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5月、ロシア政権はファシストです -それを認めなければならないのはなぜか

5月20日 モスクワタイムズ: (3,686 文字)

ファシズムは非合理性と暴力を狂信することであり、その思想が滅びることはなかった
ナチスドイツが力強く見え、他の国の指導者にとってファシズムは誘惑的に見えた
第二次世界大戦において、ファシズムは戦場で敗北したかに見えた
しかし、ファシズムは復活した
そして、今やロシアのファシストが殲滅戦を行っている
もしロシアが勝てば、世界中のファシストを喜ばせることになるだろう

ファシズムの恐ろしいイメージをヒトラーとホロコーストに限定して考えるのは間違いだ
実際、ファシズムはイタリアで生まれ、暴力による浄化を夢見る正教徒たちのいるルーマニアで流行し、ヨーロッパ各地に(そして米国にも)支持者がいたのだ

全てのファシズムにとって、個人の理性を他者の意志で抑え込むことがテーマであった
このため、ファシズムを完全に定義することは不可能である
何がファシズムを構成しているかについては、人々の意見が分かれるところだ
しかし、今日のロシアは、学者の考えるファシズムの基準のほとんどを満たしている

ロシアにはプーチンという一人の指導者を中心とする狂信者集団がいる
また、第二次世界大戦を軸に組織された祖先崇拝集団もある
ウクライナとの戦争という暴力による癒しで回復されなければならない、偉大な帝国の黄金時代という過去の神話があるのだ

ウクライナがファシストとの戦争となったのは、これが初めてではない
同国の征服は、1941年のヒトラーの最大の目標であった
当時、ヒトラーはウクライナを支配していたソ連をユダヤ人国家だと考えていた
そこで、ソ連となり代わり、ウクライナの肥沃な農地を手に入れようと計画した
ソ連が飢えることで、ドイツは帝国になる
ソ連は人為的に作られた国家で、ウクライナ人はその植民地の民であり、簡単なことだとヒトラーは思った

当時起こったこととプーチンがやっていることの類似性は顕著である
クレムリンは、ウクライナを人工国家と定義し、そのユダヤ人大統領は、ウクライナが本物の国家ではない証拠だと言う
少数のエリートを排除すれば、大衆は喜んでロシア支配を受け入れると信じているのだ
今日、ロシアはウクライナの食糧の供給を妨害し、南半球世界を飢えさせようとしている

スターリンのソ連が自らを反ファシストと定義していたため、今日、ロシアをファシストと見なすのをためらう人は多い
しかし、この言葉は疑わしい
1945年、ソ連は米国や英国などの同盟国との協力でナチス・ドイツを破った
しかし、ソ連のファシズムに反対する態度は一貫していない
1933年にヒトラーが政権をとるまで、ソ連はファシストを、敵となる資本主義の一形態としてしか見なしていなかった
一般に、欧州の全共産主義政党は、他の政党を全て敵として扱うことになっていた
ドイツにおける共産主義者と社会主義者の総数がナチスの数を上回っていたにもかかわらず、両者が協力することはなかったのである
実は、この政策が、ヒトラーの台頭を後押しすることになった
この大失敗の後、スターリンは、ナチスを阻止するために欧州の共産党に連合化を要求するよう、その方針を修正した
しかし、1939年、事実上の同盟国としてソ連はナチスドイツに加担し、両勢力は共にポーランドに侵攻した
ナチスの演説がソ連の新聞に転載され、ナチスの将校はソ連の侵攻を賞賛した

今、ロシア人は、こうした事実を語らない
第二次世界大戦は、ロシアの純粋さと失われた偉大さというプーチンの歴史神話の一要素になっている
ロシアは戦争の犠牲と勝利を独占している
スターリンがヒトラーと組んで第二次世界大戦を引き起こしたという事実は、ロシア国内では考えられないとされている

スターリンのファシズムに対する柔軟性は、現代ロシアを理解する上で重要な鍵である
スターリンのもとで、ファシズムはまず中立とみなされ
次に悪とみなされ、そして「ファシズムとの友好」時代が始まり、ヒトラーがスターリンを裏切り、ドイツがソ連に侵攻するまで続いた
そして、ファシズムは再び悪となった

