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【オリジナル脚本】Dance the Night Away

※著作権は全て「まんまる@脚本を書く人」に帰属します。脚本の使用に関するご連絡はs.ryth.mimi@gmail.comまでお願いします。

※ダンスは踊らなくて大丈夫なのでご安心ください。必要に応じて踊っていただいてもかまいません。


迅(じん):学級委員長。
智花(ともか):衣装の整理担当。迅とは幼稚園からの腐れ縁。
茜(あかね):学級副委員長。手先が器用。
悠斗(ゆうと):ダンスパーティー実行委員会クラス代表。
守衛の先生


学校行事であるダンスパーティーの前日準備を進める4人。飾り付け、衣装の整理、掃除、名簿作成と各自作業に追われている。時刻は午後6時半。

智花「茜、ちょっとこれ見て」
茜「うわ、チュールが伝線してるじゃん」
智花「保存状態が悪かったんだろうね。どうしよう」
茜「とりあえず貸して。縫い合わせるか接着剤かで修復しなきゃ。とりあえず智花はこの飾りをあと3つ作っておいて」
智花「わかった」

茜、退場。

悠斗「あーめんどくせー」
迅「何がだよ」
悠斗「名簿管理」
迅「そんなの出席簿と同じだろ?何がそんなに面倒なんだよ」
悠斗「ほら、参加できる人とできない人がいるだろ?」
迅「ああ」
悠斗「それで何回も人数照らし合わせてんだけど、どうも数が合わねえんだよ」
迅「少ないのか?」
悠斗「いや、むしろ1人多いんだよ」
迅「数え間違いしてんじゃねえの。貸してみ」
悠斗「じゃあ俺ゴミ出ししてくるわ」

悠斗、退場。

迅「2,4,6,8,10、12,14,16,18,20、22,24,26…」
智花「…ねえ迅」
迅「28、30、31…」
智花「迅」
迅「おかしいな。2,4,6,8,10、12,14,16…」
智花「迅!」
迅「うわっ、何だよ急に」
智花「急にじゃないよ。ずっと呼んでたよ。それより、このお花どこに飾ればいいの?」
迅「何で俺に聞くんだよ」
智花「学級委員だから」
迅「…悪いけど今忙しいんだよ。茜さんが戻って来たら聞いて」
智花「何その言い草」
迅「しょうがねぇだろ、今忙しいんだから」
智花「はぁ…で、人数はどうなったの?」
迅「さっき数えたら1人多いんだよ。クラス全員で30人、欠席が1人、でも出席者は30人ぴったり」
智花「先生の名前が混じってるんじゃないの?」
迅「いや、全員うちのクラスにいる人の名前だよ。先生名簿は別にあるし」
智花「それは確かにおかしいね。下駄箱と照らし合わせてみる?」
迅「それしかねぇか」

2人、下駄箱の番号をチェックする。

迅「やっぱり30人か…これは?」
智花「サッカー部のスパイクでしょ。ちゃんと袋に入れて持って帰るように言ってるのに」
迅「まあ、それならいいけど。とりあえず一旦戻るか」
智花「うん」

教室に戻る。

迅「悠斗、やっぱり30人クラスだよな」
悠斗「おう。やっぱり1人多いだろ?」
迅「でも誰も怪しい名前は無かったけどな」
智花「あれ、茜は?悠斗くん、茜見なかった?」
悠斗「見てないけど?どこに行くとか言ってた?」
智花「どことは言ってないけど、たぶん被服室にいると思うんだけどな」
悠斗「それなら行きと帰りに前を通りかかったけど、誰かいる気配はなかったよ」
智花「そっか…ちょっと探してくるね」
悠斗「いってらっしゃい」

智花、退場。

迅「あ、もう7時?急いで帰らないと電車逃すな…」
悠斗「電車なら何本でもあるだろ。それより、誰があの1人だと思う?」
迅「あの1人って?」
悠斗「名簿のやつ。どう考えても変なんだよな。名前も席も集合写真も全部確認したけど、全員俺らのクラスなんだよな」
迅「…俺、そういう系パス」
悠斗「まさかお前…ビビッてんの?!」
迅「違えよ!縁起でもねぇ」

