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「一発屋の矜持」

山田ルイ53世著『一発屋芸人列伝』読了。自らも正真正銘の一発屋(?)であるお笑いコンビ髭男爵・山田ルイ53世による一発屋芸人たちのスケッチをまとめたエッセイ。

コウメ太夫、波田陽区、ムーディ勝山……主に2000年代前半から後半にかけてお笑い界を席巻した錚々たる一発屋たちが名を連ねており、ラインナップを見るだけでも豪華である。テツアンドトモのような営業で稼ぎまくる一発屋がいるかと思えばハローケイスケなど「一発屋にすらなれなかった一発屋」も入っていて、一発屋へのさりげない愛情が感じられる。

何より、著者の筆致がクセになる。時折、クスリと笑える気の利いた小ネタを挟みつつ、ひとりひとりの一発屋について絶頂期の人気ぶりを振り返りつつ、現状の暮らしぶりをさりげなく伝える。過大評価でも、過小評価でもない。寄り添っているようでいて微妙に突き放したクールな文体が読んでいて心地よい。

まったく、自称一発屋芸人の筆力にはカンパイである……髭男爵だけに。

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