見出し画像

5月、アゼルバイジャン(1)

5月13日 ロシア愛国言論紙 Regnum:(4,995文字)

アゼルバイジャン政府関係者が、ウクライナにおけるロシアの大量虐殺を非難している

アゼルバイジャンの専門家や政治家は、カラバフ紛争(アルメニアとアゼルバイジャンの領土紛争)の解決役になろうとするEUを、ロシアはよく思っていないと見ている
モスクワはトランスコーカサスの調停者としての役割を放棄するつもりはなく、あらゆる手段を使って交渉を妨害し、EUの調停を頓挫させようとし、紛争当事者に圧力をかけてくるだろうと彼らは予想している
アゼルバイジャンの首都バクーのナイトクラブにおけるテロ(2022年4月)、アゼルサン工業団地の火災(2022年4月)、アルメニアでの大規模な反対運動(反アゼルバイジャン抗議活動は度々行われている)

専門家は、これらの出来事すべてを、クレムリンのアゼルバイジャン与党に対する圧力と結び付けている
アゼルバイジャンの専門家の多くは、EUと欧州理事会の調停努力を肯定的に評価している
彼らの意見では、初めて、双方が直接交渉する機会を得たからだ
専門家たちはミンスク・グループ(プーチン・ルカシェンコ)の活動を否定的に評価している
ロシアのウクライナにおける軍事行動に関し、アゼルバイジャンの政治アナリストや専門家の大半は、ロシアに対して公然と敵対的な態度をとっている
これまでバクーの街角で行われた世論調査でも、絶対多数がウクライナ支持で、ロシアの同情派は少数だった

エルキン・ガディルリ

 4月27日の PACE におけるアゼルバイジャンのエルキン・ガディルリ議員の演説は、ウクライナにおけるロシアの行動を国際犯罪であり、全てが国際法違反であるとしたもので、特筆すべきものだった

エルキン・ガディルリ:アゼルバイジャン議員(野党)

PACE:Parliamentary Assembly of the Council of Europe

「ウクライナでは様々な国際犯罪が行われている
人道に対する罪、ブチャにおける戦争犯罪
報告によると、これらの犯罪のいくつかは大量殺戮的な性格を持つものだと思われる
暴力は犯罪です
そして、それ以上に、特別に注意を払うべき犯罪があります
単なる国際法上の違反ではなく、国際法を否定する犯罪です
それは、法的現象としての国際法の根本的な否定しようとするものです
ロシア語には『不可罰 «безнаказанность»』という言葉がある
英語では『impunity(免責)』だ
これは正しい訳だが、注意が必要だ
この場合の免責とは、法律で定められた罰がないか、定められた罰があっても、回避することを許された、あるいは罰を免れるという意味がある
しかし同時に、ロシア語の『不可罰 «безнаказанность»』には、法律上、道徳上、あるいは世間一般から見た場合にも、いかなる罰も受けないという意味もある
だから(注:ロシアの公人たちは自分たちを不可罰 «безнаказанность»な存在だと見なしているから)、ロシアの政治家からは、しばしばこんな表現が聞かれるのだ
『ワルシャワを爆撃する』『戦車が再びプラハに』『ベルリンが我々に懇願する』『バルト諸国は偽りの国家』『ウクライナは存在しない』などだ」
そう、同議員は語った

また、PACE法務委員会が設置した「ウクライナで行われた国際犯罪を調査する」特別小委員会のメンバーに、エルキン・ガディルリ議員が任命されたことは注目に値する

Rovshan Askerov

ロシア調査委員会は、刑法第354条第1項第4号(「ナチズムの復権」)に基づき、ジャーナリストでテレビ番組「What, Where, When」の元出演者Rovshan Askerov氏に対し、刑事事件として捜査を開始した
Rovshan Askerov:アゼルバイジャンのジャーナリスト。ロシアの市民権を有する。