茜、ドレスを持って入場。

茜「やっと終わったぁ…あれ、智花は?」
悠斗「茜!どこ行ってたんだよ、智花が探しに行ったぞ?」
茜「そうなの?会わなかったけど…」
迅「どこ居たんだよ」
茜「被服準備室」
悠斗「それじゃあ、外から見えるはずがないってか…」
迅「とにかく、もう暗くなったし智花を捕まえて早く帰らないと」

教室の前を守衛の先生が通りかかる。

守衛「あ、まだ残ってたのか?もう施錠するから帰りなさい」
悠斗「はい、すみません」
茜「待ってよ、智花を探さなきゃ」
悠斗「わかってる」
迅「先生、智花を見ませんでしたか?」
守衛「智花…?」
茜「2年2組の、森本智花です。美術部の」
守衛「森本…智花?…うーん、授業もってないからわからないけど、全館まわってきて誰にも会わなかったよ」
茜「どこかに閉じ込められてるのかも…先生、人影も見えなかったんですか?」
守衛「見てないな」
茜「そんな…」
守衛「わかった、先生が探しに行くから3人とも早く帰りなさい」
3人「はい」

3人、退場。少しして智花が登場

智花「茜?茜、どこにいるの?」
守衛「君は…2年の森本さん?」
智花「あ、はい。そうですが…?」
守衛「さっき3人が探してたよ」
智花「3人…?茜も居たんですか?!」
守衛「女子が1人居たけど、その子かな」
智花「じゃあ茜で間違いないな…3人は今どこに?」
守衛「帰ったよ。もう施錠しなきゃいけないから」
智花「えっ、もう20時前?!ごめんなさい、こんなに遅くなってしまって」
守衛「見つかってよかったよ。気をつけて帰って、明日のダンスパーティーに遅刻しないようにね」
智花「はい、さようなら!」

智花、退場。守衛も退場。

翌日
早朝の教室に智花が一番乗りで登校してくる。茜が手直ししたドレスを体に当ててにっこり笑う。
迅、入場。

迅「昨日一番遅く帰って今朝は一番乗り…」
智花「意識高いからね」
迅「ただのパリピじゃん」
智花「ねえ、それよりこれ見て?茜、裁縫上手すぎ」
迅「それで浮かれてたのか」
智花「どう?似合う?」
迅「馬子にも衣裳…」
智花「何か言った?!」
迅「あーわかったわかった!暴力反対!」

茜、入場。

智花「茜!」
茜「あんたは本当に…」
智花「昨日の件は本当に…ごめんね」
茜「まあいいけど。それ、あんたが着るの?」
智花「ううん、これはエトワールが着るドレスだもん」
茜「エトワール?」
智花「実行委員会が選ぶ、一番輝いてた女子生徒に贈られる賞!」
茜「へぇ…そんなのあったんだ」
智花「あるよ~!男子にはプリンシパルが贈られるでしょ?」
茜「知らなかったんだけど」
智花「茜でも知らないことあるんだね」

智花、衣装を抱える。

智花「じゃあ私、これらを体育館に持って行ってくるね」
茜「すぐに戻ってきなよ、寄り道せずに」
智花「わかってるって」

智花、退場。茜、荷物を端によける。
悠斗、入場。

悠斗「おはよ」
茜「おはよう、悠斗」
迅「おはよ、結局名簿の件、どうだった?」
悠斗「もうお手上げ。先生たちにも訊いたけど、誰もわかりそうにないし」
茜「うちのクラスに幽霊がいるかもしれないってこと?」
悠斗「そうなんだよ、31人も居るはずないのになー?」
迅「って言いながら俺を見るな」
悠斗「昨日あれほどビビってたくせに」
茜「そうだったの?」
迅「だから、違うって言ってんだろ」
茜「でももし悠斗の推測が当たってたら、成仏してもらわなきゃね」
悠斗「そうだな」
迅「なんで死んだ体(てい)なんだよ」
悠斗「どういう意味?」
迅「この件、あんまり甘く見ない方がいい」
茜「…どういうこと?」
迅「なんとなく嫌な予感がするんだよ」
茜「…もしかして、昨日寝れなかった?」
悠斗「確かに隈(くま)できてんな」
迅「お前ら少しは真剣に聞けって!」

