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5月、ロシア人政治エリートたちの本音

5月5日 モスクワタイムズ:(4,187 文字)

ロシア政治エリート達の本音の話 -エヴェニア・アルバーツとロシアで最も裕福な有力者たちとの会話

この困難な時代にモスクワに住む利点があるとすれば、人と直接会う機会があるということです
個人的に会うのがいいでしょう
誰もいないレストランがいいです
あるいは、小さな街の公園の片隅でもいい

そうしても、会おうとする権力者はほとんどいません
人前で見られることはおろか、アプリのメッセージに返信することさえも恐れています
しかし、例外もあります
引退した人、昔から知っている人、昨日まで治安部隊にいたビジネスマン、医者、あるいは、統一ロシア党(与党)に長く属し、欠点の無い勤務実績があるにもかかわらず、突然強盗に遭って放り出された(注:上司の責任を押し付けられて首になった)りした知人などです
以下は、私たちが話した内容です
引用する名前は実名ですが、インタビューした人の名前は仮名です

役人

役人は、きれいな人と、きれいでない人に分けられます
汚れていない人は、主に連邦保安局(FSB)の制服を着た人たちです
彼らはジャッジし、罰するので、恐れられています
それ以外はみんな汚れています
そして、彼らの間にも等級があります
今では、その大部分は、大統領府のイデオローグに基づくFSBの「命令を受け」実行する、「走って取ってくる」だけの連中です

政府の経済部門は今日も特別なポジションにいます
高級官僚は、際限なく次々と続く制裁から経済を救うと思われているので、需要が高いのです
しかし、実際には、彼らの仕事は絶望的です
ロシアで生産される商品の約70%は輸入部品に依存し、それを代替することは不可能だからです
「政府内で会議が延々と続いている」と、有名な金融関係者、元高官も証言します

航空機を製造している工場責任者がやってくる
エンジンが輸入品だという問題です
「お金をたくさんくれるなら、自分たちで作る」と彼は約束する
そうすれば、2年以内に完成させることができる、と

ある金融業者は言いました
「(連邦政府の経済部門で)あれを支持する人に会ったことがない
みんな大惨事だとわかっている
しかし、彼らは皆、どうやってあれに適応できるかを考えているのです」

「どこに行けばいいんだ?」と、別の高級官僚は言いました
彼は制裁を受けていない数少ない官僚でした
読心術を使わなくても、脱出する方法を見つけようとしていることは分かります

モスクワの民間病院の医師は、政府高官の患者は「90%が現状を好ましく思っていない」と言います「ウリュカエフやアブィゾフの例が目の前にあるから、みんな適応してしまうんだ」と金融関係者は言いました

アレクセイ・ウリュカエフ:2016年、「収賄容疑」で失脚している

ミハイル・アナトリエヴィチ・アブィゾフ:元、メドヴェージェフ政権での閣僚。2018年にイタリアに出国(実質的には逃亡)。その後「経済事件」で訴追されている。

「作戦開始を知っていたのは治安部隊だけです
ミシュスチン首相も知らなかったし、エルビラ・ナビウリナ(中央銀行総裁)も知らなかった」と政府関係者は言います

「テレビで放映された有名な安全保障会議では、この作戦に、最も情報通の人たちが反対していることは明らかだった」と、元秘密情報部長の男性は言います。
(注:特別軍事作戦開始直前にドネツク・ルガンスクの独立承認を決議したプーチンが大臣たちに宣誓させたあの有名な会議)

ミハイル・パトルシェフ(安全保障会議書記)ドミトリー・コザック(ミンスク協定の交渉責任者)プーチンが公然と恥をかかせたセルゲイ・ナリシキン(対外情報庁長官)らが、恐れながらも「今ではないのでは」と言おうとしたと彼は考えていた

治安部隊(シロビキ)

ロシアの権力を掌握する企業、FSBとそのパートナー、退役した将官たちは、通称シロビキと呼ばれるその内部で何が行われているのか、誰もはっきりと分からないが、そこは一枚岩ではないと言います
ロシア特務機関内部の誰かが、米国とウクライナの双方に 「特別作戦」の準備について警告していたのです
「粛清というほどではないかもしれないが、反逆罪に関する政治的捜査が行われているのは確かです」と担当者は言いました
20人近い将軍が逮捕されたという噂はあるが、裏はとれていません
しかし「作戦の第一段階が失敗した」責任をとるスケープゴートが必要で、治安当局と軍当局の間に対立があるという話もある、とある情報筋は言います

若い将校たちはプーチンを 「おじいちゃん」と呼び、そろそろ引退させるべきだと言います
しかし、その前に、もし「クソ野郎ども(注:ウクライナ軍)」がロシアの子供たちを寄宿学校や大学から追い出して苦しめるのを止めないなら「もう一度やるぞ」(注:ベルリンまで進軍する)と脅すのです

若い人々はとても怒っています
多くは事業が破綻し、制裁で貯金は銀行に凍結され、汚い金を海外に送れなくなっています
お金の動きや現金市場など、財政に関することもチェキスタ(治安維持機関)にコントロールされているため、彼らの多くはすでに暗号通貨に投資していました
しかし、制裁の結果、彼らは大規模な暗号通貨取引所から切り離されたのです