なお、Rovshan Askerov氏は、アゼルバイジャン大統領アリエフの娘であるレイラ・アリエフが編集長を務める「Baku」誌の広報部責任者だ

ラシム・ムサベコフ議員

ラシム・ムサベコフ:アゼルバイジャンの政治家。哲学者、政治学者。元議会副議長。

ニコル・パシニャンのモスクワ訪問:4月19日

ラシム・ムサベコフ議員によると
「アルメニア首相ニコル・パシニャンのモスクワ訪問は、ロシアとアルメニアにとって画期的な出来事となった
他の訪問者とは異なり、10メートルのテーブルを隔てた会話ではなく、プーチン大統領との密接な距離で話したからだ
これは、パシニャン首相が「温かい」会話のために、ロシア大統領の医療スタッフの要求に全て応じたということであり、自尊心のある他の外国の指導者の多くは同意しないものなのだ
しかし、会談の最後に署名された声明文に目新しいものはほとんどなく、むしろ『(前哨基地を持つ)パトロンとクライアント』という、これまで通りの両者の関係を再確認したに過ぎない
アルメニアのメディアでさえ、この文書の詳細な分析に注意を払わなかった
そして、アゼルバイジャン人もそれに対して何の興味もない
しかし、私は24条に注目した
「両当事者(ロシアとアルメニア)は...ナゴルノ・カラバフの住民に安全保障を提供し、快適で安全な生活環境を作るため、露平和維持部隊が決定的な貢献をすることを確認した」とある
緊急の人道的問題とナゴルノ・カラバフの解決を、政治的・外交的手段で迅速に行う必要性を確認したのだ
これに関連し、彼らは、OSCEミンスクグループの共同議長の権限を、その国際的な使命に従って使用することの重要性を確認しているのだ
問題は、アルメニアとロシアの外交文書に、アゼルバイジャンの領土について言及する権利があるのか、ということです
特に『ナゴルノ・カラバフ』という言葉の使用については、バクーが公式に、アゼルバイジャンの政治地図には、もはやそのような名前の地域は存在しないと宣言しているのにも関わらずです
この条文は、明らかにアルメニア側の主張で文書に追加されています
その替わりに、アルメニアは、いわゆる『米国のバイオ研究所』やロシアに対する制裁を非難する共同声明に署名することに同意したのです
しかし、ロシア側のこれまでの発言、露外相セルゲイ・ラブロフが『OSCEミンスクグループ共同議長の調停任務は事実上終了した』と公言していることと、明らかに矛盾しているのです
バクーを訪れたEU特使トイボ・クララとは対照的に、ロシア外務省特使としてアゼルバイジャンを訪れたイゴーリ・ホヴァエフが冷遇されたのは当然だろう

イゴーリ・ホヴァエフ:アゼルバイジャンとアルメニアの関係正常化のためのロシア連邦外務省特別代表 (2022年4月14日以降)

モスクワは、ロシア外交がバクーの正当な要求を無視し続ければ、彼らの調停任務は失敗する運命にあることを認識しなければならない
モスクワの外交官たちは、カラバフはアゼルバイジャンであることを思い出すべき時です」

ムサバト党首アリフ・ハジリ

アリフ・ハリジ:アゼルバイジャン議員。親トルコ派。政治犯として拘禁されていたことがある。

パシニャンのモスクワ訪問についてコメント
「プーチンは、アゼルバイジャンとアルメニアの平和条約締結と、アルメニアとカラバフからの軍撤退の可能性を強く懸念している
パシニャンがモスクワを訪問しても、何もいいことはないだろう
プーチンのいるところに戦争はある
ロシアの軍事的政治的リーダーシップがあるところに平和はない
和平協定が結ばれないように、さまざまなトリックや策略を駆使している
アゼルバイジャンとアルメニアが協定を結ばないように、アルメニアがロシアの影響と支配の下に留まるように、そして、各国の国境紛争が続くように、プーチンが最善を尽くすことを確信している

現在、世界におけるロシアの地位は不明確である
2月23日以前は、超大国の仲間で、3~5番目に位置する権力の中心であった
今は、世界政治にどの程度影響を及ぼすことができるかは不明である
この不透明な状況で、アルメニアもアゼルバイジャンもロシアと関係を維持し、協定を締結し、長期的な戦略計画を策定しようとは思っていない
しかし、ロシア軍隊はまだこの地域(ナゴルノ・カラバフ)にいることを利用して、アルメニアとアゼルバイジャンに軍事的圧力をかけているのだ
プーチンは、各国間の直接の交渉や平和条約の締結を妨げ、これらのプロセスをコントロールし、EUがこれらの国々に及ぼす影響を制限しようとしている
クレムリンはブリュッセル(EU議会)をゲームから追い出すことができるのか?
全てはウクライナの戦争の行方と結果に左右される
ウクライナとロシアの戦争が終わった後、この地域におけるトルコとNATOの立場が強化され、それはアゼルバイジャンの立場の強化につながるだろう

