歯車

歯車と歯車が噛み合う
そんな関係がいくつもあって世界は回ってる

まず、
噛み合いたい人とつくる動力を幸せと呼びたい
噛み合いたくなくても形式上噛み合わないといけないこともある
したいことのとなりには かならず
しなければいけないことがいる

歯車であることをむなしく思っていた頃
自分を甘やかすことに夢中だったんだ
現在地を知ることが怖かった
齢を重ねるたびに逃げ方をおぼえ
生ぬるい生き方を正当化するために大切な言葉を使い時間を割いていた

歯車であることを知ったのはギターに触れてから
何百年のギターの歴史の中の一部になった私はむなしさを感じた
うまいひとはいくらでもいるし、どこまでうまくなれるんだろうか、まずわたしに音楽の才能があるのだろうか
それらすべてだれかと比べたときに感じるであろう絶望に対する予防線でしかなかったんだ

ギターの歴史の一部であることを 認め 喜び
衝動と理論に埋没し弾く
感覚的であり数式のような美しさを持つ楽器
弦に触れる両手の指の動きは
考えてから動いちゃいない
音にリズムに心体が包まれた
そんなことを繰り返し
いつのまにか私は歯車であることを知っていた

その人にしか
あなたにしか奏でられない旋律があるから
未だに世界に音楽は尽きない
歯車の大小とか回転速度とかきっと関係ないよ
歯車を回したいという意思
だれかやなにかと噛み合いたいという願い
ひとは自らの想いを回転させ
見知らぬだれかやなにかと高めあいたいのかもしれない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?