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青天の霹靂48(焼き肉屋2)

刑事の顔になった日向だったが、なぜかすぐに難しい顔をする。
その理由は、日向のこの言葉で分かる。
「まず状況確認と行きたいところだが、でもここは俺の管轄外だしな」
「あなた仮にも刑事でしょ。その刑事が自分の管轄気にして、どうするのよ。事件は目の前で起こっているのよ。それも、刑事の目の前で。ここで動かずに、いつ動くの?」
廉夏が聞けば、日向は小さくなって言う。
「事件が目の前で起きたときです、はい。でも、管轄違うと、手を出すと、いろいろ後々うっせぇんだよな」
そう言って頭を掻く。
「刑事さんの緒事情何て、知りません。さ、調査に行きましょう」
廉夏がせかし、日向を引っ張る。
「でも、刑事って以外と子供の集まりね」
「そうかもな」
ハァーと、日向は重いため息をつくと、重い腰を上げる。
そして、店の者に「刑事ですが、何か有りましたか?」と聞くと、助けを求めるように、板垣に泣き付く。
「刑事さん、大変です。このお客様が、急に泡を吹いて、倒れてしまって」
そう言われ、泡を吹いて倒れている男を日向は見る。
そして、男の首に触れる。
脈を見るためだ。
けど、日向は静かに首を横に振って言う。
「ダメだな。もう死んでいるな」
それを聞き、店の従業員は泣き出す。
「もう、ダメか?」
いつの間に来てたのか、廉が聞く。
「ああ、ダメだ。死んでる」
日向は上着を脱ぐと、男にかける。
「そうか」
廉は確認する。
そして、日向に言う。
「俺達は外で待ってるわ」
廉は観月の手を引く。
観月は、親のことを思い出し震えていた。
「そうしてくれ」
日向は廉夏に聞く。
「さて、何でこの男は死んだと穣ちゃんは思う?」
「このお店の料理かな?」
廉夏は考えられることを言う。
「だが、料理は皆食べているぞ」
日向にそう言われ、廉夏は悩む。
「だよね、そうすると何だろう?」
「たぶん、自分で持ってきたガムを食べてじゃないでしょうか?」
怯えた調子で店の店員が言う。
「なぜ、自分で持ってきたガムだと分かるんだ?」
日向が聞く。
「紙です。うちでは、それは扱っていません」
そう言って、机の上の丸まった紙を指差す。
「これか?」
それを廉夏は丁寧に広げて伸ばす。
「ふ~ん、匂いを消すガムね。そう言うエッチケットは大切にしてたのね」
と、廉夏が言う。
「でも、変ねぇ」
「何が?」
「だって、まだ食事終わってないのに、普通ガム何か食べるかしら?」
「そう言われると変だな」
「でしょ?」
「女だよ。このあと遊ぶ予定があるって、自慢気に言ってたぜ、金子は」
被害者の斜め前の男の子の一人が言う。
「ふ~ん、被害者の名前は金子君か? で君の名は?」
廉夏に聞かれて、その子は驚く。
それに、日向はため息を付き、聞く。
「嬢ちゃん、邪魔。で、君の名は?」
「岸谷淳平(キシタニジュンペイ)です」
「で、何してる人?」
日向が聞くと答える。
「S大の4年です」
「うわ~、名門じゃん」
廉夏が騒ぐと、日向がため息をつく。
「騒ぐなら、ちょっと向こう言っててね」
シッシと手でやられ、廉夏は怒る。
「邪魔何かしないのに、失礼ね」
「廉夏、日向さんの邪魔しちゃダメですよ」
冬眞はそう言って、涙目になって、廉夏がいじけると、冬眞がフォローするように言う。
「それじゃあ、僕の方を手伝ってくれませんか?」
冬眞がそう言うと、途端に廉夏は嬉しそうに、冬眞について行く。
「うん」
それを見て、日向はため息を再度付くと、自分を奮い立たせるように左手を添えて右腕を回す。
「じゃあ、一人ずつ話を聞かせてもらおうかな? それから、被害者をどう思ってたかを? じゃあ、左回りでどうぞ」
と言って、一人ずつ話を聞いていく。
