「プーチンの料理人」は誰と対立しているのか?
12月28日 ロシア独立系メディア i-stories:
ワーグナーPMCのオーナーであるエフゲニー・プリゴジンは、国防省だけでなく、大統領府やサンクトペテルブルグの大統領の古い友人たちとも複雑な関係をもっている
少し前に、サーシャ・クララと名乗る男の、大昔に、エフゲニー・プリゴジンと一緒に服役したと語る動画がYoutubeに流された
男は、当時のプリゴジンは、他の囚人たちに性的サービスを提供する、いわゆる「キモイ «обиженным»」と呼ばれる下位カーストに属していたと話し、PMCに行く人には、「オンドリ «петуха»」の旗の下につくことになると警告した
プリゴジンは、若い頃、何年も刑務所にいたことがある
窃盗、他人の財産を奪うための暴行、未成年者を犯罪行為に関与させた罪で有罪判決を受けている
1981年、レニングラードの裁判所は、彼に13年間の重監視措置を言い渡した
プリゴジンは10年収監された
流布されたYoutube映像の内容が事実か嘘かは不明だ
しかし、これは明らかにプリゴジンの信用を失墜させ、彼の民間軍事会社がウクライナに派遣する囚人の確保を困難にするために作られたものだ
プリゴジンが刑務所を訪れ、自ら兵士を募っていたことは、既に詳しくお伝えした
プリゴジンに対する危険な映像の背後にいるのが誰なのかは分からない
しかし、最近、ほとんど政治的公人になってしまったPMCのオーナーは、そのために多くの有力者を敵に回してしまったことが分かっている
それは、プーチンの旧友であるFSBや軍に近い情報筋が「Important Stories」に証言している
プーチンの仲間たち
プリゴジンは、プーチンの旧友、特にサンクトペテルブルクのロシア銀行のメインオーナーであるユーリ・コバルチュクと関係がある
「サンクトペテルブルク時代から、プーチンは2つの世界で生きてきた」と、大統領の友人をよく知る人物が言う
一つの世界は、まともな人々の輪であり、まさにプーチンの同僚、職場の同僚、仲間(コバルチュクも含まれている)が集まったオゼロ・ダーチャ協同組合である
オゼロ(コーポレーション):1996年11月11日にプーチンとその友人たちによって設立された
プーチンが 2000年にロシア大統領に選出されると、その全員がロシアの主要な行政職に就いた
もうひとつの世界は、元犯罪者や何らかの形で犯罪に関わる人々で構成されている
プーチンは、KGBでの経験から、どちらの世界の人とも容易に共通認識を持つことができ、それは彼にとって自然なことだったと関係者は説明する
また、90年代にサンクトペテルブルグ市長室で都市問題を扱っていたこともあり、犯罪者との付き合いは避けて通れなかったのだ
しかし、プーチンにもプーチンの昔からの知人にとっても、この2つの世界は交わるべきでないものだった
犯罪歴のある人間の居場所は限定され、その昇格は許されず、この点に関しては妥協は許されなかった
「通常、プーチンの知人である元犯罪関係者たちは、このことを理解していた
大統領とのコネを使い、それを利用しようとした者は、警備員のロマン・ツェポフのように墓に入るか、タンボフギャングのリーダー、ウラジミール・クマリンのように刑務所に入ることになった」
と、関係者は語る
ロマン・ツェポフ:プーチンの元側近
ウラジミール・クマリン:
ウクライナ戦争では、プリゴジンの知名度も上がり、ワグネルPMCは前線で大いに活躍した
プリゴジンは、この新しい状況に自分の重要性を感じ、これを利用しようと考え、政治的な問題に干渉するようになった
関係者によると、古巣のペテルスブルグ人たちにとって、犯罪歴のある男が同じ土俵でプレーすることは許せないことなのだという
しかし、今さら表立って対決することもできない
プーチンがプリゴジンを大事にしているからだ
コバルチュクに近い関係者は、プリゴジンとの対立を否定し、コバルチュクが危険なビデオの配布に関係していると言うのは「偽旗作戦」であり、実際には別の人物が背後にいる可能性があると述べている
大統領府
もう一人、プリゴジンと衝突したのが、大統領府の第一副長官であるセルゲイ・キリエンコだ
政権の責任範囲を侵食した「プーチンの料理人」と彼との関係は悪化した
プリゴジンは、サンクトペテルブルク総督アレクサンドル・ベグロフのような政治家の官僚任免に影響を与えようとしたからだ
以前から、プリゴジンがサンクトペテルブルク市民にベグロフが見過ごしている問題を通報するよう促したり、検察庁と連邦保安庁にベグロフとその側近の汚職をチェックするよう要求したり、音楽グループ「レニングラード」のセルゲイ・シュヌロフがサンクトペテルブルク施政を批判する一連のミュージックビデオ・シリーズに資金提供していることなどが知られている