悠斗、腕時計を見る。

悠斗「じゃあ俺、体育館集合かかってっから」
茜「あ、待って。あのさ、ダンスパーティーって何か賞ってある?」
悠斗「賞?まさか。親睦を深めるイベントで競い合ってどうすんの」
茜「…そうだよね。やっぱり何でもない。」
悠斗「じゃあ、行ってくる」
茜「行ってらっしゃい」

悠斗、退場。

迅「茜さん、ひとつ訊きたいんだけど」
茜「ん?」
迅「さっき智花が言ってた、エトワールとかプリン…シパル?っていつからできたやつ?」
茜「さあ…私も初めて聞いたんだけど」
迅「じゃあ今年からか?悠斗が先に教えたとか?」
茜「あの2人が個別に話すとは思えないけど…それに、さっきの反応見たら本当かどうかもあやしいし」
迅「だよな…悠斗に限ってしらばっくれるわけがないし、でも智花が嘘をついてるとも思えないし」
茜「何なに?智花?恋の相談なら任せなよ?」
迅「そうじゃなくて、もし…智花が、31人目だとしたら…?」
茜「…は?冗談も大概にしなよ。2年2組、森本智花、出席番号25番、席もちゃんとあるし、ああ見えて美術部の部長やってるんだよ?どこに幽霊要素があるって言うの?」
迅「そう…だよな」
茜「まったく…あ、もしかして『俺の前からちょくちょく消えるのが不安で仕方ない』とか!?それで智花を幽霊と勘違いするくらい夢中なんでしょ!」
迅「寝言は寝てから言えよ」
茜「私は小学校時代から2人の行方が気になって夜しか寝れないんだけど」
迅「うるせえ…今ボケて何になるんだよ」
茜「迅、そろそろ勇気出しなよ」
迅「知らねえって言ってんだろ」

智花が走って入場。

智花「ただいまー!」
茜「おかえり、めちゃくちゃ速かったじゃん」
智花「茜の言う通り、荷物置いたら寄り道せずにすぐに戻って来たの」
茜「よくできました。じゃあもう着替えて来な」
智花「わかった!…あれ、衣装が無い」
茜「え?そんなはず無いけど」
智花「もしかしてあの中に紛れちゃった?」
茜「はぁ…」
智花「取りに行ってくる!」

智花、退場。

茜「本当にあの子は…絶対どこかネジが飛んでんだから」
迅「そうだけど…なんか匂うな」
茜「は?女子に向かってそれは失礼でしょ」
迅「違ぇよ、智花が普通じゃない気がして」
茜「何が変だって言うの、いつも通りじゃない」
迅「うーん…やっぱ俺の勘違いか?」
茜「ちょっと、どうしたの?」
迅「いや、茜さんが何もないって言うなら何もないかもしれないけど」
茜「けど?」
迅「やっぱりクラスに31人居るのって…変だよな」
茜「今その話?」
迅「…やっぱ何でもない」
茜「でも智花は生きてるのに」
迅「だから智花じゃないって仮定しても」
茜「じゃあ誰よ」
迅「それは俺もわかんないって言ってんじゃん」
茜「はぁ…迅はさ、幽霊を見つけてどうしたいの?」
迅「え…?」
茜「成仏してほしいって、本気で思ってる?」
迅「それは…幽霊の正体によるけど」
茜「何それ」
迅「だって、もしよく知ってるやつだったらためらうだろうし…」
茜「つまりは友達贔屓?もし私が幽霊だったら成仏させる?」
迅「それは…わかんないけど」
茜「悠斗だったら?」
迅「…わかんない。もし仮に幽霊だったとしても信じたくないし」
茜「じゃあ、もしも正体が…」
先生「迅!ちょっと来て!」
迅「はーい。先生に呼ばれたからちょっと行ってくるわ」
茜「あっ、ちょっと迅ってば…!」
智花「茜、お待たせ!」

