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ロシア・テレビのヘイトスピーチ

10月24日 ボイス・オブ・アメリカ:(5,073 文字)

ルワンダのようだ:ロシア・テレビのヘイトスピーチ
ミミズやゴキブリと呼び、「子供を溺れさせよう」と呼びかけ、「神の意志」への言及など
クセニア・トゥルコヴァはラジオ・サウザンドヒルズと露テレビを比較し、その手法や語りが奇妙なほど似ていることを発見した
10月、ヘイトスピーチとプロパガンダによる虐殺で世界的シンボルとなったラジオ・サウザンド・ヒルズの創設者でチーフスポンサーである89歳のルワンダ人実業家、フェリシアン・カブガの裁判がハーグで開始された

フェリシアン・カブガ (Félicien Kabuga、1933年~ )
ルワンダの実業家
ルワンダ虐殺時にフツ過激派に資金提供し、虐殺に大きな影響を与えた
ルワンダ国際戦犯法廷により国際的な指名手配が行われ1994年以降逃亡生活を送っていた
2020年潜伏先のパリ郊外にて逮捕された
国際刑事裁判残存機構(ICCT)の検察官は、このラジオ局がルワンダにおけるツチ族の大量虐殺に関与していると結論づけた
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%96%E3%82%AC

サウザンド・ヒルズ・フリー・ラジオ
放送局名はフランス語の「Radio Télévision Libre des Mille Collines(千の丘の自由ラジオとテレビ)」
ルワンダを「千の丘の国」と表現したことに由来する
政府が管理するラジオ・ルワンダから支援を受け、当初はラジオ・ルワンダの機器を使用して送信することが許されていた
一般大衆に人気があり、ツチ族、穏健なフツ族、ベルギー人、および国連ミッションUNAMIRに対する憎悪のプロパガンダを拡散した
多くのルワンダ市民は、ジェノサイドの発生を可能にした人種的敵意の雰囲気を作り出す重要な役割を果たしたと見なしている (国連の戦争犯罪法廷によっても支持された見解)
フェリシアン・カブガは、ラジオ・サウザンド・ヒルズとカングラ・マガジンの創設と資金調達に深く関わっていたと言われている
この放送局は、フツ族に対する憎悪と偏見を商業的に利用し、憎悪の言葉を洗練されたユーモアと人気の音楽と共に放送し、ツチ族を「ゴキブリ」と呼んだ
https://en.wikipedia.org/wiki/Radio_T%C3%A9l%C3%A9vision_Libre_des_Mille_Collines

四半世紀近くも逃亡を続けたカブガが、その行いを裁かれる一方、露メディアはラジオ・サウザンドヒルズの放送を真似たような、時にはそれを上回る想像もつかないような憎悪のメッセージを流している
このような憎悪をウクライナやウクライナ人に向けるのは、露だけである

先日、Russia Today(RT)チャンネルの司会者アントン・クラソフスキーが、SF作家のセルゲイ・ルキヤネンコへのインタビューを放映した
「ウクライナの子どもたちは、ウクライナはモスクワ人に占領されている、モスクワ人がいなければフランスのように暮らせると言っていた」
と、彼は1980年にトランスカルパティアを訪れた際のウクライナの子どもたちの話を紹介した
そして、
「そのようなウクライナの子供は、『プリエ・カチャ(注:革命で亡くなった英雄たちのためのウクライナのレクイエム)』と共に、この手で、黙って溺死させるべきだ
モスクワ人が占領しているというのなら、流れの強い川に放り込めばいいだけです」
そう言った後、「子供たちはスメレック小屋(カルパチア地方の伝統的な家屋)で焼かれる」べきだと付け加えた
(注:これだけではなく、他にも極めて残虐な言葉が多く発言された)

