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【創作】2人で作ったライダースーツ【仮面ライダー】11話

廃墟の街 高台

戸部の家の外、藤は高台から街を見つめていた

戸部「ここにいたか」

戸部がやってきた

戸部「よいしょっと…」

藤の横に座る戸部

藤「あいつを連れてきたのは間違いでした… 組織を脱出したらすぐに分かれるべきだった」

志摩を恨む藤

戸部「そうだね、あいつは決して良い人間じゃない。君のことはもちろん、大勢の人生を台無しにしてきた」

藤に寄り添う戸部

藤「しかも、そのことを全く悪びれていない。何がタイムマシンだ…」

怒りで拳を握る藤

戸部「そのことなんだけど…」

志摩から聞いた話をかみ砕いて説明する戸部

藤「それじゃあ、本気でタイムマシンを作る気なんですか!?しかも、戸部さんも協力するって… どうして!?」

唯一の頼れる大人が自分の仇に手を貸すと言い出し、困惑する藤

戸部「もしタイムマシンが完成したら、君は過去を救える」

藤「過去を救うって… 時雨を…?」

戸部「大切な人だけでなく、君自身もね」

藤「俺も…」

戸部「でも、今、僕の目の前にいる君の人生が変わるんじゃない。この時間は続いていく。君が助けるのは、あくまで別の時間の君たちだ」

藤「え…?それじゃあ、意味がないじゃないですか… 気休めみたいなこと、言わないでください!」

一瞬、希望が見えたがすぐに打ち砕かれ、怒りが増していく藤

藤「なんなんですか!? 科学者っていうのは、人の気持ちが分からない人ばかりなんですか!?」

戸部「違う!君の気持は分かるつもりだ!私だって、大切なものをたくさん失くした!」

藤「だったら、そんなふざけた考えが浮かぶはずない!浮かんだとしても、口に出さない…」

怒りと失望で涙が流れる藤

戸部「私がタイムマシンを使えるなら…失った人々が生きている世界を作りたいと思ったんだ…」

藤「世界を、作る…?」

戸部「自分の生きる時間が変わらなくても、別の時間では大切な人々が別の私と平和に暮らしている… そんな世界があると思うだけで、私の心は救われる気がするんだ」

藤「そんな… そんなの虚しいだけじゃないですか?」

戸部「そうかもしれない、でも、試してみたいんだ。私は科学者だから」

戸部「君は、大切な人が生きている世界を、もう一度見てみたくはないかい?」

藤「少し、考えさせてください…」

すぐには答えが出せない藤 
考えをまとめるために、街へと降りていった


組織 会議室

ボス「侵略計画の進捗を聞こう」

長いテーブルの上座に座るボス

皇「順調に進んでおります。断続的に攻撃が進められるよう、兵力の増強を進行中です」

丈の長い白衣の下に高級スーツをビシッと着こなした皇が淡々と報告する

皇「怪人たちも志摩博士の研究を基に強化した個体を揃えております」

水仙「皇主任の指導の下、トレーニングをさせています。戦闘員も同様の処置を取っています」

水仙も続いて報告

ボス「そうか、それで、ライダーには対抗できるんだろうな?」

圧を掛けるように皇を睨みつけるボス

皇「それに関しては、こちらを…」

眉にかかった金の前髪を指でなでながら、モニターを映す

モニターにはとある改造人間の設計図が映し出された

ボス「これは…」

皇「簡潔に申しますと、ライダーの量産… ですかね…」

組織でも、着々と計画が進められていた…


廃墟の街

夕暮れの街を歩く藤

暗くなる前に帰路につく人々を眺める

苦しい状況なのに、皆たくましく生きている

藤の横を男の子が笑いながら駆けていった

その後ろを追いかける女の子

女の子「まってよー! きゃっ!」

女の子がこけてしまった

女の子に駆け寄ろうとする藤

しかし、男の子がすぐに駆け付けた

男の子「大丈夫!? 見せて!」

女の子は膝を擦りむいて、今にも泣きそうだ

男の子「すぐに治してやるからな」

鞄をごそごそと探り、ハンカチを出す男の子

女の子の膝に当てようとする

藤「待って、それじゃあバイキンが入っちゃう」

キレイな水を貰ってきた藤

藤「少し染みるよ…」

傷に水を優しくかけ、砂を流す

女の子「う…」

男の子「大丈夫だ、兄ちゃんがいるからな」

女の子の手を握る男の子

藤「よし、これで、と…」

男の子のハンカチを膝に結び、応急手当が終わる

男の子「ありがとう!お兄ちゃん!」

笑顔でお礼を言う男の子

女の子「あ、ありがとう…」

女の子も続いてお礼を言う

藤「どういたしまして」

微笑んで返す藤

藤「君はこの子のお兄ちゃんなの?」

男の子「うん!桜はおっちょこちょいだから、僕が守ってやってるんだ!」

偉いだろ!と言わんばかりに胸を張る

女の子「颯兄ちゃんがあわてんぼうだから、付いてくのが大変なの!今もそうだったし…」

むくれる女の子

男の子「ごめんってば!ほら、一緒に行こ?」

妹の手を取り、優しく立たせる

藤「しっかり守ってやらなきゃな」

男の子の頭を撫でる藤

男の子「ふふん、父ちゃんと言ってたんだ!母ちゃんとお前たちのためなら、なんだってしてやるんだって!だから僕も、桜を守る!」

