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「社会はヤクザでまわってる」

山川光彦著「令和の山口組」読了。昭和の時代に隆盛をきわめ、現在もなお威光を放つ山口組の現状と問題点について研究者の立場から書き尽くした1冊。

徹底した現状分析はもちろんのこと、神戸芸能社、ひいては江戸時代までさかのぼり、山口組の起源まで詳しく掘り下げている点が興味深い。きわめて個人的な話になるが、幼い頃から父親が家でよく「仁義なき戦い」シリーズを観ていたため、暴力団や任侠の世界は何となく知っているつもりでいた。

こちらの本では何かと話題になった「暴力団排除条例」についてやや批判的に考察している。条例や法律には必ず隙間があり、上からの圧力で締めつけたとしてもそれは本当の「浄化」にはつながらないのだと、著者である宮崎学氏は指摘している。

私とて、できることなら反社会的勢力とは無縁の人生を送りたいものだが、実は、介護業界にも闇の包囲網は迫りつつある。

基礎的な講習と実技試験を突破すれば数週間程度で資格が取れる介護士は確かに安定した食い扶持であり、「最後の砦」と言われるのも理解できる。昨今、介護職の低賃金化が問題視されているとはいえ、すでに社会の片隅に追いやられ、今日の食糧にも窮するような境遇の人間からすれば充分に魅力的な業界だろう。

くわえて、介護業界は深刻な人材不足にあえいでいる。人手不足にかこつけて反社会的勢力を裏で利用する事業所が出てきても不思議ではない。山口組のそもそもの成り立ちが貧困労働者の派遣業にあると考えれば、むしろ原点回帰と見たほうがいいのかもしれない。

山口組の考察としては、こちらの新書も興味深い。


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