智花、ドレスを着て登場。

茜「あれ、そのドレス」
智花「えへへ、似合う?」
茜「そうじゃなくて、それってエトワールのドレスでしょ?」
智花「そうだよ?だから私が着るの」
茜「どういうこと?」
智花「だから、これは私のドレスなの。私が一番輝くドレスでしょ?」
茜「は…?智花、でたらめも大概にして」
智花「ん?何のこと?」
茜「エトワールとかプリンシパルとか、うちの学校には無いの」
智花「え、そんなはずないけど」
茜「さっき悠斗に聞いたけど、知らないって言った。実行委員会が噓をつくとでも思う?」
智花「それは…」
茜「大体、昔から想像力豊かなのは結構だけど、妄想と現実を履き違えないでくれる?」
智花「…ごめん」
(智花、走り去る)
茜「本当、困るのはこっちなんだからさ…まあ、それはいいや。…あれ、智花?智花!?」

智花(天の声)「妄想と現実を履き違えるな、か。何が違うのか、私にはわかんないや」

教室の蛍光灯照明が落ちる。

茜「えっ?」

迅が教室に戻ってくる。

迅「ブレーカーが落ちたか?」
茜「噓でしょ、これから本番なのに」
迅「まあしばらくしたら復旧するだろうから待ってみよう」
茜「なんか…嫌な予感がする」
迅「大丈夫、俺がついてるから」
茜「えっ…?」
迅「とりあえず悠斗が来るまで待つか…」

激しい雷雨。
悠斗、走って入場。

悠斗「茜!迅!大丈夫か!?」
迅「悠斗!」
悠斗「茜、怖かったよな。大丈夫か?」
茜「智花!智花は!?」
悠斗「えっ、ここに居たんじゃ」
茜「さっき出ていって戻ってこないの…悠斗は見てない!?」
悠斗「さあ、どこにも…」
茜「まさか…私があんなこと言ったから」
迅「茜さん、落ち着いて。きっと見つかるって」
茜「迅は智花の行方を知ってるの?」
迅「それは俺もさすがにわからないけど」
茜「だったら意味ないじゃん!智花っ!」
迅「茜さん、お願いだから落ち着いて!…何があったのか教えてもらえる?」
茜「私が…智花を𠮟りつけたの…エトワールとプリンシパルはいないって、妄想と現実を履き違えるなって」
迅「それで…智花は何て?」
茜「『ごめん』って…」
迅「茜さんは悪くないよ。俺、探しに行ってくる」
悠斗「待てって」
茜「やめて!…お願いだから行かないで」
迅「すぐに戻ってくるから。悠斗、茜さんを守ってあげて」
悠斗「…わかった」
茜「私を…置いていかないで…」
迅「大丈夫。ここには悠斗がいる。茜さんはひとりじゃないよ」
茜「でも」
迅「むしろ独りなのは、智花の方だから」
茜「…!」

上手から智花が歩いてくる。足元はどこかおぼつかない。

智花「茜は鋭いなぁ…『エトワールは存在しない』って、何でわかったのかな」
(下手へ歩いていく。下手に入りきったら自動車のクラクション)
智花「…!私…は…」

(サイレンの音。間髪入れずに豪雨。迅が走って舞台を横切る。大きな雷が落ち、暗転。)

(雨音の中、教室のセッティング。雨音をミュートしながら照明がゆっくり点灯。)

悠斗「迅、何調べてんの?」
迅「まあ…別に」
悠斗「エトワール?お前、バレエとか興味あんの?」
迅「そういう訳じゃないけど…」
悠斗「エトワール…一番星?ロマンチックだな、お前にしては」
迅「お前、本当に何も覚えてないのか?」
悠斗「何が?」
迅「ダンスパーティーの日のこと」
悠斗「ダンスパーティー…?どこのだよ、まさかうちの学校には無いし」
迅「…は?じゃあこのクラスの出席番号25番は?」
悠斗「25番って…茜じゃん。ほら、25番、若槻茜、学級副委員長」
迅「…そうだよな。じゃあクラスは全員で何人?」
悠斗「30人だろ、学級委員長。最近どうしたんだよ、疲れてんじゃねえの」
迅「そう…かもな」
茜「迅、悠斗。放課後ファミレス行かない?」
悠斗「テスト勉強?」
茜「そうそう。日本史がどうしても覚えられなくてさ。足利と徳川多過ぎでしょ」
悠斗「俺、得意だから教えてやるよ。代わりに英語教えて」
茜「学年トップの私にお任せあれ♪迅も来るよね?」
迅「ごめん、俺パスで」
悠斗「金がキツいなら奢るけど?」
迅「そういう訳じゃないけど、放課後は用事があって」
茜「それじゃあ仕方ないか。じゃあ日誌と戸締りはやっておくよ」
迅「ありがと、頼むわ」

