日本のファンが選んだ「マニアックなQUEENの曲」
日本限定のQUEENのアルバム、「グレイテスト・ヒッツ・イン・ジャパン」は、2020年に発表された日本のファンによる投票結果上位12曲が収録されたアルバムです。
どれどれ?日本のファンはどんな曲に投票したのか?と、ファンのみならずQUEENの関係者も関心を持たれたことでしょう。
QUEENファンではない人でも、QUEENといえばこの曲、とパッと浮かぶ曲ってありますよね。
選ばれたどの曲もなるほど、という有名な曲ばかりでしたが、他の国ではこの曲はランクインしないのでは?と思える曲が選ばれていました。
こんな曲が上位にくるとは…。としみじみ感慨深くなってしまったのがこの曲です。
◆「The March of The Black Queen (マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン)」
ああ、この曲か!と思われた方は相当QUEENに詳しい人なのではないでしょうか。
なぜなら、こちらはシングルカットもされていない、いわゆる知る人ぞ知る隠れた名曲という位置付けの曲だからです。
更には万人受けしないであろう、長くて複雑な曲でもあるからです。
◼️アルバム「QUEENⅡ」について
この曲が収録されているアルバム、「QUEENⅡ」は、1974年にリリースされました。有名な「ボヘミアン・ラプソディ」が売れる二つ前のアルバムです。
まだQUEENが世界的に有名ではない頃に、QUEENにいち早く目をつけた日本では、雑誌でこのアルバムの特集が組まれ、大絶賛の記事が掲載されたのです。
すると日本では「QUEENⅡ」が売れに売れたのです。
「マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン」が当時、ラジオなどでよく流れていたのかは定かではありませんが、このアルバムを聴いていた世代の方ならばこの曲はこのアルバムの代表的な曲だと思われるかも知れません。
◼️アルバム「QUEENⅡ」について少しだけ細かく解説
前半(1〜5曲目まで)が主にブライアン・メイが作った「サイドホワイト」と呼ばれ、
後半(6〜11曲目)がフレディ・マーキュリーが作った「サイドブラック」と呼ばれています。
ブライアンとフレディが互いの才能を競い合うかのように「サイドホワイト」と「サイドブラック」ではカラーが異なり、それぞれの魅力溢れたアルバムになっています。
ブライアンのやんわりと温かい曲でまとめられた「サイドホワイト」に対して、フレディの「サイドブラック」は鋭くエキサイティングな曲が多く、この頃のフレディの迸る創作意欲が伺えます。
ちなみに私はQUEENの中でこのアルバムが一番好きです。
◼️フレディが作り上げた「黒の女王」の世界
そんなアルバムの、「サイドブラック」すなわちフレディ側の4曲目に収録されているのが、「マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン」なのです。
「QUEENⅡ」の中でも特にフレディの渾身の力作です。
「マーチ・オブ・ザ・ブラッククイーン」=「黒の女王の行進」
この曲名で「不思議の国のアリス」を思い出される方は多いのではないでしょうか。曲の内容は正にファンタジーの世界です。
目まぐるしく変わる曲調はドラマチックで、一つとして同じメロディがないにも関わらず、どのメロディも洗練されていて、曲にも歌詞にもフレディの完璧主義な一面が垣間見れます。
ハードロックな曲を作る反面、こんな繊細な曲も作り、歌詞にはファンタジーを取り入れるという、フレディの非凡な才能を発揮した曲とも言えます。
さて、フレディの作り上げたファンタジーの世界とは。こんな内容です。
恐ろしい「黒の女王」が支配する世界では、子供達を地下牢に閉じ込め、ベビーオイルを塗らせ、指の爪は全て黒く塗らせます。
まるで「ヘンゼルとグレーテル」に出てくる、子供を食べてしまう魔女のようですよね。
「黒の女王」の行進が始まると、主人公はひれ伏すことしかできず、全てをあなたに捧げます、と忠誠を誓います。従者を引き連れ、目につくものを全て奪い支配する恐ろしい「黒の女王」
ブライアンのギターとメンバーのハーモニーが見事に調和していて、残酷でありつつ美しい曲として完成しています。
◼️ブライアン・メイの「白の女王」
ちなみに、この曲と対照的に、同アルバム、ブライアン作の「サイドホワイト」には、「ホワイト・クイーン」という、その名も「白の女王」が登場する曲があります。こちらは美しい女王です。
ブライアンの作り上げた美しい「白の女王」と、フレディの残酷な「黒の女王」の対比も面白いアルバムです。
↓こちらブライアンの「白の女王」
◆ 「White Queen(ホワイト・クイーン)」QUEEN
◼️日本のQUEENファン
こんな曲が上位にくるとは。
投票したファン層を考えると、このアルバムを聴き倒していた世代なのかな、と。「ボヘミアン・ラプソディ」が売れる前からQUEENを支えてきた日本のファンの本気を見た気がします。
こんなコメントを残したロジャーは、日本には今でも自分達を初期から支えてくれているファンがいることにニンマリしているのではないのかな、なんて想像してしまいます。
日本ならではの、マニアックな曲のランクインにロジャーもブライアンも(ジョンも)満足しているのではないかな。