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日本最古の「おもしれー女」、かぐや姫。

「竹取物語、あまりにも面白すぎる!てか、かぐや姫って日本最古の『おもしれー女』じゃん!」

中学生以来の「竹取物語」を再読して思ったことだ。

学校で習う話って、みんなが行儀良く座って読んだり、テストに焦って単語を覚えたりするため、真面目イメージが付き纏ってしまう。

だから、身構えて、ある種「勉強」と思って読み始めた。

だが、竹取物語は、もうエンタメ、つまり
「新喜劇」や「コント」、「ギャグ漫画」みたいに楽しむものだと感じた。

この面白さをみんなに共有したいと思い、今回は記事を書いていこうと思う。


1.竹取物語、あらすじと参考文献

竹取物語は、小さい頃から親しんだ人も多いだろうが、一応簡単なあらすじを載せておく。ちなみに、現存する「日本最古の物語」と言われる。

竹取の翁が竹の中で光る美しい少女を見つけ、かぐや姫と名付けて育てる。彼女は成長するにつれて絶世の美女に。
多くの求婚者が現れるが、難題を与えて全て断る。
帝もそんなかぐや姫に興味を持つが、会おうとしない。
やがて、かぐや姫は自分が月の世界の住人であることを明かし、最終的に月の使者に連れ戻される。地上の人々は彼女との別れを嘆くが、かぐや姫は月へと帰っていく。

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記事を書くにあたっての参考文献はこちら。

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2.おもしれー女とは?

ここで、「おもしれー女」について、定義づけておこう。
文字通り「面白い女」の意味もあるが、あえて「おもしれー」という表記で書いているのは訳がある。

「おもしれー女」とは、

少女漫画等に頻出するモテ男子が、自分になびかない女子(≒主人公)に出会ったときの、プライドを傷つけられているのを隠しきれていないセリフ、である。

モテ男の「おもしれー女」を攻略したい心理が、物語を動かすのだ。

(参考記事)

3.おもしれー女、かぐや姫

かぐや姫の「おもしれー」所、を紹介する。
ちょっと誇張したりしてるものの大体原文に即している。

「なぜ結婚するんですか?」

翁は、美しく成長したかぐや姫に、丁寧に結婚を勧める。
「人間界というのは、男と女は結婚することになってるんですよ…。」
かぐや姫は、「どうして結婚などどいうことをするんですか?」と疑問を持つ。

かぐや姫は、缶コーヒーの宇宙人ジョーンズのように、
「この惑星では…男と女というのは結婚というものをするらしい…」
そんな不思議めいた目線で人間界を見ているのだろう。

だが、この物語が描かれた時代を考えると、作者が「結婚?はて?」のように、常識を疑う目線を持っているのも面白い。

この時代の作者の創作力、視野が広い。
今なら多様性の時代と言われる通り、色々なあり方が当たり前と言われるが、当時はそうではなかったであろう。

男が女の元に通う「通い婚」が普通だった、つまり男は色々な女の元に行って当たり前だった時代だろう。
この時代の女性に、人権などとんでもない。

(追記)コメント欄でご指摘いただいたが、必ずしも女性も自由じゃないわけじゃないらしい。安心。

この状況で、かぐや姫を通じ、結婚に疑問を投げかけられる。
作者は、未来人なのかもしれない。

人の心あるんか?

絶世の美女と名高いかぐや姫に求婚する、5人の貴公子。
貴公子たちは、姫の元に通い詰め、恋文を出すが一向に返事がない。

貴公子に詰め寄られて困ってしまった翁は、「誰か1人を選んでくれ…」と懇願するが、

「う〜ん…せっかく選んで浮気されたら悲しいし?私なんてそんな美人じゃないし(棒)…そうだ、私の望むものを見せてくれたかどうかで、愛情を図るとしましょう!」

翁「よきことなり^^」

そんなこんなで、貴公子たちはかぐや姫の家に集まった。

「皆さん、よくお集まりいただきました。皆さんのお気持ちに優劣はつけ難いですから、愛情を図るためにプレゼントをしてほしいのです、その結果で決めましょう。」

5人それぞれに、日本にはなく、命懸けの試練を乗り切っても手に入れられないような品物を指定する。

デスゲーム主催者かな?

