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【創作】2人で作ったライダースーツ【仮面ライダー】9話

組織 研究室

大の字で台の上に寝かされるライダー

ヘルメットのみ外されており、首から下は変身後のままだ

そんな状態で目を覚ました藤はすぐに状況を理解する

藤「ここは…実験室か…」

志摩「おはよう、そしておかえり、N」

手袋をはめながら志摩がやってきた

藤「お前…!」

志摩「おっと、そんな怖い顔をするな。さっき手助けしてやったのを忘れたか?」

藤「手助け…?」

先の戦闘中の通信を思い出す

藤「あんたが…」

志摩「そうだ、ちょっと手を貸してもらいたくてねえ」

藤「誰がそんなことを…!」

志摩「君にとっても良い話なんだがねえ、手を貸してもらいたいのはここからの逃走なのだから」

藤「…?」

なぜこの男が逃走する必要があるのか? 藤は続きを聞いてみたくなった

志摩「君が裏切ってくれたおかげで、私の立場が危うくなってねえ。もうここにいても先が見えてるんだ。私は自分の研究ができれば場所にはこだわらない。だから、ここを離れる。分かったかな?」

藤「組織がそんなことを許すのか?」

志摩「辞表を書いて『お世話になりました』ができれば、こんなお願いはしないよ」

志摩「逃走経路は確保してあるし、荷物も整えた。さあ、さっそく逃げよう」

そういうと、藤にヘルメットを被せる

大の字のままライダーへと変身した藤

志摩「それで枷は外せる。私を襲うふりをして逃げるんだ。ヘルメットがガイドをしてくれる」

ライダー「ふりで済むかはあんたの態度次第だけどな」

枷を簡単に壊し、志摩のみぞおちに一発お見舞いするライダー

志摩「ぐっ…!」

予想外の痛みに頽れる志摩

動けなくなった志摩を背負い、ヘルメットの内部モニターに映る経路を進むライダー

基地の監視システムが逃走するライダーを捉えた

戦闘員「報告!ライダーが志摩主任を襲い、逃走中!」

基地内のアラームが鳴り響き、各所の扉が閉まっていく

志摩「き、気にせず進め… ガイドに従えば捕まることはない…」

ライダーの肩に担がれた志摩がしゃがれた声で話す

ライダー「これ…どこに向かってるんだ…?」

通路の向かいから戦闘員が3人現れた

戦闘員「いたぞ!撃て!」

志摩「ま、待て!撃つな!」

戦闘員に叫ぶ志摩

戦闘員「水仙様からのご命令です。志摩主任ごと撃っても構わない、と」

言いながら銃を放つ戦闘員たち

とっさに志摩を投げ捨て、両腕で弾を受けるライダー

ライダー「やっぱり、銃は効かないね」

戦闘員「くそっ…!」

ライダー「はぁっ!」

戦闘員に向かいジャンプ

先頭に立っていた者に膝蹴りを食らわせ、後方に吹っ飛ばす

残りの二人が怯んだ隙に、素早く一人の顔面を、もう一人の腹を殴り、無力化させた

志摩「な、中々やるじゃないか…」

流れを見ていた志摩が感心する

ライダー「あんた、本当に捨てられたんだな」

志摩「ああ、どうやらそのようだ。すまないが、拾っていってくれ」

ライダー「どうせ、見捨てたらガイドが消えたりするんだろ。ガイドが終わるまでは拾ってやる」

志摩「私のことが分かってきたみたいだな…」

ライダー「もう動けるだろ。必死に追いついてこい」

冷たく言い放ち、先に進むライダー

志摩「チッ…調子に乗りおって…」

文句を言いながら走る志摩


監視室

水仙「どこに向かってるの?」

監視係に聞く水仙

監視係「この先は、兵器の格納庫です」

水仙「格納庫…?」

ボス「そろそろ、見学は終わりじゃないかね。水仙」

監視室の扉が開き、ボスが現れた

水仙「ボス…!」

ボス「志摩が組織からいなくなることは構わん。しかし、それは死を持ってのみ。奴の頭には我々のあらゆる技術や情報が詰まっている。私が言いたいことが分かるかね?」

水仙「はい… 確実に二人を消して見せます。」

