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私の感覚を理解するのは私だけ #31
太宰治『走れメロス』についてだけ #23
大変だ、メロスがウトウトしてしまっている。
勝手に達成感を感じてまどろみ始めてしまった。
あーもー、ほんとやんぬる哉。
私がこの場にいたらメロスに駆け寄り2、3発平手打ちをかましてやりたい。
寝るな!寝たら終わりだぞ!
言いたいことは色々あるが、とりあえず寝るな!起きろ!!!
今の状態のメロスであれば返り討ちにあう危険性も低いだろう。
馬乗りになって平手打ちしてやる。
そんな我々を苛立たせるなか、ここでメロスに希望のメロディーが流れる。
ふと耳に、潺々《せんせん》、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を吞んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。
水の流れる音…。
おお!ゼウスはメロスを見捨てていなかった。
むしろメロス、君は市へ戻るのに水さえも持たずに家を飛び出してきたのかい、、、
もう今更メロスの準備不足や危機管理の能力について小言をいっても仕方ないが、
水だけは持って出かけようか!!!
これだけは言わせてもらいたかった。
疲労が悪夢を見せた。
メロスに諦めを囁いた。
親友の命さえも捨て去り逃げてしまおうかという悪魔の声を頭に響かせた。
それほどに精も根も尽きていた。
メロスは呑気が過ぎるんだ。
だから全部行き当たりばったり。
もうほんと、自分を見ているようだ。
ここでメロスが水を飲み回復する場面、
水を両手で掬って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
ほう…
読みながらこちらも一緒に溜息が出てしまう。
疲れた時の一口目の水。
命が蘇る瞬間だ。
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