しかし、この言葉が何を意味するのか、誰も定義しなかった
ファシズムは何でも入れることのできる箱となった
共産主義者ですら「ファシスト」として裁判にかけられ、弾圧された
冷戦時代には、米国と英国が「ファシスト」になった
そして、いわゆる反ファシズムは、スターリンが最後の粛清としてユダヤ人を標的にしたことで、その後継者であるイスラエルとナチス・ドイツを混ぜ合わせることを可能にした
つまり、ソ連の反ファシズムは、ファシズムの対極にあるものではなかった

結局、ファシズムは、ナチスの思想家カール・シュミットが言ったように、敵を特定することから始まるのである

ソ連の反ファシズムは、まさに敵の探索を意味したのである
そうやって、ロシアがファシズムに入れる裏口ができたのだ
21世紀のロシアでは、「反ファシズム」は、指導者が国家の敵を特定する権利となった
アレクサンドル・ドゥーギンやアレクサンドル・プロハーノフ(注:ノヴォロシアやルーシズムの思想提唱者)のような本物のロシアのファシストが、メディアに登場するようになった

そしてプーチン自身は、ロシアのファシスト、イワン・イリイン(先進国による開発援助などを批判する思想家)の著作を引用するようになった

プーチンにとって、「ファシスト」や「ナチス」とは、単に彼や彼のウクライナ破壊計画に反対する人物のことである
ウクライナ人は、自らをロシア人と認めず、抵抗するから「ナチス」なのだ
1930年代からのタイムトラベラーなら、プーチン政権をファシストと見なすのにためらわないだろう
Zのマーク、集会、プロパガンダ、暴力による浄化行為としての戦争、ウクライナの都市周辺に残された死の罠、それらの全てが明確に示している
ウクライナに対する戦争は、伝統的ファシストの戦場への回帰であり
伝統的ファシストの言葉と言葉遣いへの回帰でもある

他国民は植民地化されるために存在する
ロシアはその歴史によって無実である
ウクライナが存在するのは国際的な陰謀である
戦争しか方法が無かった

プーチンはファシストを敵視しているので、彼自身がファシストであることが、彼には理解できないかもしれない
しかし、ロシアとウクライナの戦争では、「ナチス」は単に「人間以下の敵」でロシア人が自由に殺していい相手を意味している
ロシアの占領下にあったブチャ、マリウポリ、そしてウクライナのすべての地域で見られるように、ウクライナ人に対するヘイトスピーチにより、ウクライナ人を簡単に殺している
友愛の墓は事故ではなく、ファシストによる殲滅戦の当然の帰結である
ファシストが他人を「ファシスト」と呼ぶのは、非合理性の狂信者として極限まで高まったファシズムだからである
ヘイトスピーチが現実を歪曲する瞬間であり、それは、個人の理性を他人の意志が打ち砕く頂点である
自分がファシストでありながら他人をファシスト呼ばわりするのは、プーチンにとって当然の行為である
アメリカの哲学者ジェイソン・スタンレーは、これを 「アンダーマイニング・プロパガンダ」と呼んでいる

https://www.jstor.org/stable/43974638

私は 「分裂ファシズム」と呼んでいる
ウクライナ人は最もエレガントな表現で「ルシズム」と呼んでいる

我々は1930年代よりファシズムについてよく知っている
それが何をもたらすかを知っている
そして、私たちが戦っているものを理解するために、ファシズムをその名で呼ばなければならない
しかし、それでさえも十分ではないだろう
ファシズムは議論における立ち位置ではなく、フィクションを狂信する意思である
「暴力で世界を癒す」男の狂信は、最後の最後までプロパガンダによって維持される
ファシズムは、指導者の弱さを明らかにすることによってのみ、正気に戻すことができる
ファシストの指導者は倒されなければならない
ファシズムに対抗する人は、彼を倒すために必要なことは何でもしなければならない
そうして初めて、神話は破壊される

1930年代と同様に、世界中の民主主義が放置したから、ファシストは近隣諸国との戦争を始めている
もしロシアがウクライナで勝利すれば、それは決して小さなことではない
単なる、力による民主主義の破壊には留まらないだろう
世界中の民主主義国の士気を下げることになる
戦前からのロシアの友人、マリーヌ・ルペン、ヴィクトール・オルバン、タッカー・カールソンは民主主義の敵であった
ファシストの戦場での勝利は、暴力が支配者を正しくし、民主主義が失敗する運命にあることを確信させるだろう

ウクライナが反撃しなければ、世界中の民主主義者にとっての黒い春となるだろう
そして、ウクライナが勝利しなければ、数十年にわたる暗黒の時代がやってくるかもしれない

(終わり)

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