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散文『口づけ』

彼女の柔らかくて小さな唇
花束のように色とりどりの
花の香りを放つ髪の匂い
頬に触れる小さな手

感触を確かめながらも
夢の中にいることを
心は知っている。

お願い。
あと少しだけ、
少しだけ彼女といさせて欲しい。
そう思うと同時に目が覚めた。

カーテンの隙間から夏空が覗いている。
外の陽気とは裏腹に暗く湿った気持ちに
押しつぶされながら
彼女の残像を追いかける。

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