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出会って嬉しい奈倉有里さん!

  奈倉有里さんの『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』(イーストプレス 2021)を読んだ時の気持ちは、今も覚えている。久々に丸ごと魅了されてしまう人に出会ったような気持ちだった。その後、奈倉さんの訳した本を何冊か読み、高橋源一郎の「飛ぶ教室」のゲストに逢坂冬馬さんと出られた会を聞き、二人が姉弟というのも衝撃だった。もちろん『同志少女よ!敵を撃て』は既に読んでいた。一体どういうご家庭で育ったの?と思う気持ちは、このお二人の作品を読んだなら、思うことだ。そして出版されたのが、『文学キョーダイ』(文藝春秋 2023)。面白かった。ますます奈倉さんが好きになった。編集者による裏話をポッドキャストで聞き、雑誌文学界の記事も図書館で立ち読みをした。
 青山ブックセンターでのイベントに出かけ、生の奈倉さんに初めてお会いしたのはそれより少し前だったかも。終了後に並んで声をかけるというタイプではない自分は、お話を伺い顔を見て満足して家路についた。(この時は、他にもたくさんの翻訳家のかたがいらして豪華メンバーだった。)時系列がすっかり忘れているが、あいだで考えるシリーズの一冊『ことばの白地図をあるく』(創元社 2023)は、若い人たちにぜひ読んでほしい1冊だ。
 最近読んだのは、もちろん『ロシア文学の教室』(文藝春秋 2024)。こちらも、おそらく高校生や大学生を対象に書かれた本なのだろう。読んだ本、タイトルだけ知っている本、タイトルも知らない本が並んでいた。もともとロシア文学が特に好きなわけではなかったが、これはロシア文学を読めと言う天の声かもしれないと、この本に取り上げられた作品を読破するのが、最近の私の中のタスクとなっている。2022年2月中国でのオリンピック終了直後のタイミングで始まったロシアとウクライナの紛争が、未だ終わりを見通せない中で、ロシア文学を読むことにも意味を見出している。
 そして今待っているのは、7月11日に発売された『文化の脱走兵』(講談社)である。こちらは『夕暮れ〜』に続く最新エッセイ。本は芋蔓式に読むのが楽しい。奈倉さんの本を読んで気になった本をまた読む。青山ブックセンターで行われた『ロシア文学の教室』出版イベントには、残念ながら参加できなかったけれども、今月末に三軒茶屋のトワイライトで開催される奈倉さんと倉本さんのトークに申し込んだ。楽しみである。
 これまで、あらゆるジャンルに関して、追っかけというものをしたことがない極めて淡白な自分だが、こうして新刊が出るのが楽しみだったり、ご本人にお会いしてお話を伺うのが楽しみな若い人に出会えたことが嬉しい。
 ちなみに、仕事つながりで、弟の逢坂冬馬さんにも、昨年講演会でお会いできた。全く違うスタイルで書き続けるお二人が、深い根っこの部分で繋がっているのも面白かった。こうして読む楽しみが増えることは嬉しい。
 

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