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発達障害児の母が、子どもの将来に希望を持てた歴史小説【まいまいつぶろ】村木嵐著

身体障害を持った人が、
将軍を務めたことに驚きました。
むしろ、将軍家という裕福な家に生まれたからこそ生き延びれたかもしれません。
貧しい家庭に生まれていたら、難しかったでしょう。

この作品は、徳川幕府9代目将軍である
徳川家重の一生の話です。
重い障害だったため、「将軍を継ぐのは無理」と
みなされ、廃嫡の話まで出ていました。
聡明な弟の宗武を将軍にしようという動きがあったくらいです。

運命が変わったのは、ある少年との出会いからです。
この少年とは、終生共にいました。
彼がいなければ、徳川家重が将軍になることはなかったでしょう。
歴史自体変わっていたかもしれません。

「こんな人に出会えたら、親として安心できる」
家重の父親である
8代目将軍の吉宗の立場で考えてしまいました。


・人を見る目があった。

終生、通詞として寄り添った大岡忠光や、
後に老中になった田沼意次を見出しました。

忠光のおかげで、自分の意志を他人に伝えられるようになりました。
田沼意次は、実務面で彼をサポートしました。

まるで必要な人間を
自ら引き寄せているように見えました。
その様子を見て、発達障害を持ってる
うちの長男と重なりました。

彼の場合、人というより、
必要な支援を引き寄せています。

・比宮(なみのみや)の存在

彼女は京から来ました。
最初は家重に戸惑うものの次第に心を通わせます。
後に家重の言葉を聞き取れるようになったと明かされています。

残念ながら、
彼女が妊娠した子供は早産でなくなり、
彼女自身も産後の体調不良から回復できずに
亡くなってしまいます。

比宮と共についてきた侍女の幸に、
家重の跡継ぎを生んでほしいと言い残しました。
その遺言通り、幸は家重の子を産みます。
後に、10代目将軍徳川家治になります。

その後、家重はお酒に逃げるようになったことが明かされています。
彼女の死後、正室を新たに迎えることはありませんでした。
よほどショックだったのが伺いました。

・増えていく味方

廃嫡とまで言われた家重ですが
乳母の滝乃井をはじめ、吉宗に仕えていた大岡忠相、酒井忠音も味方をします。

それでも依然として、
弟の宗武を擁立する動きがありました。

彼の人柄に対する魅力があったのでしょう。
ある百姓一揆では、百姓の苦しみを察しようとするエピソードがありました。

自分が苦しんだからこそ、
他人の苦しみがわかる人だったのかもしれません。

・感想

長男にも、家重にとっての忠光のような人に
巡り逢えるといいなと思いました。

うちの長男は家重ほどの重い障害ではありません。
しかし、うまく自分の意思を言葉にできず、
苛立っている時があります。
程度の差はあれ、苦しみを感じていると思いました。

「もう一度生まれても、私はこの身体でよい。忠光に会えるのならば」

まいまいつぶろ p321

忠光が亡くなった後、
一年後に後を追うかのように旅立ちました。
この人に出会えてどれだけ幸せだったのか。
この一文から、その様子が伺えました。

最終章は家重と忠光の息子がそれぞれ登場。
それぞれの父親の話をしていました。
少なくともその後の徳川幕府は続いているので、
家重は一定の役割を果たしたと感じました。

障害があっても、手助けしてくれる人がいたら
できることがあるかもしれないと希望を持てました。

以上、ちえでした。
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