立ち寄りました
祖父はフリードリヒがユダヤ人と知ると
激しく叱責しました。

ナチス政権が成立したのは1933年。
この頃から、差別の下地ができていたのかと
気づきました。

そこからユダヤ人の店から買うなとか、
公務員が解雇になったり、
学校を転校させられたり、
次から次へ排除される法律ができました。

「ぼく」もフリードリヒと一緒にいるところを
他の人に見られないようにと
父親に言われるようになりました。

・ナチ党員になった父親が勧告したこと

「ぼく」の父は、ナチ党員になりました。
そのおかげか、待遇の良い職につけました。

表立っては言わないものの、
「党の方針に全てには賛成していない」と言います。

シュナイザーさん(フリードリヒの父)に
ドイツから出るように勧めました。

ナチ党員になる人がみんな、
党の方針に賛成していたわけではありません。
当時、「ぼく」の父は失業していました。
生きていくために仕方がなかったのではないかと
気づきました。
そう考えると、責められないです。

・ユダヤ人の家が荒らされた

近所のユダヤ人医師の病院、
ユダヤ人の見習工の寮などが荒らされました。
フリードリヒの家のアパートまで
被害に遭いました。

それに「ぼく」は加担してしまいました。
国だけでなく、一般の人たちまでユダヤ人排除に加担するところに怖さを感じました。

・感想

「これは児童書なの?」と驚いてしまいました。
フリードリヒは強制収容所に行かなかったものの、
父親は逮捕され、母親は病気で亡くなりました。
彼も彼で、防空壕に入れてもらえませんでした。

主人公の「ぼく」は、
友人を助けてあげられなくて歯がゆい想いをしてるのが伝わってきました。
心に傷を負ったのは迫害されたユダヤ人だけでなく、交流があった人たちも例に漏れません。

翻訳者がドイツの本屋さんに行ったときに
店員さんから勧められたのがこの本だったそうです。
日本語訳は1977年に初版が出たそうです。
※こちらは、2000年発売。

特定の人たちを排除することは、当事者でなくても心に大きな傷を残すと気づかされました。
2023年の日本に住んでますが、
他人事とは思えませんでした。

以上、ちえでした。
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