4月21日、バイナンスは1万ユーロ以上の価値のある、ロシアのパスポート保持者が登録している暗号通貨ウォレットのサービスを停止しました
他のプラットフォームもすでに同じような措置をやっています
多くの人が海外送金に困り、海外投資用不動産の住宅ローンの支払いができなくなったのです
もちろん、彼らは方法を考え出しました
制裁のため、国内には金(きん)が余っていました
現金は1人1万ドルしか国外に持ち出せませんが、金は7万ドル分まで持ち出すことができます
そこで、インゴットを買い、首長国連邦に飛ばすのです
そこには、露中央銀行と欧米の制裁の両方を回避するための金融サービスがあります

忠誠を誓う者たち

「(与党)統一ロシア党を離党するところだった」と、キリルという元幹部は教えてくれました
「どうしてそうしなかったの?」と私は聞きました
「『バカか?そんなことをしたら逮捕されるぞ』と電話がかかってきたんです」

キリルは、ウクライナ戦争、いや、ロシアの銀行や企業に課された制裁措置によって、完全に破滅しました
少なくとも痛い目に遭わされました
2019年、ロシア政府は裕福なロシア人に、国内経済への投資を呼びかけたとキリルは言います
脱オフショア化、何百万人もの法執行官、裁判官、検察官、その他の家賃徴収者の海外渡航禁止、汚職収益のロンダリングの必要性、そして最後に、今知っているように、ウクライナ戦争のために何百もの戦車、装甲車、航空機、グラード(多連装榴弾車両)、その他の鉄の製造に使うための、古典的なお金の用途のためにです

「これらはすべて、経済当局に投資信託を開発するためだと言われた
奴らは『愛国心があるなら金を出せ』と言った」
主要な国営銀行や商業銀行はすべて投資信託を開設し、ロシアや海外の優良株と高金利で顧客を引き付けました
キリルの話では、普通預金が3.4%の金利だった頃、投資信託は22%の利回りで、2021年の夏の終わりには27%まで上がったそうです
ただし、不利な点もあって、3年間は解約できませんでした
解約するなら、13%の税金を払わなければならなかったといいます
また、投資信託の少額株は誰でも買えたが、大金があれば必ず儲かるということでした
「1,000万ルーブルから始めることに意味があった」とキリルは言いました
露連邦中央銀行の報告書によると、2021年には770万人がこれらの投資信託に資金を投じたという
資金の純流入額は9895億ルーブルで、投資額は数十億円の誤差があったとしても、約7兆ルーブルはありました

2月24日「キエフが空爆され、戦争が始まったと言われた」
まず露国営銀行が制裁を受け、次に商業銀行が制裁を受けた
そして瞬く間に、何兆円もある投資信託はすべて存在しなくなったのです
株式は存在していていも、ロシアでは株式市場が閉ざされ、価値は分からないのは勿論のこと、外国証券への投資も永遠に将来にわたって凍結されてしまったのです

「株式口座のあるVTB銀行に行ってたが、投資した数百万ルーブルが無くなっていました
本当に、完全に無くなっています
そのうち、投資分の4割が返ってくるかもしれないし、返ってこないかもしれない」

プーチンの国の中流・上流階級には、キリルのような人たちが700万人以上います
災害が起こる半年前、そのうちの1人が言ってました
「私たちは中流階級で、すべてがうまくいっている
プーチンはお金を稼がせてくれるし、選挙があっても、選挙でお金を稼ぐことはできないんだから(気にしない)
今、子供は私立学校に通い、将来はヨーロッパの一流大学に進学する
年に3、4回のクリミアやエミレーツでの休暇、ヨーロッパより美味しいレストラン、洋服、高級ゲーテッド・コミュニティなどなど、それ(選挙)以外のものはすべて手に入れた
シャネルやルイ・ヴィトンが人生を価値あるものにしてくれるのに、誰が選挙なんて気にするんだ?そうだろう?」

私が話を聞いた人たちは、誰も忠誠心の根拠となる考えやイデオロギーを明文化することができなかった
彼らは皆、政権への支持を「資本投資の一形態」と見なす日和見主義者に過ぎなかった
彼らは、プーチンの西側に対する攻撃的なレトリックを正しい戦略だと考えていた
ビジネスで勝てない競争相手を、潰し、壊し、降伏させ、(利益をかすめ)るだけのことだ

1998年の破綻とは異なり、現在の金融・経済危機には明るい展望がない
この先の方向はただ一つ、「下降」である
高級官僚、シロビキ、そして(ほぼ)野党と化した忠臣たちは、それでもなお、この負の流れに抗うことを望んでいる
彼らは、ウクライナの最前線からの報告を注意深く読んでいるに違いない
自分たちが築いてきた生活が終わったことに、いつ気づくのだろう
もう昔には戻れないと
彼らの政治がこの結果を招き、今は制裁の残飯を食べなければならないと
彼らと彼らの子供たちの未来を破壊したこの災害の、名前と苗字に

今のところ、考え方は違っても、ロシア帝国拡大のためにその身を捧げようという人は、彼らの中に見当たらない
(終わり)


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