日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ

先週で終わりかと思っていたNHK連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」。

金曜日の放送を見て、ええええっ!これで終わり?とのけぞったが、もう1週あると分かってほっとした。最後は大団円で締めくくりのハッピーエンドだと信じて疑わないので、心底安心した。

さて、日英の通訳業を生業にしている私であるが、この通訳業というのが大変厄介な職業なのである。なにせ「毎日鍛錬しないといけない」。まさに「カムカム」の登場人物である伴虚無蔵のセリフ「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」の世界なのだ。

日英通訳者と名乗る人の数は、今では相当な数に上ると思うが、その中で日々鍛錬している通訳者がどれほどいるだろうか。仕事(会議)の準備はするが、「鍛錬(練習)」をしている人は少ないと、同僚たちを見ていて思う。

鍛錬というのは非常に地道な作業の繰り返しで、辛い。ピアニストでいうところの運指の繰り返しであったり、声楽家でいうところの発声練習であったり、アスリートの筋トレや走り込みであったり。毎日やらないと勘が鈍ったりすぐ衰えてしまう「肝」というか「幹」の部分であろう。

私の場合、家族に英語を話す人間もいないので、仕事のない土日などは、ともすると英語を一言も話さない。そうなると月曜日にはもう英語の勘が鈍っている。そうならないために毎日鍛錬しないといけないのだ。

もうずいぶん昔のことであるが、アメリカのジャズピアニストである故ハンク・ジョーンズの通訳をしたことがある。彼は「1日さぼれば自分にバレる、2日さぼれば女房にバレる、3日さぼればお客にバレる」と言っていた。それを聞いたとき物凄い恐怖を感じたことを覚えている。クラシックピアニストのフジコ・ヘミングも同じようなことを言っている。

自分や女房にバレるだけならまだ許されるかもしれないが、お金をもらっているお客さんにさぼりがバレたら大変だ。通訳も同じ。訳出を聴いてくださっているお客さんにさぼっていることがバレたら、「金返せ」と言われるだろう。

というわけで、仕事や家事の合間の時間を見つけてとにかく日々鍛錬するしかない。正直しんどい。が仕方ない。仕事だから。お金もらってるから。

通訳者になるのが夢だという人は多いが、鍛錬や訓練が好きでないならやめたほうがいいと思う。この職業でいる限り一生鍛錬は付いて回る。

この鍛錬生活もあと8年で終わりだな、というか、まだ8年もあるのか・・・・と早く定年退職したいばばちゃん57歳である。

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