帝「おもしれー女」

注意:ここから帝をイジってるので、不敬罪があったら逮捕されているレベルだが、あくまでも「竹取物語においての帝」であることをご理解いただきたい。

5人の貴公子たちは、嘘がバレたり、命懸けの試練で本当に命を落としたりして、かぐや姫には敵わなかった。
やはり日本最古のデスゲームを思わせる。

その噂は帝にも入ってきた。

あまりある富と権力、外見でどんな女でも自分のモノにしてきた帝。
貴公子の求婚をはねつける美女がいると聞いて興味を持ち、使者を派遣。
しかし、かぐや姫は、帝の使者にすら会おうとしない。

帝の使者が「あなたは帝の命令に背いています」と脅すと、
「だったら私を殺してくれたらいいじゃない!」など、物騒なことを言う。

使者の困り果てた話を聞いて、帝は思った。

「かぐや姫…おもしれー女。」

ごめん、何よりも、これが言いたかっただけである。
もう満足なので記事を終わらせてもいいぐらいなのだが…
面白いところは他にもあるので続けさせてほしい。

この「おもしれー女」、日本最古ではないだろうか?
世界最古かって言われると怪しいな…クレオパトラもいるし。

かぐや姫不意打ち作戦

帝はかぐや姫不意打ち作戦に出る。

「爺さんとこ、山奥でしょ?狩りに出かけたついでに、寄るわ。」

そして、家に入ってかぐや姫をじっと観察。
「すげえ、超美人だわ…。」
そして、宮中に連れて帰ろうとする。

すると、かぐや姫は
「私は異世界人ですから、それはできませんっ!」と発光体(!)の姿になってしまう。

帝はめちゃびっくりする。
「わかった!わかったから、もう連れて帰ろうとはしないから、せめてもう一回その姿を見せてくれ!」

というと、元の人間の姿に戻った。
「やっぱ超美人だわ….。」

この「見る」という行為が大事なようだ。
実は5人の貴公子は、結局その美貌を「見る」ことはできなかった。

参考文献の解説にはこのように書いてある。

古代貴族の男女関係では、「見る」ことは特別な意味をもっていた。
女性にとって、男性に姿を見られることは自分の魂を所有されることに等しかった。

竹取物語(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

そうなんだ…。
顔を見せることが、今でいう「裸を見せる」ことレベルの恥ずかしさだったのかな?

今では考えられないことだ。
…いや?むしろ今は見せていない時代なのでは?
他のnoterさんのお顔は、アイコンを通じてしか知らないことが多い。

でも、その文体や表現から滲み出るお人柄で、性別関係なく
「このnoterさん、好きだなあ…」と思うことがある。

私にフォローされている人はすごく好かれている可能性があることに注意してほしい。

帝とは友達(?)になる

帝とはその後3年、かぐや姫が月に帰るまで、文通を続ける関係になる。
3ヶ月で成長するかぐや姫にとっての3年は、長いのか短いのか。

いずれにしても顔を見られ、向かい合った経験から、ライバルのような関係になり、次第に心を開いていったのではないだろうか。

ここからは私の意見だが、帝とかぐや姫は共通点がある。
「周りから大事にされてるけど孤独」ってことだ。

2人とも、周りに丁重には扱われているものの、本当の気持ちを知っている人は、多分いない。

かぐや姫は気づいてる。
翁が、時々自分の出世欲に自分を利用しようとしていること。
帝にも、色々な人間が侍っている。
だが、利用する人はいても、本当の理解者はいないのではないだろうか?

恵まれた立場だからこその孤独を、手紙を書くことで癒し合っている。
そのように私は考察している。

まあ、帝は「ワンチャン狙ってた」説もないわけではないが…。

ともかく、実際に会う(=結婚)まではいかないものの、長期間の手紙のやり取りを続けていた。

尊い。

「人の心」を理解したら月に帰りたくなくなった

かぐや姫は元々異星人だったから、デスゲームを主催するなど人の心がないように見えた。
だが、帝との交流を通じて、「人間」の心を理解していく。
だから、いずれは月に帰らなくてはならないことが、段々憂鬱になっていく。

月を見ては涙を流すかぐや姫は、ついに翁に出生の秘密を打ち明ける。
「私は実は月の国からやって来た者なのです。もうすぐ帰らねばなりません。」

周りの人たちは驚き、嘆き悲しむ。
翁は、帝に軍隊の派遣を要請、天から迎えが来たら捕まえさせる!と意気込むけど、天人の前に軍隊は戦意喪失してしまった。

(超能力の前に戦意喪失って、この前マーベル映画で見たが、この時代の人がなんで描写できるんだろう…作者どこから来た人?)

