『のぞみ』を待つ

長い長い階段を急いで駆け登ると
すぐ目前で発車の合図と共に扉が
パタンと音を立てて閉じてしまった

私は今、博多駅のホームにいる
本来乗車予定の新幹線を見送り
呆然と立ち尽くしている
同時に気の抜けた身体は
地面にぺたんと崩れ落ち
音だけが虚しく響き渡った

列車を乗り過ごした虚無感
しかしそれに相反してどこか
安堵しそっと胸を撫で下ろす
そんな私がここにいるのだった

目まぐるしい日々を過ごす中で
もうずっと無理をしていたらしい
きっかけが無ければいつまでも
立ち止まれなかった自分がいた

少し立ち止まって
寄り道してもいいじゃないか
次に新幹線が来るのが
一時間後なのか二時間後なのか
来たときそれに乗車をすれば私は
一番最初に乗車した人物になれるのだ

これで良いのだ
それで良いのだ
自分にそう、言い聞かせる



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