頭を下げ、コツコツと部屋から出ていく水仙

いつもの余裕は表情から消えていた


格納庫

志摩「ハァ…ハァ…着いたか…」

ライダーのヘルメットが一つの兵器に矢印を向けた

矢印の先には…

ライダー「バイク…?」

志摩「それは、お前専用に作られたバイクだ。覚えてないか?」

Nとして活動していた際、バイク部隊を率いて街を蹂躙した記憶が断片的に蘇る

ライダー「…ッ! バイクをこんなことに…」

志摩「さあ、逃げるぞ… あと一息だ…」

志摩がバイクに近づこうとしたその時…

水仙「そこまでよ!」

二人が声の方を見る

そこには、いつもの派手なドレスではなく、黒い戦闘服を身に纏った水仙が立っていた

志摩「水仙… やっと本気を出したか… お前も後が無さそうだな…」

水仙「黙りなさい!あんたたちを殺せばいいだけの話よ!」

水仙の身に着けているスーツの襟から外開きに細長い葉のようなものが複数広がる

左の鎖骨あたりに白い花弁が咲く

長い袖の口周りにも葉のようなものが広がる

レザースーツを着た水仙の怪人と化した女傑が立ちはだかる

志摩「気を付けろ…奴は本気のお前と同格だ…」

ライダー「…」

戦闘態勢に入るライダー

水仙「シャァッ!」

水仙が飛び掛かる

体を捻り、避けるライダー

しかし、袖口の葉が弦のように伸び、ライダーの首を捕らえる

ライダー「ぐっ…」

水仙は体を空中で横回転し、ライダーを地面に叩き伏せた

すかさず、追撃する水仙

ライダーにマウントを取り、口から深緑の粉を吐く

咄嗟に両腕で防ぐライダーだが、細かい粒子は腕とヘルメットを潜り抜け、ライダーの肺に入り込む

毒性の粒子を吸ったライダーは激しい呼吸困難に陥る

もはやここまでか、と思われた

ドンッ!!と鈍い音が響き、体が軽くなるのを感じたライダー

目を開けると、水仙がいない

代わりに目に入ったのはバイクにまたがった志摩だった

志摩「乗れ!逃げるぞ!」

志摩が水仙を轢いたのだ

志摩の後ろに乗るライダー

志摩はハンドルを回し、あらかじめ開けておいた扉から脱出した

水仙が無理やりこじ開けてきた扉から、遅れて戦闘員たちが入ってくる

戦闘員「水仙様!ご無事ですか!」

水仙「早く奴らを追うのよ!」

余っていたバイクにまたがり、発進しようとするが、出口が閉まってしまう

監視室では、混乱が起こっていた

監視係「先ほどから、扉のシステムにエラーが発生しています!復旧にはまだ時間が…」

ボス「志摩め… 」

男「奴を手放したのは、悪手でしたね。ボス」

監視室に男が一人入ってきた

ボス「…君がいるから手放したのだ。この状況をなんとかしろ、皇」

皇「ふうむ、もう次の段階に進んだ方がいいでしょう。奴らのことは忘れて、残りの侵略作業に移りませんか?」

ボス「なに…?」

皇「奴に固執したせいで、損害が大きくなっています。それよりも、侵略と研究を進めたほうが、組織の発展に繋がります。」

ボス「奴はまた現れるぞ」

皇「ご心配なく。N…ライダーでしたっけ? 彼のスペックはもう旧世代のものです。私の新作に比べればね…」

ボス「期待していいんだろうな…」

皇「もちろん…♪」

監視室のコンピューターを素早くいじり、システムを復旧させる皇

新たな脅威が生まれていた


とある山道

ライダー「…どこに向かってるんだ?」

バイクを運転する志摩に尋ねるライダー

ヘルメットの浄化装置が働き、毒の効果が薄れたようだ

志摩「ヘルメットに出てるだろ、よく見ろ」

言われて、ヘルメットのガイドの目的地を見るライダー

ライダー「ここって…戸部さんの家!?」

志摩「そうだ、奴のとこに転がり込む」

ライダー「あんた、戸部さんのこと知ってるのか?」

志摩「着いたら教えてやる。戸部も交えてな」

夜が明けかける山道をバイクが駆け抜けていった


続く



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