2月23日以降、ロシアはこの地域への影響力を失なった
現状では、(アゼルバイジャンは)ロシアとはできるだけ距離を置き、トルコとの関係をより一層強化する必要がある
どのような結果になろうとも、ロシアは世界とポスト・ソビエト世界に影響を与える能力を完全に失うか、その影響力は著しく弱まるだろう
アゼルバイジャンは、ウクライナやその周辺に形成される連合と同じ位置を占めなければならない
戦後の世界秩序を左右するのは、この連合である
そうすれば、アゼルバイジャンはその能力を大幅に拡大することができる」

アリ・ケリムリ

アリ・ケリムリ:元国務長官(1993)。弁護士、政治家。

アゼルバイジャン人民戦線党首、アリ・ケリムリのインタビュー
「(アゼルバイジャン)政権の支持者は、(アゼルバイジャン)イリハム・アリエフ大統領がカラバフに呼び戻したロシア軍を、1月20日やホジャリの大虐殺を行った連中と何が違うというのか

ホジャリの虐殺:1992年2月25~26日。アゼルバイジャンの都市、ホジャリに対するアルメニア軍とソ連軍の攻撃によって始まった事件。アゼルバイジャンの民間人が多数、無差別に殺害された。公式記録では少なくとも485名が死亡しており、行方不明者が多数存在する。

黒い1月:1990年1月20日、バクーに入ったソ連軍機甲部隊によるアゼルバイジャン市民の弾圧。130人以上の死者と600人以上の負傷者が記録されている。

旧ソ連領にロシア帝国を復活させようとする人たちは、このままななら、帝国の旗をソ連の旗に変えるだろう
ウクライナの土地を占領したロシア軍がソ連の旗を使用したことは、ロシア帝国復活を夢見る人々を鼓舞している
プーチン政権の子分野党の共産党は、現在の国旗をソ連の国旗に置き換える法案を国家議会に提出した

イリハム・アリエフ大統領のロシア「平和維持軍」のカラバフ招致に反対し、1月20日やホジャリー大虐殺をやったのはロシア軍だと分かっているのかと私が言ったとき、与党議員は「現代ロシアとソ連に共通点があるのか?」とヤジった
しかし、権威主義的なロシア政権はその仮面を脱ぎ、全て明らかになった
ロシア軍は占領したウクライナの都市にソ連の旗を掲げただけでなく、占領したへルソン地方のジェニチェスクという町にレーニンの記念碑を建てたのである
ブチャ、イルピン、マリウポリでの大虐殺の後、ウクライナでソ連の旗を掲げ、占領軍によるレーニン記念碑の設置した今、一体、誰がホジャリの大虐殺や1月20日の流血を犯したのはロシア軍ではないと言うことができるだろうか
残念ながら、カラバフに配備されている軍隊はロシア軍隊である
我々の国家的義務は、ロシア軍によって築かれている、ロシア帝国を取り除くことである

今日、ウクライナのみならず我が国も、ソ連の旗を掲げた新ロシア帝国に戻るのか、自由主義国家の欧州連合に進むかの選択を迫られている
必ず、私たちの国民は一致してロシア帝国に『ノー』と言うでしょう
私たちは、最初に『平和維持軍』の名目で私たちの土地に侵入するそのロシア帝国軍隊、そして私たちの国に確立されている権威主義を取り除かなければならないのです」

(つづく)

最後まで読んでいただいてありがとうございます😊
どうか「スキ」「ツイート」「シェア」をお願いします!
できましたら、感想をコメントで一言いただけると、ものすごく励みになります😣!😣!

サポートしようと思って下さった方、お気持ち本当にありがとうございます😣! お時間の許す限り、多くの記事を読んでいただければ幸いです😣