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頭の在庫整理でお宝発見『思考の整理学』著者 外山滋比古


1導入

 何度も読んだ本なので、当然読書ノートを作成しているかと思いましたが、なんと一度もノート化していなかったことがわかりました。
 なので、いつもは拾い読みしていましたが、きちんと再読してみようと思いました。
 20年も前に購入した紙の書籍はボロボロになってしまってもう捨ててしまいましたが、電子書籍で再読すると、どこか昔読んだ印象とは違う、少しだけ味気ない感じがしました。
 これは、単純に媒体が紙か電子かという違いだけでなく、もしかすると私が歳をとったせいで、感覚が当時と違うものになっているからかもしれません。
 別に今が悪いと言っているわけではなく、少しずつ思考や思想も変化するのだと妙に納得しました。 
 そしてこの感覚がまさに本書に言う、考えを寝かせるという意味なのかもしれません。
 経験が増えることで、私自身にも変化が起き、同じ問題に対しても解釈の仕方が変わってきています。これは大変興味深い話です。一元的な正しいか正しくないかという判断だけでなく、違う側面から見るとまた違ったふうに見えるといった感覚です。
 まあ、その解釈にも、正しい解釈や誤った解釈があるかもしれませんが、大事なのはそこではなく、重要なのは時の熟成を経て、私が同じ課題について思考することができた点です。
 20年。
 なかなかな時間です。
 今にして思えば、当時の私の感覚をもっとノートに残しておけば、より一層に今の自分との解釈の違いができていたかもしれません。
 これは、どんな本にも書いていない自分自身の変化の記録になります。
 そして再読した本書には、その思考の変遷をいかに上手に行うかについて多くの手法が書かれてありました。
 この本は、自分という存在を俯瞰した状態で、いかに効率的に自分に思考という哲学的な行いをさせるかというハウツー本です。


2ChatGPTによる概要

『思考の整理学』は、外山滋比古(とやま しげひこ)による著書で、1983年に初版が発行されました。この本は、思考を効率的に整理し、創造的なアイデアを生み出す方法についての考え方や技法を解説しています。以下にその概要を示します。

概要

  1. グライダー思考と飛行機思考

    • 外山は人々の思考を「グライダー思考」と「飛行機思考」の2種類に分けています。グライダー思考は、既存の知識やアイデアに依存している受動的な思考。一方、飛行機思考は自らの力で新しいアイデアを生み出す能動的な思考です。

  2. 朝の時間の重要性

    • 外山は、朝の時間が最も創造的な思考を生み出すために適していると主張しています。朝の頭は新鮮で、余計な情報に煩わされていないため、クリエイティブな発想がしやすいとされています。

  3. 「発酵」と「寝かせる」

    • 思考やアイデアを一度「寝かせる」ことで、自然と新しい視点や発見が生まれることを強調しています。このプロセスを外山は「発酵」と表現し、時間をかけて熟成させることの重要性を説いています。

  4. メモの活用

    • 重要なアイデアや思考の断片を常にメモする習慣を推奨しています。メモを取ることで、後で思考を整理しやすくなり、新たなアイデアを生み出すきっかけになります。

  5. カオスの重要性

    • 整理されていないカオス状態も重要であるとし、全てをきちんと整理することが必ずしも良いとは限らないと述べています。カオスの中から偶然生まれるアイデアや発見の価値を見出すことが大切です。

思考の整理学の影響

『思考の整理学』は、日本国内で非常に多くの読者を得ており、ビジネスパーソンや学生を中心に多くの支持を集めています。特に、創造的な仕事や学問に従事する人々にとって、思考の整理やアイデアの発酵といった概念は非常に有益です。

まとめ

外山滋比古の『思考の整理学』は、日常の思考やアイデアを効率的に整理し、創造的な発想を促進するための実践的な指南書です。思考を飛行機のように自由に飛ばし、新たなアイデアを生み出すための多くのヒントが詰まっています。読者はこの本を通じて、自分自身の思考の癖やパターンを見直し、よりクリエイティブで生産的な思考法を身につけることができるでしょう。

3問と答

(1)問 思考とは? 整理学とは?