「で、君たちはさっきから聞いてると、ただの大学のお仲間って、だけじゃないよね」
日向がそう言うと、被害者の左隣の席の子が言う。
「たぶん、彼の手駒となって動く仲間じゃないかな。少なくても僕はそうだった」
「手駒って?」
「彼の命令に従う良いように動く駒だよ。僕は彼に脅されていたから」
「何で?」
「僕、女みたいでしょ? だから、それでサラリーマンを騙して金取ってたことあって、それをネタに揺すられてました。他の人も同じだと思うよ」
「あっそ。ちなみにそれも犯罪だからね。で、君の名は?」
「はい。小早川佑(コバヤカワタスク)です」
「はい。君は被害者をどう思ってたか聞かせてくれないかな? 恨んでいたかな?」
そう日向が聞くと、小早川は首を横に振った。
「おかしいかも、知れませんが、僕は彼のことが好きだったんです」
「おかしくなんかねぇよ。好きになるときは、理屈じゃねぇからな」
日向がそう言うと、小早川は本格的に泣き出す。
「他の人達も早くゲロって下さい」
「俺達は何もしてない」
「あ~あ、もうそれいいから、時間がないんだ」
日向は何かを焦ったように言う。
「で、君たちは?」
「俺はあいつの高校時代からのダチだ。俺は関係ないぜ。それより、恨んでるのは、こいつだ。彼女をモテ遊ばれて捨てられ恨みまくってたぜ」
そう被害者の前の席の子が隣を指差しながら言う。
「俺だけじゃない、お前だって恨んでたじゃないか? 確かに俺はあいつが憎かった。でも、俺じゃない刑事さん信じて下さい」
そう言って、男の子が泣き崩れる。
「で、お宅の名前は?」
「渡辺敦郎(ワタベアツロウ)です」
泣きながら言う。
「あいつが悪いんだ。あいつに俺、借金があって、その取り立てに彼女を要求され、怨んでた。しかも、彼女が本気になった途端、ポイ捨て。彼女と付き合った理由も、俺の女だったからって言う理由だったんだ。そんな理由で納得行くわけないだろう?」
「でも、借金の方に彼女を差し出したのはお前だろ。お前もひどいな。そもそも、何でそんな男に借金何かしたんだ?」
日向が問いかけると、小さくなりながら言う。
「仲間内で、賭博が流行ってて、俺あいつに負け越してて、気付いたら払えない額になってて。でも、それもあいつが仕組んでた」
「はぁん、同情の余地もない。お前は払えないと気付いていたのに辞めなかった。ただ、お前は彼女が彼に本気になったから、それが許せないだけだ。彼女を本気で好きだったわけじゃない。自分に繋ぎ止めて置けなかったのは、自分のせいだろうが」
日向が言うと、男の子は泣き出す。
「泣きたいのは彼女の方だ。たぶん、一番の被害者だろうからな」
「そうだ。でも、俺じゃない。そう言えば、お前も脅されてたろうが、1人逃げんなよな」
三人の男が罪を擦り付けあってる。
その時、冬眞と廉夏が戻ってくる。
「はぁ~。お前らな。現場に入ってくるなよ」
「現場には、入ってないですよ」
冬眞は涼しい顔をして言った。
「で、何か分かったか?」
「そうですね。一言で言えば、彼はクレーマですかね。何かと言うと、すぐクレームする嫌な客だったようです」
「ふーん、クレーマね。迷惑な客ってわけだ?」
「ええ、それは従業員みんなが迷惑するほどに」
「厄介だな」
と、板垣が頭を抱える。
「そう、悩んだものでも、ないですよ」
冬眞はにこやかに笑う。
「ってことは? 他にも、何か収穫あったてことか?」
「従業員の中には、彼にムカついていたけど、殺意までを持っている者はいませんでした」
それを聞き、板垣は頭を掻きながら、吠える。
「ってことは、何か? やはり、仲間内ってことか、厄介だな」
「何で?」
廉夏が尋ねると、それに冬眞が答える。
「仲間内で起こった場合、庇い合う傾向があって、話は半分ぐらいで聞いておかないとダメなんです」
それを聞いた仲間達が怒鳴る。