人の心を失う前に帝に手紙を書く

天人が迎えに来た時、天の羽衣を着る前に、帝に書き置きをする。
天の羽衣を着ると、人の心がなくなり、今までのことも忘れてしまうのだという。

天人「遅い!(イライラ)」
かぐや姫「はいはいそんな意地悪言わないの(カキカキ)」

みたいな一幕もあってちょっと面白い。

書き置きの中で、このような歌が詠まれる。

いまはとて天の羽衣着る折ぞ君をあはれと思ひ出でける

竹取物語(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

人の心を失う、いわば「心の死」。
その直前に、特別な感情で思い出すのは、あなたなんですよ。

技巧がないストレートな表現に切なくなった。
世界はそれを愛と呼ぶんだぜェ?

帝に不死の薬と共に渡すよう、頭中将(=内閣官房長官的な人)に託ける。

かぐや姫が天に帰った後、
書き置きと不死の薬を渡された帝は、

「姫がいない世の中で不死なんて意味がない」

と、不死の薬を日本で一番高い山で燃やして、それが不死→ふじ→富士山になったようだ。

私は誤解していた。
中学生の授業で習った時は、「かぐや姫という絶世の美女を、帝は失いたくなかったのだろう」と思ってた。だから、あまり響かなかった。

でも、改めて読んでみると、2人の心のつながりがわかる。
3年間の交流。最後の書き置き。
かぐや姫にとっても、帝にとっても、お互いがなくてはならない存在になっていた。

竹取物語。
ちゃんとラブストーリーだった。

4.おもしれー話、竹取物語

ここからは、「竹取物語」ストーリー全体の魅力を探っていきたい。

ストーリーがスッキリしてる

「竹取物語」はストーリーが複雑すぎず、スッキリした展開になっている。
テンポもよく、無駄な場面が一つもない。

古代に作られた話の中には、登場人物が次々と出てきたり、ストーリーが色々なところに行ったりして、読みにくい原因になることがある。

竹取物語は、登場人物も限られているし、「竹から生まれて月に帰る」という筋が通ったものとなっている。

私が竹取物語を読んだのは、受験勉強の教材の一つとしてである。
そのため、あまり面白さを味わえなかったことに後悔している。

現役の中学生や高校生の方は、ぜひ現代語訳付きでも通しで読んでみると面白いかと思う。

語源ギャグ多めで竹生える

作者のギャグセンスが冴えている。
これを今の私が説明するとわかりにくくて面白く無くなってしまうのだが、例を挙げてみたい。

(原文)
さる時よりなむ、「よばひ」とは言ひける。
(寸評)
本来は、相手に呼びかけ、求婚する意味の「呼ばふ」の名詞形「呼ばひ」である。それが俗化して、夜に相手(ふつう女性)の寝室に這って忍び込む「夜這い」に変わった。

竹取物語(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)より抜粋

これは作者の冗談、すなわち「語源ギャグ」なのだ。
この語源ギャグが作中には散りばめられていて、「貝が見つけられなかったことを、この頃からかひ(=甲斐)なしというようになった」とか、そういうウソ語源ばっかりだ。

当時の人はウソ語源だということをきっと分かって楽しんでいた。
草ならぬ「竹」を生やしていたに違いない。(言いたいだけ)

本当に藤原氏「批判」なのか?