それに対し、サンクトペテルブルク地方政府のポベダ慈善基金によるマリウポリ再建の取り組みにプリゴジンは参加しないと述べた
「入札、特に不透明な入札に参加して、マリウポリに何かを建設するつもりはない
第一、契約が公正である可能性は低いからだ」とプリゴジンは述べ、もしDNRとLNRに何かを建設するなら、自分のお金で行うと主張した
https://www.pravda.ru/society/1717813-prigozhin_dnr/
プリゴジンは大統領に近く、メディアのリソースもある独立したプレーヤーであり、政権がプリゴジンやそのメディアをコントロールできないことが懸念されている
プリゴジンのさらなる強化は、政権にとって不利にしかならない
キリエンコが監督する自称独立国家(ドネツク・ルガンスク)の主導権を握り、そこで活躍すると同時に、大統領に直接接近し、新たに併合された共和国に対する独占的権力を脅かす可能性があるからだ
例えば、プリゴジンがプーチンに「LDNR」の状況について何を報告し、それがキリエンコの報告するビジョンとどの程度一致するのか、正確に予測することは不可能である
国防省
プリゴジンは、ウクライナ侵攻を主導したセルゲイ・ショイグ国防相や将官たちと長年にわたる情報戦を行っている
プリゴジンはチェチェンの首領ラムザン・カディロフを支持しており、カディロフは国防省の指導者の行動のいくつかを、効果がなく、しばしば有害であるとさえみなしている
同時に、参謀本部に近い情報源は、プリゴジンとカディロフの軍事指導部の批判は、しばしば公正なものだったと述べている
ワグネルPMCは、ロシア陸軍のシステムに統合されており、もちろん単独で動くことはないと関係者は説明する
プリゴジンはPMCを指揮しているのではなく、その運営と資金調達を保証している
プリゴジンが国防省の指導者たちと対立するのは、プリゴジンが考えるような誤った命令と軍事行動の失敗だけでなく、彼の戦闘員に必要なものがすべて供給されないことが原因である
そのため、直近ではワグナーPMCの社員が「弾薬が足りない」と発言したことが、一つのきっかけになっている
「参謀総長!」と悪態をつく姿がそのビデオメッセージには録画されている
「...とか...とか…それに、砲弾がないんです」
ロシア軍関係者はチャンネルを通じ、これを「ウクライナの民族主義者」による挑発だと受け流そうとした
プリゴジンは、それに対し自ら反論し、ビデオを作った兵士を応援するために前面に出た
しかし、軍関係者やセルゲイ・ショイグには、プリゴジンをどうこうすることはできない
今はプリゴジンとそのPMCが最前線で必要とされており、時にはプロの軍隊よりも効果的だとプーチンが考えているからだ
プリゴジンは、このようなワグネルPMCの評価を、彼のメディア・リソース、PR広報によって支えている
このような状況下で、PMCと他の軍隊は、供給や資金面だけでなく、情報支援(言い換えれば、PMCの成果や軍関係者の失敗を大統領に早く知らせることができる)でも不平等な状態にあり、軍指導部を刺激せずにはいられないのだ
FSB
プリゴジンのワグネルPMCへの囚人勧誘活動に、防諜担当者が同行せざるを得なかったことが、FSBとの緊張を生んだ
盗賊や殺人犯を主な対象に「殺せ」「拷問しろ」「喉を切れ」と過激に促し、武装した受刑者たちをウクライナの戦争に送り込むことは、FSB的なアプローチではない
FSBは、このように訓練され、戦争で鍛えられた隊員たち、さらに言えば、彼らが平和な生活に戻った後の結果について、チェキスト(注:FSBを指す、やや侮蔑的な言葉)自身が責任を負うことになる可能性を理解しているのだ
この場合、勝利しても栄誉と政治的な優遇は、プリゴジンだけにもたらされる
しかし、FSBは、PMCで新しいスキルを身につけた非常に危険な犯罪者の追跡とコントロールという汚い仕事をしなければならなくなるのだ
ことの結果は、もはやプリゴジンの問題ではなく、保安上の問題となってしまった
結論
いずれにせよ、ウクライナ戦争によって、プリゴジンは公の政治家になってしまった
彼は新たな力とリソースを手に入れ、あらゆる攻撃から身を守ることができる
そのため、様々な手段を行使する余裕ができ、保安部や内政担当者、さらには大統領の取り巻きからも一目置かれる存在となった
戦争がプリゴジンにとっての足掛かりになったということは、「特殊作戦」が展開され、「西側集団」など内外の敵に対する「アイデンティティ」をめぐる激しい闘争が続くロシアで、これからどんな人物が権力を握ることになるかを暗示するものである
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