「てめぇ、俺達の中に犯人いるとでも、ぬかすのか?」
「はい、その通りです」
「でも、この犯人さん達、庇い合うことはないんじゃないかしら? 逆ならありそうだけど」
「逆でも同じです」
「じゃあ、一人ずつ話を聞かせてもらおうか? 被害者をどう思ってたかを? じゃあ、右回りでどうぞ」
「俺、佐々木伸和(ササキノブカズ)って言います。俺は大学に入ってからの友達だし、あんま知らねえよ」
「一緒に食事に来る仲なのに?」
廉夏が聞いた。
「ある理由があって、俺らは逆らえないんだよ」
「ふ~ん、ある理由って」
「言いたくねぇ」
「あらま」
「大方、彼の行動が原因か?」
「つまり、自業自得ってことね」
廉夏が言って、日向に聞く。
「でも、日向、この中からどうやって犯人の検討をつけるつもり? あなたの見解は?」
「さぁな、皆目検討も付かない。何せ、容疑者が沢山いるだろう」
でも、冬眞が言った。
「でも、この犯罪を行える人は、割りと少ないですよね」
「そうだな。まずは店にいない人は、除外して良い」
日向がそう言ったとき、それに待ったを唱えたのは、冬眞だった。
「ちょっと、待て下さい。亡くなっているのが外から、持ち込まれたものなら、その仮説事態成り立たなくなるんじゃありませんか?」
「そうか。ガムを誰かから貰ってたら、外にも犯人がいることになるな」
「まさか、あいつか」
渡辺が言う。
「うん、誰だ?」
「彼女だよ。恨んでいても、可笑しくないだろう? な、な、そうだよな」
「そう言って、今度は彼女に復讐か、腐った根性しているよな」
そう日向が言うと、黙った。
「何も言えないか?」
日向は隣の男性に言う。
「言いたくないのは、良いが警察が来たら、それは通用しないぞ」
そう言われ、俯くと、ボソリと言った。
「俺バイトで裏口入学斡旋をしていて、そこをあいつに揺すられてた」
「分かっていると思うけど、それも犯罪だから」
「で、こうなると皆犯罪者だから、警察行こうか?」
笑顔で日向が言うと、
「はい」
渡辺が食って掛かる。
「何言ってやがる? 俺は犯罪は犯してない。行く必要ねぇだろう?」
「何もやってなければねぇ」
「やってねぇよ」
「じゃあ、言っとくぞ。早く言った方が」
「そう言えば、お前あいつにガムを渡していなかったっけ?」
「渡してねぇよ」
否定を頑張る。
で、日向が言う。
「はい、タイムアウト。折角早く言えって言ったのに」
パトカーの音が聞こえてくる。
「折角、俺が警察が来る前に言ったのは、警察が来る前にゲロち前って、自首に出来たのに警察が介入した時点で、それはなくなったわ。これからは、いくら自分から来ようと出頭扱いで刑が軽くなることはないからな」
「えっ、何か違うのか?」
渡辺が聞く。
「警察が介入した時点で、自首と言う扱いはなくなるつまり、どんなに白状しようと刑が軽くなることはない。テレビで良く、犯人が自首しましたと言われるが、あれは自首ではない、もう刑事事件になっているから、出頭の間違いだ。だから、早く言えって言ったんだ。警察が介入した時点で、誰にも刑を軽くなどすることはできないからな」
日向は呆れて言った。
渡辺は真っ青になる。
「許せなかったんだ。あいつが彼女をあっさり捨てて」
「はいはい。それは、警察でどうぞ」
と言って、日向は彼を警察へと渡す。
「でも、お前ヒーローのつもりかもしれないが、間違いなく、たぶん、お前は彼女の中で、ヒールだと思うぜ」
それを聞いた途端、彼は泣き崩れた。
二人も別々の容疑で連れられて行く。
こうして、事件は終わった。
「何か、さんざんな体育祭になっちまったな」
「うんうん。これも、面白かったよ。人の持っている業が見えた気がする。冬眞の勉強になったと思うから、ありがとうかな」

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