見出し画像

18scott 「People Around Me」感想

最近だと一番聴いているアルバムです。全体的にドラムの音がかなり太くてリリックも今までのアルバムやEP以上に直接的な表現が多くてストレートなヒップホップ色全開という感じ。

まず18scottさんはとにかくラップの引き出しがとてつもない。このアルバムで言えば、ギチギチに文字を詰め込んでくるラップや逆に抜け感が巧いフロウだったり、他にもがっつりメロを乗っけたフロウなど、どのフロウも付け焼刃感が無く完璧にやり切っていて凄まじい。(このアルバム以外の曲を聴いただけでも、できるフロウがまだまだあるとわかるのが末恐ろしい)   声色を180度変えずにこれをやってるからアルバムとしての一貫性もちゃんとあって滅茶苦茶聴きやすかったです。

18scottさんのフロウのカラフルさは勿論、全曲客演有りというとても贅沢な内容になってます。その上ビートの方もアルバムとしての構成が考えられた上でかなりバリエーションが豊かなので、アルバム単位で聴いていても全く飽きないです。                                                 

個人的に一番嬉しかったのは久しぶりにサトウユウヤさんと一緒に曲をやってくれた所(2018年は自分が一番ヒップホップを聴いていた年なんですが、「18scott x SUNNOVA - HNDSGN feat. サトウユウヤ」は2018産の中でもかなり聴いていた曲です)

この曲でもサトウユウヤさんの破壊力抜群なフロウはとにかく凄い。文字を自由に伸縮させたり不規則的にぶつ切りにしたり、力みながら絞り出すように言葉を吐き出したり叫ぶように荒々しくフロウしたり。うねうね動きまくるフロウが太いドラムのビートと合わさって中毒性がヤバい。      ラップをやった事は無いけど、「このぐらいラップを自由自在に動かせたら本当に楽しそうだな~」って思った。

攻撃性と現実の切迫感が混ざってヒリヒリしているリリックも最高。
My heart on my sleeve 裏地の滑りが違う
ちゃちなパンチラインじゃSleep もはや全てが違う←パンチライン過ぎ

18scottさんがどういう仕事をしていてどういう状況でラップをやっているのかが、今まで以上にストレートな言葉で表現されていました。18scottさんが自分の仕事だったり働いているという事に対して無下に扱わず誠実な姿勢で歌詞にしている所には非常に好感が持てます。

ほぼ「仕掛ける」と連呼しているだけの勢い任せな荒いhookも滅茶苦茶良い。最近だと何か作業に取り組んでいる時に頭の中で勝手にこれが流れてきます。

これは今の自分が追い込まれた状況だからという事もありますが、「厳しい状況でもやるしかない」っていうメッセージが一番共感できるし、自分がヒップホップに一番求めているものだなと思いました。(同じ「やるしかない」ってメッセージでも表現の仕方によって好き嫌いは生まれる、18scottさんの表現はかなり好きな部類)

こういう18scottさんの非アッパー系(?)な曲だと、自分の中ではSUNNOVAさんの作ったスケールの大きいビートにがっつりメロディ強めのフロウを乗っけている曲のイメージが強いです。なので一回聞いた段階では物足りなさを感じたんですが、ずっと聴いていたらこのシンプルさがこれはこれで滅茶苦茶良いなって感想になりました。(KATASEYAMAの時も同じような感想になった)

jiva nel mondoさんの方も面白いフロウ(力の抜けた状態でネガティブに歌う感じ?)をやっていて超良かった。

働きながらラップをやってる事やラップをやっている事で生まれるネガティブな感情だったりそれでも前向きであろうとする気持ちを、二人共気取らずにさらけ出していてそれが凄く格好良いと思いました。

最後にAmigosというのにグッとくる。

最後のhookでお馴染みのメロディとハモりをやってくれて嬉しかった。(個人的に18scottさんはメロディをがっつり乗っけたフロウが特に好きです)

苦しみや不安定さを受け入れながら、どこまでも前向きでこっち(聴いている側)に投げかけてくる最後の曲にふさわしい歌詞が素晴らしい。



ヒップホップを続ける事への覚悟とそれに伴う苦しみや自分のバックボーンやそこから繋がる現状など、王道ながら非常に重要なテーマが18scottさんらしい経験と言葉で語られていて滅茶苦茶良いアルバムでした。

結局ストイックで多作なアーティストが一番格好良い。         私の現実もかなりシビアですが、私も18scottさんのようにストイックに生きたいと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?