プリエ・カチャ:
https://youtu.be/-Z1BSIiF5jc

クラソフスキーの放送は(注:生放送ではなく)録画されたものだった
つまり、チャンネルの編集者はそれを見ていたが、司会者の発言を問題と感じることはなかったということである
しかも、これより血生臭いとは言えないまでも、同様の発言は、他の露のプロパガンでィストたちからも繰り返しなされていた
例えば、2022年4月、クラソフスキーの上司であるシモニャンは
「どんな選択肢が残っているんだ、このバカども」
とツイートし、
「残されているのはウクライナを完全消滅させるか?核攻撃か?」
と言い、また番組中で
「ウクライナは存在し続けることはできない」と宣言している
同じ番組中では、司会者であり、これまた露を代表する宣伝マンであるソロヴィヨフが、彼女と対談し、ウクライナの戦争を動物の体から虫を追い出す作業に例え
「医者が猫から虫を追い出すのは、医者にとっては仕事で、虫にとっては戦争で、猫にとっては浄化だ」と述べた
このソロビョフの言葉は、ルワンダのラジオ・サウザンドヒルズのフツ族のメイン・パーソナリティーが、ツチ族を「ゴキブリ」と呼び、その駆除を呼びかけたやり方を、踏襲している
「ゴキブリを全部退治すれば、裁かれない そうしなければ、キブ湖で溺死させられる」 とラジオは言っていた
「司会者は幸せになる夢を語ることができた
なぜなら、彼が主張したのは、町中にゴキブリが一匹もいないということだったからだ」
とウクライナの人権活動家マキシム・ブトケビッチ氏は言う
ソロヴィヨフは実際にウクライナ人を虫に例えている

これは「敵」の人間性を奪う典型的なプロパガンダの手法である
しかし、偶然の一致はこれだけではない
露のプロパガンダは、ある意味、ラジオ・サウザンドヒルズの基本的なテクニックをすべて繰り返しているだけである
例えば、攻撃はやむを得ない措置であった、そうしなければ自分たちが死ぬしかなかった
などである
「激怒したツチ族が権力を奪おうとしている、力ずくで奪おうとしている、…とラジオで言っていた …イースターの日に何か事件を起こすらしい」
プレゼンターが聴衆に向かって発信する
「自分の身は自分で守れ」
「クズは退治するもの 蛇を放置すれば、いずれ、自分も犠牲になる奴らはまるで獣のようだ。奴らは獣だ!」
2月24日、プーチンはビデオ演説で、
「皆さんと私には、露を、我々の国民を守るために、今日、他に選択肢が残されていないだけだ」 「このような状況では、断固として即座に行動する必要がある」と述べた
この話はすぐに主要テレビ局で取り上げられ、ほぼすべてのニュース番組で繰り返された
露の地方紙に掲載された
多くの例の中から一つを紹介しよう
カルーガの軍人、シュクラット・アディロフは
「彼ら(ウクライナ)を止めなければ、殺しに来る」と明言する
「はっきり言えるのは、私たちは亜人と戦争をしているということだ」
また、攻撃性の婉曲化(不健全なものを婉曲なものに置き換えること)という手法もある
露では、軍事的な言説はすべて婉曲的表現に変えられ、それがメディア全体の世界、反転した現実を構築するのに役立っている
「特別作戦」「解放」「非武装化」
これらの言葉はすべて、起きていることの本質を隠し、一種の公正なプロセスのように見せかけるためのものである
ルワンダでも同じ手法が使われた
例えば、ラジオの司会者は「殺す」という動詞を使わず「仕事を終わらせる」と表現したことが知られている
ラジオ・パーソナリティーはフツ族の「民兵」に
「兄弟、手を動かせ 墓はまだ一杯になっていない 仕事は終わっていない、続けろ!」 と呼び掛けた

ところで、この表現は、露のプロパガンダ言説、主にSNSで盛んに使われている「仕事しろ、兄弟 «работайте, братья»」というフレーズにも見受けられる
この表現は数年前から増加したものだ
その意味は「過激派を破壊し、過激派や山賊と戦う(露の『愛国者』であるブロガーたちにとって、山賊とはウクライナ人を意味する)」である
このフレーズの先駆けは、2016年に武装勢力に殺害されたダゲスタン人のマゴメド・ヌルバガンドフである

