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夢を持つ若き理学療法士の彼女が輝いていた話

10ヶ月一緒に働いた親子ほど歳の違う社員が、今月いっぱいで退職する。
私は彼女が好きだった。

私はパートの事務方、彼女は現場の理学療法士。
第一印象は正直、知的エリートオーラを全身にまとわせ、
愛想も決して良くはない、クールで淡々と専門用語を並べる若いコ。
というインプットだった。

だがしばらくすると、よく笑う、
おっちょこちょいで、お茶目な人間味を時折見せるようになり、
私から利用者の個別運動機能訓練について質問したり、
彼女の方から個別の生活環境などのの質問を受けた。
そのうち、
美容院行ったの?その髪色いいね。
などと私が喋りかけ、
どしたんですか、ポロシャツめっちゃ汚れてますよ、こぼしました?
と彼女もかまってくれたりするようになり、
仕事の愚痴や、疲れたとか、お腹空いたとか、あめちゃんあげるとか、
どうでもいいことなんでも、
まず彼女に話すようになった。

20代から70代までの職員、
パートと社員、
介護 看護 リハビリ の異業種が入り乱れる現場は、
私の肌感覚では、
表面的で、殺伐と冷たく、
ロボットのように働き、利己主義、人間力の低い集団に見える。
(私も含)
親睦を深めようとする気もなく、他人に興味を示さない、
そんな職場の雰囲気を、
しがらみがなくていい空間、と捉えるようにしていた。
しかし、彼女がいると嬉しかった。
以前と同じ場所で同じ仕事をしているのに、仕事が楽しいと思えた。

クリスマス会では、
彼女と一緒に必死でハンドベルを覚えた。(本番は2人でミスった)
去年まではイベントにかりだされるのも鬱陶しくてテンションも上がらなかったのに、
楽しかった。

介護もリハビリも全て拒否をする、手を焼く利用者が入所したときも、一緒に話を聞き、利用者本人の意欲を2人でゆっくり引き出した。
彼女から得た専門知識は私の宝物だ。

その彼女が、退職することになった。
予防医学を学びたいというのだ。
今まで、病院と介護施設を経験したらしいが、
今度は、その前段階の予防ケア、健康な体を維持するための知識を学びたいと。
職業がら、職員の歩き方一つでもどこが悪いか予想がつき、利用者だけでなく介護する側の体も心配してくれていた。
本格的にそれを職業にしてやっていきたいと志すこと決めたという。
退職の知らせに、えーーーっと驚いて、仰け反りすぎて椅子の背もたれごと倒れそうになって、
彼女が支えてくれた。
理由を聞けば、彼女らしくてまた好きになった。
「ここの職員のお陰で、新たなチャレンジをする勇気が湧きました。まだかなり不安ですけど」

母の気持ちで泣きそうになる。
私はネガティブに感じていた人間関係を、彼女はポジティブに自分の糧にしていた。

寂しいのは私が自己中だからだ。
彼女を思うなら、称賛の拍手で送るべきことだ。

まだ、20代。伸びしろしかない。
この先長い道のりは、平坦ではないだろうけど、
私もずっと応援すると約束する。
夢に向かって踏み出す彼女は眩しくて、尊くて、愛おしくて、羨ましかった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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