かぐや姫にやられる、5人の貴公子は作品から200年以上前の、実在の貴族がモデルとなっているそうだ。

「仏の御石の鉢」:石作の皇子→丹比真人島(左大臣)
インドにしかない鉢を奈良の山寺の鉢でごまかしすぐバレる

「蓬萊の玉の枝」:庫持の皇子→藤原不比等
大規模プロジェクトで偽物を作るが、見せてる間に技術者が請求に来る

「火鼠の皮衣」:阿部御主人→天武天皇に仕えた同名の重臣
中国の商人から偽物を掴まされ、燃えないとされる皮衣があっけなく燃える

「竜の首の玉」:大納言大伴御行→同名の名門の軍事貴族、壬申の乱で功績
自ら海に出て竜の首の玉を取ろうとして遭難、命からがら逃げ出す

「燕の産んだ子安貝」:中納言石上麻呂足→天武天皇に仕えた石上麻呂
燕の巣まで登って取ろうとするものの落下してその後死去

竹取物語(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)より抜粋して筆者要約

実在の人物をモデルとしていることから、「時の藤原政権を批判する意図が含まれている、だから作者不明なのだ」と言われることがある。

私は「批判」まではしてないんじゃないか、と思ってる。

5人の貴公子が頑張ったり嘘をついたりするところは、読者に笑いをもたらしてくれる。

むしろ、「いじり」とか「自虐」なのではないだろうか?

「いじり」と「批判」の違いって、文字にするとわかりにくい。

現代でも、例えばYahoo!ニュースで
「〇〇氏、◾️◾️氏を痛烈批判。『もう顔も見たくないわ!』」
みたいな、見出しで書かれていても、実際は番組内で軽口が交わされているのを切り取っただけで、「なぁんだ」と思ったりすることがある。
1000年以上経ってたら余計わかりにくいのでは?

竹取物語の作者は、
「コントを作るのがすごい上手いお笑い芸人」マインドを持った人だと思う。
コントの中には、「こういう発想するのか!」と驚かされるものが多い。

で、実は5人の貴公子と同じような立ち位置にいる人、つまり政権側の人間、藤原氏なのだったりして…。

自分も含めていじりながら、貴族みんなで楽しんでる、そんな風景が浮かんでくる。

あくまでも私の意見、読書感想文である。
竹取物語専門家の人はぜひツッコんで欲しい。

5.終わりに

「竹取物語」の楽しさが伝わっただろうか?
私が言うまでもなく、とても面白い話である。

中学・高校の授業以来触れていないと言う人は、ぜひ読んでみてほしい。
人生経験を積んだ今ならではの魅力が見つかるはずだ。

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(おまけ)茸の君

ここからは、わかる人にはわかるタイプのフィクションです。
なんのはなしかわからない方も、楽しんでいただけたらと思います。

なんと、『竹取物語』の番外編が見つかったらしい。
早速、現代語訳してみることにした。


翁は、かぐや姫が求婚者たちに無理難題を突きつけ、誰も成功しないことに頭を抱えていた。ちょうどその頃、一人の男が翁の家を訪ねてきた。

「もしかして、求婚者の方ですか?五人の貴公子の中には、いらっしゃらなかったように思いますが…。」

「いいえ、私は求婚者ではありません。ただの旅人です。恐れながら、かぐや姫は自分が本当に何を望んでいるのかを、まだご存じないのでは?ですが、姫が本当に求めているものを、私は持っています。」

翁は訝しんで男を見つめた。

「あなたは、いったい誰なのです?」

「私は“茸(きのこ)”と申します。」

そう言うと、男は一つの巻物を差し出した。

「私は、このように世にある、なんのはなしかわからない話を集めています。」

怪しみながらも翁は巻物を受け取り、男が去った後、それをかぐや姫に手渡した。

かぐや姫は、その日から巻物を読みふけった。
確かに、なんのはなしかは分からなかったが、どこか不思議な温かみがあって、夢中になってしまった。

姫は、「この茸の君という人に会ってみたい」と思った。
だが、それ以来、彼が再び姿を見せることはなかったのである。


数年後、帝はかぐや姫と手紙のやり取りを始められた。
姫が非常に多くの知識を持っていることに、帝はとても驚かれた。

かぐや姫との手紙の交換は、帝の心を慰める時間となった。
ただ、帝にはどうしても気になることがあった。

それは、かぐや姫がいつも手紙の最後に記している一文だった。
最初は「井」という文字で始まっていたのだ。

そこで、帝も手紙の文末に同じ言葉を書き加えてみられた。
すると、なぜかそれを読むたびに、心が落ち着くように感じられたのである。

#なんのはなしですか

〜茸の君 終わり〜

>コニシ木の子課長
お休みのところ平安時代にまで行っていただいてすみません💦
引き続き、心ゆくまで、ごゆっくりされてください。
復帰の折、またお話できましたら幸いです。



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