(2)答 

 思考とは、自分(個性)というフィルター(価値観)を通して解釈(メタ認知)を加えること。
 そしてその思考の活動を円滑に進めるためには、考えを整理する必要があり、それが整理学である。
 整理学をざっくり説明すると
   1 寝かせる
   2 でもたまに思い出せる状態にしておく
ことである。
 詳細は以下のとおりです。

4ビフォー 気づき アフター

(1)ビフォー(読前)

 できないことや、わからないことが多すぎて、むやみやたらと目新しい知識に手を出していました。
 話題の新刊書籍や更新されたYouTube動画。
 最先端の流行の知識に触れている、でもなぜか満足感や充実感がない。
 きっとそれは、本書で語られている受け身の学習だったからです。
 私もグライダー人間(動力のない風まかせの状態)だったのです。  

(2)気づき(読中)

 本書では、いくつものキーワードとなる言葉あります。 
    みつめるナベは煮えない
    馬上、 枕上、 厠 上(ばじょう、ちんじょう、しじょう)
    知のエディターシップ
    セレンディピティ
などです。
 それぞれのキーワードが魅力的なエピソードで語られています。
 中でも私に一番刺さったのは
    みつめるナベは煮えない
という表現です。
 これは、パスタを茹でようと火に鍋をかけて、早くお湯が沸かないかな、と見つめている状況を想像するとわかりやすいです。
 お腹はすいている。
 ても、なかなかナベは沸騰しない。
 時間が長く感じる。
 このとき、ホントはパスタのソースを作ったり、お皿の準備をしたり、付け合わせのサラダを用意したりしていると、いつの間にか、ナベの蓋がカタカタと音を立てて、お湯が沸いたことを教えてくれます。
 実際は、お湯が沸くまでの時間は変わらないのに、ずっと見つめていると時間が異常に長く感じて、とてもストレスです。
 なにを言いたいのかというと、物事の変化には
    時間が必要
な場合がある。これを知った上で、ほったらかしておくことが大事だということと、でもちゃんとお湯が沸いたときに、気づけないと危ないということです。
 考え方についても、すぐに答えが出せない問題はたくさんあります。
 そんなときは、いったん忘れて寝かせる。
 このスタンスは、平家物語が琵琶法師によって語り継がれていくなかで徐々に洗練されていき、時の熟成によって古典化していく過程に似ているのです。
 つまり自分一人でも、適切に時間をかけることで、考えを昇華させることができるということです。
 今までどうしても解けなかった公私の問題、漠然とした疑問、拙い文章表現、これらの課題を適切に忘れておくことで、時の熟成を味方につけ、いつか自分なりの解決策となる解釈に辿り着けるかもしれないのです。

(3)アフター(読後)

 勘の良い方なら、わざわざ太字にした適切という部分に引っ掛かりを覚えているでしょう。
 この適切に忘れるという部分が、本書のタイトルにもある
    整理学
という部分に当たります。
 著者は、自分の思考を書き綴ったメモや読書ノートを作成し、53冊にも及んだノートを眺めながら、我が思考すべてこの中にあり、と感慨深く思うそうです。
 素敵な情景ですね。
 憧れます。
 さて、大事なのは適切に時間をかけることだとしましたが、時間をかけた上で、再度思考するという過程が必須になります。
 いわば思考の在庫整理です。
 在庫というと、まるで売れ残りのような印象ですが、過去の自分が何かしらの意図をもって残してきた思考の軌跡は、他の人にとってはガラクタに見えたとして、自分にとっては掘り出し物になる可能性を秘めています。
 本書では、寝かせた知識を
    良いコンテクスト(文脈)に置く
ことで、今までは精彩を欠いていたものが、急に輝き出すといった内容が書かれてあります。
 知のエディターシップ(編集)という表現で書かれていますが、単体ではイマイチなものも、他のものとの組み合わせることで、良さが活きるという内容です。
 プロスポーツの日本代表チームを自分が選ぶ感覚に似ていると思います。この選手は単独ではイマイチでも、この選手との組み合わせなら、もっと活きる。いやいや、この組み合わせならもっと凄い化学反応が起きる。などと自分なりの理想のオールスターを考えたことは、誰しも一度はあるはずです。
 もしくは職場でこの上司でなく、あの人の部下であったら自分はもっと輝けるはず、などです。
 組み合わせの妙という部分を活用した編集作業は、きっとそれ自体が楽しい妄想時間のはずです。 

 少し話が逸れてしまったので、まとめます。 
 自分という個性のフィルターを通して(経験で得た知識を総動員して)、ものごとに自分なりの解釈を加える。
 その結果、昇華してできあがったものがメタ思考となります。
 メタ思考へと至る過程が、思考であり、思考が進みやすい状況を準備することが整理することであり、その整理を体系的に説明した整理学が、本書で語られている内容です。
 と、私は解釈しました。

5ちなみに

 私には、本書の内容でまだよくわからない部分が何箇所かあります。
 書いてある言葉の意味はわかるのですが、まだ、ストンと落ちてこない部分です。
 これは私にとって課題です。
 いつか思考の在庫整理で、引っ張り出してきて、自分なりの解釈ができるようになることを楽しみにして、いったん忘れてしまいます。

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