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私の感覚を理解するのは私だけ #2

太宰治『走れメロス』についてだけ #2


「~です」「~ます」調にするかどうか迷ったけれど、「~だ」
で書くことにした。

そっちの方が、鋭いイメージが文章に出る、というか知的な雰囲気になる、というかなんというか…その…ええと

かっこいいから。

メロスは激怒した。

太宰治 『走れメロス』より

読み始めた途端もうこれだ。
もう、怒っている。

玄関開けたらお母さん絶対怒ってる。
宿題やらないで遊んで出かけたのと、おととい提出締め切りだったお母さん達に出すプリント出さなかったの遂にバレたか…。

メロスが好きだと公言するのであれば、上記の一文だけではまだ足りない。

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐《じゃちぼうぎゃく》の王を除かなければねばならぬと決意した。

太宰治 『走れメロス』より

ここまでをそらで言えて初めてスタートに立てるのではないか。
という事で私も暗記した。

何回も読んでいたので、気づいたら覚えていた。

ということは無かったので、普通に読んで本を閉じて読んで本を閉じてを繰り返し、ついに暗記。
中学校時代に同じくなぜか暗記させられた平家物語や竹取物語、徒然草の冒頭部分と一緒の引き出しにそっとしまっておいた。

メロスの激怒ももっともだ。
先を読んでいければわかるが、なんと残酷な王!
あのメロスが怒るのも当然だ。

もう、邪智暴虐という言葉が王のそれを物語っている。
どうやらこの四文字は相当悪そうだと、中学生も動物的直観で察するだろう。

四字熟語に悪さが詰まっている。
フリーズドライのお味噌汁みたいだ。
軽すぎるか…

大体、意味より前に、音が既に邪悪さでいっぱいだ。

じゃ ち ぼ う ぎゃ く、よくもここまで濁点を埋め込たものだ。

『走れメロス』
頭から既に面白い。

祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。
つれづれなるままに、日暮らし、硯すずりにむかひて、心にうつりゆく…
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を…

1年に1度くらい、大人達の中で突然開催される、古典の冒頭どこまでまだ暗記しているか大会、にメロスも若手ながら入る日が来るといい。

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