放課後、智花の家の前

迅「嘘だろ…更地になってやがる。でも、そうだよな…誰も智花のこと覚えてないんだから。…エトワールが本当に星になったなんて、誰が信じられんだよ」
智花「迅!」
迅「えっ!?…って幻聴だよな」
智花「幻聴じゃないよ」
迅「うわぁ!?」
智花「えへへ、久しぶり」
迅「智花!?」
智花「ダンスパーティーぶりだね?元気にしてた?って、あれ、泣いてる?」
迅「なんで急にいなくなったんだよバカ野郎…」
智花「さらっとバカ野郎とか言うんじゃないの。それに、こうしてまた会えたじゃん」
迅「お前、死んだんじゃなかったのか…?」
智花「違うよ、天国に顔を出しに行っただけ」
迅「…は?」
智花「いやあ、とんだ災難だったよ。前方不注意はダメだね、やっぱり」
迅「待てよ、一体どういう…」
智花「まあまあ、その話はまた後で」
迅「今話してもらわないと困るんですけど」
智花「せっかく1カ月振りの地上なんだから、ちょっとは思い出に浸らせてよ。あーあ…ダンスパーティー、私も行きたかったなぁ」
迅「…なんで言わなかったんだよ、記憶のこと」
智花「…気付かなかったの。私だって、あの日見てた光景が全部20年前のデジャヴだったなんて、そんなの知るわけがなかったの。あの瞬間までは」
迅「…目は、覚めてたんだろ?あのとき、なんで助けを呼ばなかったんだよ!」
智花「…何も覚えてないの。ひとつだけ思い出せたのは、迅が駆けつけてずっと名前を呼んでたこと」
迅「…なあ、智花。お前は本当に存在してたんだよな?お前が事故に遭ってから、お前の存在だけじゃなくてダンスパーティーの存在までみんなの記憶から消えてるんだよ。…なんか俺だけ幻覚を見たような気分で、不安なんだよ」
智花「私はちゃんといたよ。毎年花火大会に行ったことも、雪だるまを作ったことも、高校の合格発表を一緒に見に行ったことも、迅は忘れてないよね?」
迅「…もちろん」
智花「それに、エトワールの話も、迅だけが真剣に聞いてくれた。ずっと調べてたの、私知ってるよ。茜と悠斗くんも、私のことを覚えてなくても、楽しい思い出をくれた大切な友達。だけど、迅は特に大切な存在…ずっと近くで見守ってくれて、本当にありがとう」
迅「…んだよ、調子狂うな」
智花「迅にはまだこれからも楽しい人生が待ってる。…私は少し先に行くけど、私の分までたくさん幸せになってね」
迅「待てよ。なんでそんな…永遠の別れみたいなセリフ言うんだよ」
智花「何も間違ってないよ」
迅「…」
智花「…生まれ変わったら、迅の息子になろうかな。とびきりやんちゃで元気な男の子。だからそれまでに、素敵なお相手を見つけておくんだよ」
迅「…どんな運命でも、また絶対お前を見つけるから。その時は絶対逃げんなよ」
智花「…ありがとう。迅に出逢えて、本当に幸せだったよ」

(音楽が流れてくる)

迅「あれ…この曲、どこかで聴いたことあるな」
智花「小学生のときに踊ったでしょ、フォークダンス」
迅「ああ、あの時のか」
智花「…迅、一緒に踊ってくれる?」
迅「…おう!」

2人で踊り出す、または手をつないで向き合う。暗転。

〈終〉

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