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夢と現実が交錯する高千穂鉄道の旅【あした、次の駅で。】

思わず衝動買いしました。
先日、高千穂に行った時に買いました。

正直なところ、著者は知らない人で
どんな内容の本かも確認しないまま買いました。
買ったのが高千穂駅なので、
鉄道に関することだろうと予想はしてました。

読んでみましたが、B'z の『山手通りに風』がBGMに流れてきそうでした。


・乗客との会話

主人公の甲斐敬介は、昔の恋人である百合子から手紙を受け取っていました。
内容は高校生の時に行った映画館の閉業のお知らせです。最後に上映会があるとのことです。

敬介はテレビ局勤務。
取材で世界中を回っていました。
初めは他の乗客に違う名前を名乗っていましたが、ある乗客から「甲斐敬介さんですか?」と尋ねられました。
そこからは本名でが会話が進められています。

電車が止まる度に次々に乗客が乗ってきます。
設定上は一部区間不通のため、バス移動となっていました。妙にリアルでした。

台風などの災害で、鉄道からバスに切り替わるところが出ています。
福岡県内でも話題になってました。

この小説が出たのは2011年。
今の時代を予測していたかのようです。

・高千穂鉄道からの景色

敬介が延岡駅から高千穂鉄道に乗る時に
駅員に話しかけられました。
「あの辺りの山は今、曙つつじが満開ですよ。下の方には山桜がいっぱいです」

このセリフを聞いた時「あれ?夏ではない?」と混乱しました。
完全に台風に引きずられていました。
読み返したら、「春休みの日曜日」とあったので、3月頃と気づきました。

先日、高千穂あまてらす鉄道に乗った時は
夏だったので花は咲いていませんでした。
しかし、春の写真を見ると桜が満開です。
桜を眺めながら鉄道に乗るのも良さそうですね。

・高千穂駅へ(ネタバレあり)

敬介含めて乗客全員目的地は同じでした。
閉館になる映画館へ向かいました。

「上映会はどうなるだろうか」
そう思ったらなんと、高千穂駅に到着する直前で終わってしまいました。

「あれ、百合子と会えなかったの?」
「上映会、何の映画が流れたんだろうか?」
謎を残したまま終了しました。

この本のレビューを読んでも「この先が読みたいというところで、終わってる」と指摘していた人が何人もいました。

高千穂駅に着いた後の話は、読者の想像にお任せというところでしょうか。

・感想

私も「その先が読みたかった」とスッキリしません。
散々回想で、高校時代の百合子は出てきたけど、
現在の百合子は出てきてません。
手紙の中では、実家で農業をしてると触れられているくらいです。

回収しきれてないエピソードが
いくつもあると思いましたが、
「著者あとがき」を見て納得しました。

この話は映画館へ行くのが目的ではなく、
高千穂鉄道の道中が目的でした。
「著者あとがき」はこう始まっています。

この小説は、かつて九州の山と海を五十キロメートルの線路で結んでいた高千穂鉄道を舞台にしたものです。
でもこのお話は、残念ながらほんとうの話ではありません。現実は小説とはまるで正反対で、ずっときびしく、第三セクター高千穂鉄道は全線廃止となり、列車は走っていません。もう五年以上になります。

あした、次の駅で。p176

著者は現在、高千穂あまてらす鉄道の代表取締役です。
高千穂出身でノンフィクション作家。
気が付いたら代表取締役になっていた経緯も語られていました。

高千穂鉄道が廃線になったのは、2005年9月の台風がきっかけです。
4つある鉄橋のうち2つ流されました。
復旧するのに26億円もの莫大なお金がかかるとのことでした。
国や県に要望を出したものの却下されたため、廃止を余儀なくされました。

この当時はまだ高校2年生。
宮崎市の実家に住んでいました。
全国的にはわかりませんが、少なくとも宮崎の地元メディアでは大きく取り上げられていました。
それもあり、当時のことをよく覚えています。

先日高千穂に行きました。
息子2人が電車が好きなので連れていきました。

そこで感じたのは、職員の人たちが今でも高千穂鉄道の復活を諦めていないことです。

知り合いの電車好きの方が言ってた言葉を思い出しました。
「災害で鉄道に被害が及ぶと、なくなってしまいそうで心配」

高千穂鉄道の廃止を見るとよりリアルに感じました。

以上、ちえでした。
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