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1番じゃなくいいから、誰かにとって特別な存在になる

前回に引き続き、パンイベントのお話。
イベントの中で、お客様が数店舗の食パンを食べ比べて、一番気に入ったものの感想を買いて投票し、食パンの大賞を選ぶと言う企画がある。

うちのお店は一度も大賞に選ばれたことはないが、私はこの時頂けるお客様からのコメントを毎回とても楽しみにしている。

チャンピオンベルトは、そうそう手に入らないから、一番多くの「おいしい!」を集めた大賞は素晴らしい。これはもう間違いがない。
でも、じゃあ2位以下は残念なのかと言うと、たぶんそうでもない。

不思議なもので、毎回の必ず全ての店舗に票が入る。
ここが私的には大きなポイント。
総意で選ばれなかったとしても、自分はこの味が大好き!と選んでくださったお客様の感想は、とても価値ある財産だ。

多くの人に愛されるのはとても素晴らしいことだ。けれど、不特定多数の人に選ばれるのはとて難しい。だから、私たちはまず、数は少なくても本当に大好きと言ってくれるお客様を作ることに徹したらいい。それが必ずブランドになる。そう思っている。

ブランドとは、スペックはもちろん、スペックでは語り尽くせない心の価値をつくることだ。
だから、この味が一番好きだと言ってくださる誰かのために、誠心誠意尽くすことが熱狂的なファンを生み、何にも変え難いブランドとなる。

先日、あるミュージカル女優さんと俳優さんのコラボライブに行った。
コロナ禍が終わったからか、俳優のKさんが歌いながらライブ会場を歩き、歌詞にあわせて、サイン入りの自分の写真を配って回った。
たまたま通路側に座っていた私もその写真をもらったが、私はその俳優さんではなく、女優さんの方のファンだったので、そこまでの感激もなく、その写真をバッグにしまった。

そして、ライブが終わって帰ろうとすると、1人の女性が近づいてきて、スミマセン、先ほど、写真をもらってましたよね?見せてもらえますか?と。
いいですよと渡そうとしたら、え?触ってもいいんですか?とすごく嬉しそうだ。きっとKさんのファンなのだなと思い、「よかったら差し上げますよ」と言うと、目に涙を溜めてお礼を言われた。

私にとって、そこまでの価値を感じないものが、彼女にとっては涙が出るくらい価値がある。面白いものだ。(誤解のないよう言っておくと、Kさんはとても人気のあるミュージカル俳優だ。しかし、ミュージカル界のプリンスと呼ばれる方もいる世界なので、目に涙を浮かべるほどのファンの存在は、彼にとって最高の喜びであろう。)

一番でなくてもいいから、誰かにとっての特別を目指す。
誰かにとって、他とは全然違う特別なものになれたら、その誰かにとっては、唯一無二のブランドということだ。
私のお店も、1番になろうなんて、だいそれたことは考えていないが、熱狂的なファンを1人、2人と増やしていくために、コツコツとブランディングを続けている。


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