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大人も顔負け。子どもたちの秘密のミッション【エーミールと探偵たち】

「お金を取った人を捕まえた。それだけ」
アマゾンレビューでこんなことを書いていた人がいました。

ミステリー小説のような「大どんでん返し」を
期待しない方がいいというのはよく分かります。
しかし、この話の本質はそこではないと感じました。

メロディアスライブラリー2009.5.3放送。



・見知らぬ土地でお金を取られた

ノイシュタットという町からベルリンに向かったエーミール。ベルリンにはおばあさんといとこ一家が住んでいました。

電車に乗っている時に
乗り合わせた男性にお金を取られました。
お母さんが必死になって働いて稼いだお金です。
エーミールは困ってしまいます。

本来乗る予定のなかった市電に乗ってまで、
自分のお金を取った男性の跡をつけました。

・仲間に協力を求める

男の跡をつけている時に、ある少年に出会いました。警笛をふいている少年グスタフです。
お金を取られて、男の跡をつけていることを話します。
そしたら彼が、仲間を集めました。

そこからがすごかったです。
電話番をする人、跡をつける人、
男が泊まっているホテルに潜入する人など
役割分担をして男を追い詰めました。

ホテルのボーイになりすまして潜入したという話を聞いて「刑事ドラマ見たい」とびっくりしました。
子どもの頃にこの本を読んでいたら、冒険心をくすぐられていただろうと思いました。

・記者のケストナー

エーミールの現金を盗んだ男が捕まりました。
警察の捜査で余罪が判明。
なんと銀行破りをしていました。

銀行は犯人を捕まえた人に千マルクの懸賞金をかけていました。
意図せず、銀行破りを捕まえたエーミール。
新聞記者からインタビューを受けます。

記者の名前はケストナー。
「作者が記者として登場してる」とすぐに気づいたのは私だけでしょうか。
まるでエーミールや子どもたちを見守っているように見えました。

後にわかりましたが、市電の切符をエーミールに買ってあげたのは彼でした。

・感想

はじめは、南洋小説を書く予定だったそうです。
しかし、ある助言からこの作品が生まれました。

「先生の知っていることを書くことです」
まえがきで触れられていました。

かつての自分のような立場の子どもたちを想ってでしょうか。
エーミールや子どもたちに対して暖かい眼差しを感じました。

「探偵」とタイトルにあるので、ミステリーを思い浮かべがちです。
それを期待していた人にとっては物足りなく感じそうです。

エーミールのように、困った時に助けを求めれば、解決へ向かうかもしれないと希望が持てました。

最後にエーミールのおばあさんの言葉が
示唆に富みました。

じぶんの義務がなんであるかを、心得ていたのです。

エーミールと探偵たち p202

実際に犯人を捕まえに行った子どももいます。
一方で、連絡係として自宅に待機していた子どももいます。

それぞれ役割を果たしたからこそ、目的が達成されたとおばあさんは伝えています。

目立たないところで動いている人もいる。
そこにも目を向けようと思いました。

以上、ちえでした。
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