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雨のエピソード☔小学校編(約1400文字)


雨のエピソード☔
小学校編

NNさんの企画に参加させて頂きます☔️


エピソード1 ある決断

私の家は校区のはずれにあった。

小学校に入学して初めての梅雨…
数人の友だちと並んでガヤガヤと帰る通学路…

やがて
「バイバイ、また明日!」
「明日も遊ぼうね!」
そう言いながら、あとは一人で家路へと急ぐ。
六月とは言え、梅雨寒の日。

子どもの足で20〜30分くらいの道のりだが、おしゃべりしながらだから下校から1時間弱経っていただろうか?

       🐌

       🐌

       🐌       


「ど、どうしよう…………
……………
 トイレに行きたい…」

私は青ざめた…
6歳児の私にとって、お漏らしなんてもってのほかだ。
もう私は幼稚園生ではない。
小学生なんだから!

いつもより長く思える我が家…
紫陽花が咲く遠い道のり…

土砂降りの中、顔見知りの友だちも近所のおばさんやおばあさんも誰も道路にいない…
トイレを借りられる場所も思いつかない…

あと少し…
もう少し…
あの角を曲がって
あの5階建ての建物を越えて…
あの公園が見えたら、
もうすぐうちに着く…
我慢だ
がんばれ…

土砂降りは、容赦なく6歳の私の100センチ越えたくらいの身体に打ち付ける…
雨靴の中までずぶ濡れだ…

カラダはどんどん冷えてくる

ゲ・ン・カ・イ・・・
のゴングが鳴った…

その時、もう幼稚園生ではない私は思いついた!

「そうだ!全身濡れたらバレないじゃん!」
私は大発見をした気持ちで傘を閉じた。

「これはお漏らしなんかじゃない!雨に濡れただけ…」

土砂降りの雨の中、スッキリとした、
晴れ晴れとした表情で家路を急いだ。
スキップしたいくらいな気持ちだった。

雨の中「傘を閉じる」ことは、小学1年の私が生きてきた中では一番大きな、画期的な決断だった。



エピソード2 台風の早帰りの日の思いつき

台風接近のため早帰りとなった日のこと。
実は雨は嫌いではない。
この頃の私は台風もちょっと好きだった。

メリーポピンズの大ファンだった私。
絵本や映画で観られた方ならご存知だろうが、舞台は20世紀初頭のイギリス。
煙突掃除をしながら歌う「チムチムニー」は有名だ。

主人公メリーポピンズは家庭教師としてある御一家に雇われた。
花のついた帽子をかぶって、昔風の長いスカートを履いたオシャレなポピンズ。
大きな鞄を持ち、イギリス人らしく傘ももっている。
その傘は雨のために持っているわけではない。

その傘を差すと、空を飛べるのだ。
傘を広げ風に乗って、ロンドンの街を見下ろすように颯爽と現れるメリーポピンズ。
この登場シーンは、大好きな場面だ。



さて、話を早帰りの日に戻そう。
私はこの風の強い日。
友だちに「また、明日ね!」と言って、ひとりで歩いていた。
台風の風は、だんだん強くなる。
時折、雨が強く打ち付けるが降ったり止んだり…

「もしかして、あれができるかもしれない…!」

雨も降っていない、ただ強まる風の中、傘を開いた。

傘が強風に抵抗する。
傘を持つ手に、ものすごい力がいる。

「負けないぞ!」
…何にだ?勝てるはずもないのに。

台風接近で、どんどん風が強くなってきた。

その時だ!
フワッとカラダが浮いた!!

っと思った瞬間、
両手にかかる力が抜けた。

「あっ!」
私の手元には、傘の柄だけが残っていた…

その日、買ったばかりの傘を壊した私は、一部始終を母に話した。
ものすごく叱られたのは言うまでもない。

良い子は真似をしないように!

20〜30メートルの風の吹く台風の日に、傘を差してはいけない。
子どもでなくても煽られて大けがをするところだったのだ。




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