藤「そうか、良い父ちゃんだな」

じゃあね!、と二人は仲良く歩いて帰っていった

藤「なんだって、してやる…か」

決心がついた藤

戸部の家に走って戻っていった


戸部の家

タイムマシン研究の準備を進める二人

志摩「この街の環境にしては、中々充実してるじゃないか」

戸部「街の人が分けてくれるんだ。この街の設備は全部私が作ったから、そのお礼だって」

志摩「素材を渡せば、なんでも作ってくれる便利屋ってところか」

戸部「そんなところだ」

扉が開き、藤が入ってくる

藤「俺、やります。時雨を、助けたい!」

突然の心変わりに驚く二人

戸部「藤くん…」

志摩「そうか、だったら準備を手伝え。あ、そうだ、これを渡すのを忘れていた」

ぶっきらぼうに言い、荷物を漁る志摩

志摩「ほれ、これにでも着替えて作業しろ」

投げ渡されたのは時雨が作ってくれた青いライダースーツ

藤「こ、これは!?」

志摩「君が運ばれて来た時に回収したものだ。洗脳の材料に使えると思って取っておいたが、結局出番は無かった。せっかくだから持ってきたんだよ」

藤「時雨、絶対助けるからな!」

藤の決心がより強いものとなった


それから数日間は研究の準備の日々が続いた

足りない部品を集め、試運転。
失敗したら、もう一度。

その繰り返しを続け、なんとか仮組みが終わった

志摩「よし、理論上はこれでいけるはずだが…やはり心もとなさすぎるな」

戸部「ガラクタで作ってるんだ。贅沢言うなよ」

藤「これで、時を超えれるんですか?」

藤の目の前には、3mほどの大きなアーチ状の装置が立っていた

アーチの下に広がる土台には組織から持ってきたバイクが置かれている

志摩「理論上は、だ」

戸部「まあ、まずは実験だ。ここから何十回と失敗して、完成する」

志摩「不吉なこと言うな!」

藤「そのバイク、俺が乗るんですよね…?」

志摩「ああ、君の仕事は、変身、乗車、発進、この3つだけだ」

戸部「細かい調整は私たちがやるからね」

藤「不安すぎるんですけど…」

戸部「大丈夫、いきなり藤くんで実験はしないよ。ベルトと同じ風力を出せる装置も作ったし、バイクも遠隔操作できる」

志摩「粒子も少しずつだが、生産できる。組織のやつらが静かなうちにさっさと完成させるぞ」

実験が始まった


実験を始めて、1週間

いまだに成功は無かった

志摩「だめだ…やはり耐久性が悪すぎる…」

戸部「また、作り直しだな…」

藤「そろそろ、素材も尽きてきましたね…」

戸部「いっそのこと、ありったけの素材で一発勝負、か?」

志摩「馬鹿か!?それで失敗したら、どうする?」

戸部「でも、これまでの実験で耐久性をクリアすれば、安定することは分かっている」

志摩「懸念点はまだまだあるだろ、一度送ったものが、こっちに戻ってきてしまう点が解決していない。移動した先では3日間しかいられないぞ」

藤「そこは、いいんじゃないですか?」

志摩「なにぃ?」

藤「俺は時雨が助かればいい。過去で組織を壊滅させるのに3日あれば十分です」

志摩「ほう、今の君にそれほどの実力はないと思うがねえ。ハンターはともかく、水仙がいるんだぞ。他の怪人もな」

藤「勝ちます。必ず」

藤の目はまっすぐだ

志摩「まあいい、それじゃあ、戸部の案に賭けてみるか?」

戸部「ああ、そうしよう、次で最後だ」



きゃあああああああ!!!


街から悲鳴が聞こえてきた

外に出る一同

街では怪人が3体暴れていた

志摩「あの怪人は…」

戸部「見覚えあるか?」

志摩「ああ、だが、改良されている、一体誰が…」

藤「俺、行きます!」

ベルトを操作し、ライダーへと変身する藤

組織に改造された姿から一転

時雨のライダースーツを基調とした青い姿のライダーへと改良されている

プロテクターやヘルメットもわずかに手が加えられており、銀色の素材が生かされている

ライダー「トォッ!!」

高くジャンプし、街へと降りていく


女の子「お、お兄ちゃん…」

男の子「さ、桜に近づくなあ!あっち行けえ!」

男の子が小さな鉄の棒を振り回す

怪人「へっ、そんなおもちゃで何ができるってんだぁ?」

不気味に笑いながら、指を鳴らし近づく怪人

男の子「う、うわああああ!!」

一心不乱に怪人に向かっていく男の子

怪人「うるせえガキだぜ…」

男の子に手を上げようとしたその時、

男の子の頭上に突風が吹く

男の子が顔を上げ、目を開けると、怪人が吹っ飛んでいた

男の子「あ、あれ…?」

ライダー「やるな、颯。名前の通りだ」

颯が後ろを振り向くとライダーが立っていた

颯「お、おにい、ちゃん…?」

ライダー「交代だ、妹を守ってやれ」

頭にポン、と手を置き、逃げるように促す

うん!と頷き、颯と桜は離れていった

怪人「くそっ!てめえがライダーってやつか!すっかりヒーロー気取りだな!」

怪人が起き上がる

ライダー「ヒーローはさっきの子だよ。俺はただの友達だ」

怪人「ふざけやがってえ!この街ごと吹っ飛ばしてやるぜえ!」

街で2度目の戦闘が始まる



続く


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