マゴメド・ヌルバガンドフ:
イスラム国の新兵と名乗る襲撃者たちは、後にマゴメドを殺害した瞬間のビデオを公開した そこで、マゴメドは殺される前に仕事を辞めるように強要されたが、それを拒否してこう言ったことが明らかにされた それが「仕事をしろ、兄弟たちよ!«Работайте, братья!»」です https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9D%D1%83%D1%80%D0%B1%D0%B0%D0%B3%D0%B0%D0%BD%D0%B4%D0%BE%D0%B2,_%D0%9C%D0%B0%D0%B3%D0%BE%D0%BC%D0%B5%D0%B4_%D0%9D%D1%83%D1%80%D0%B1%D0%B0%D0%B3%D0%B0%D0%BD%D0%B4%D0%BE%D0%B2%D0%B8%D1%87…

ゴリシェフ氏は、このヌルバガンドフの呼びかけが、後に露のプロパガンダに転用され、愛国的なスローガンとなったことを指摘する

ラジオ・サウザンド・ヒルズと同じく、露のテレビ局も、宗教的語り口を使用する
「神は決して不公平ではない」とルワンダのラジオの司会者は言った
「神が戦争を許すのは、人間を説得する他の手段が尽きたときである 神は戦争での国民のすべての心をノックする...」と、テレビ司会者で「愛国者」のボリス・コルチェブニコフは言う
そして、露で「部分動員」が発表された後、誰もが戦争に行きたがるわけではないことに対し、彼は衆目の面前で涙を流した
「神はそのような人間を憎み、破壊し、燃やす方法を知っている!」 と彼は言いきった

一方、ダリア・ドゥギナ(2022年8月に自動車爆弾で死亡した哲学者・宣伝家のアレクサンドル・ドゥギナの娘)はチャンネル・ワンで、ウクライナは「統一の喪失」によって罰せられているのであり、露は「(ウクライナの)民間人を死から取り戻そうとしている」と述べている
ある意味で、特徴的な男女格差があるように見える
ラジオ・サウザンド・ヒルズの男性司会者は銃器の使用を呼びかけ、ヴァレリー・ベメリキ(アナウンサー・エビル)は鉈の使用を提案した

ヴァレリー・ベメリキ:
ベメリキは殺人兵器として鉈(マチェーテ)を推奨し、視聴者に「ゴキブリは弾丸で殺さず、マチェーテで細かく切る」ように指示しました
ベメリキは大量虐殺で主要な役割を果たした数少ない女性の1人だったhttps://www.jpedia.wiki/blog/en/Val%C3%A9rie_Bemeriki

露のテレビでは、女性、特にシモニャンが「より人道的な」プロパガンダの役割を担っている
例えば、ソロビョフが(注:杜撰な動員に対して、召集令状を配る)軍事委員を処刑するよう呼びかけた時(注:実際に、その翌日ウスチ・イリムスクで新兵募集事務所の襲撃事件が起こった)、シモニャンはそのような方法には反対だと述べ、その代わり、ウクライナの民間インフラへの攻撃を呼びかけた
「ウクライナに民間インフラはないのか?
送電線、原子力発電所、ターミナルなど、私たちに敵対するこの国家の機能を停止させることができるあらゆる種類のインフラがまだたくさんある
非常に素早く、簡単に、長く効果がある」

しかし、何故だか不思議な事に、「子供を溺れさせる」というクラソフスキーの公言は、露の主要な宣伝マンでさえ「やりすぎだ」と思ったのだという
その後、テレビ局RTのシモニャンがクラソフスキーとの協力関係の停止を発表し、露連邦捜査委員会のアレクサンドル・バストリキン部長がその発言が過激過ぎないかチェックするように指示したという
一方、ドミトリー・サヴェリエフ議員(統一ロシア党)は、クラソフスキーについて「直ちに勾留し、法の及ぶ限り速やかに有罪にしなければならない」と述べた
クラソフスキー本人は「気まずかった」「不味かった」「友人を陥れたくなかった」と非常に奇妙な釈明をしている
なお、戦争が始まって8カ月、露が主要テレビ局の発言に憎悪や敵意を煽っていないかチェックしたことなど、これまで一度もない
(終わり)

参考: 外部的プロパガンダ用ではないが、露軍内部における「婉曲表現」のマニュアルがあるのではないかと指摘するスレッド


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