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19世紀の軍隊が21世紀の軍隊と戦争をしている

7月7日 (3,256文字)
著者:トーマスC.タイナー


今、ロシア軍のロジスティクス(物流)はどのように機能しているのだろうか?
1.前線から100km後方で列車を止め、人力で貨物を下ろす
2.数時間かけてトラックに積み替え、100km先の前線に輸送
ロシア軍のトラックは西側の軍用トラックよりも積載量が少なく、西側よりもかさばる木箱に弾薬が入っている
3.前線にトラック到着
4.人力で荷下ろし
5.トラックを駅に戻す

2022年7月7日 2014~15年より、ロシアはウクライナに至る鉄道駅建物の付近に数十の弾薬倉庫を秘密裏に建設してきた
ロシア軍の兵站基地はほとんどが鉄道の近くにある
ロシア軍は兵站部隊、特に輸送部隊の不足を認識しているからだ
そして、ロシア軍の技術的な遅れ、フォークリフトやクレーンをほとんど装備していないという事実は事態を悪いものにしている
ロシアの軍事機器は人力で積み込まれ、輸送され、人力で荷下ろしされ、人力でトラックに積み込まれ、そして輸送される
時間がかかりすぎる
これほど遅い軍隊は他にはない
ロシア軍の腐敗と、技術的後進性と、ローダーやクレーンなどの装備が特殊であることは、事態をさらに悪化させている

まず、ウクライナが長距離ロケット弾GMLRSを発射するM142 HIMARS(ハイマース)や高精度なPzH 2000(パンツァービッツ)、AHS Krab、CAESAR(シーザー)自走榴弾砲を受け取るまで、ドンバスでロシア軍の弾薬供給システムはどのように機能していたのだろうか?

大体、
1) ロシア連邦で、列車に2,000~4,000トンの弾薬を積みこむ
2)ウクライナに向かった列車は、戦線から30~40km離れた地点に停車し、弾薬を下ろして近くに貯蔵する
3) 前方部隊は、必要な弾薬を受け取るため、自前の補給トラックを貯蔵地点に走らせる

燃料、スペアパーツ、食料品なども同様だ
ロシア軍は鉄道に依存しているため、鉄道部隊には28,500人の軍人がいて、鉄道の修理や建設に従事している
例えば、この鉄道駅は、将来イジュームからスロビャンスクへの攻勢を確保するために、オスキル川を横断して建設されたものである

鉄道にアクセスできなくなると、ロシア軍の兵站システムはすべて崩壊する
キーウ西のロシア軍の侵攻は、チェルニヒウ地方とスミ地方を通る鉄道を手に入れることができなかったため、悲惨な結果に終わったのだ
ロシア軍はウクライナ軍が最初に防衛したニジーン、チェルニヒウ、スミなどの都市を通じ、キーウ西に兵站を供給する機会を得ようとしていたのである
ロシア軍は補給基地から90〜100km以上離れることができず、この点で大失敗した
ロシア軍がこの距離で部隊を展開できるのは、防衛戦を行う場合だけである
ロシア軍の鉄道からキーウ近郊のブロヴァリーまでの距離は350km... あいだの300kmには、補給基地を焼き払おうとするウクライナの特殊部隊やパルチザンがうようよしていた
ロシア軍はドンバス、へルソン、ザポリージャの各地域で、軍隊のための鉄道サービスを確立した
この鉄道サービスにより、ロシア軍が日々消費する数万トンの砲弾と弾薬、膨大な物的損失を補うための物資、予備の戦車や榴弾砲などの移送と搬入が可能だった

しかし、今やロシア軍の弾薬庫や補給地点は、大砲やミサイルの射程圏内にある
AHS Krab、PzH 2000、CAESARはガスジェネレータ弾を発射でき、その射程は40kmだ
これらの榴弾砲は、GPSで発射位置を測定し、目標のGPS座標から正確な銃口の上昇と仰角を計算し、自動的に銃口を最適設定する最新砲制御システムを搭載している
さらに、どのシステムもレーダーで発射された弾丸速度を計測し、発射後に銃身を再調整する
これまで、ウクライナ軍はこれほど長射程で高精度の大砲を持ったことがなかった
これにより、ウクライナ軍は前線から最大35km離れた露軍の補給基地を高い精度で狙うことができている
占領地にいる、何万人ものウクライナの愛国者たちのおかげで、ウクライナ軍はロシア軍の全弾薬庫の座標を把握している
現在、ウクライナ軍はGMLRS(ハイマースのミサイル)を受け取っている
GMLRSは、85km以内で完璧な精度を持っている
ウクライナ防衛隊は、発射地点から85km離れた建物にミサイルを正確に命中させ、建物の中にある50ポンドのPBX-109(ミサイルの弾頭の爆薬)を狙って発射装置をセットすることができるのだ
さらに、大きな目標(倉庫など)であれば、たとえ85km以上離れていても、命中させることができる この新しい二つの砲撃オプションは、二つの効果を生じた
1)これまでに露軍は数千トンの弾薬を失った
2)前線から100km以内に露軍は弾薬を貯蔵できなくなった
倉庫が消えるたびに、前線にいる大量の露製砲兵システムが発射できる弾薬が無くなり、ロシア軍は失われた弾薬を補充しなければならなくなった
発射し、損失したほど生産できていないので、ロシア軍はベラルーシから古いソビエト製の弾薬を配送している
次に、ロシア軍は弾薬をウクライナ軍の榴弾砲やMLRS(そしてTRK)の射程内まで持ち込むわけにはいかず、最前線から90~100kmの地点で列車を停めなければならない
そうしなければ、弾薬と列車は砲撃で破壊される
弾薬や備蓄庫が前線から100kmも離れているため、ロシア軍は前線部隊への補給をトラックに頼らざるを得なくなった
しかし、ロシア軍は、すでに少なくとも1200台以上のトラックを失っており、残っているトラックも数か月間使用されている
メンテナンス不足が、その残ったトラックにも大きなダメージを与えている
では、今、ロシア軍のロジスティクスはどうなっているのだろうか?

1) 列車を前線から100km離れた場所で停車させ、弾薬を人力で降ろす
2)数時間かけ、人力でトラックに積みこむ
100km離れた前線まで、さらに時間をかけて運転していく
ロシア軍にとってさらに悪いことに、トラックは西側のものに比べて積載量が少なく、西側軍の弾薬と違って、弾薬はかさばる木箱に入っている
・ロシア軍のトラックは主に木材を運ぶ
・欧米のトラックは弾薬と軍需品を運ぶ
3)ロシア軍のトラックは前線に到達する
4)弾薬を人力で荷下ろしする
5)トラックを補給地点に戻す
この距離では、ロシア軍のドライバーは1日に1回以上の配送をすることは難しいだろう
また、ロシア軍指導者が完璧なロジスティクス計画を立てなければ、弾薬を十分に受け取れない部隊や、受け取る弾薬が多すぎる部隊が出てくる
多すぎるのはさらに悪い
弾薬が多すぎるとどうなるだろう?
弾薬を地面に放置するか使い切るまで弾薬の入ったトラックを前線に置いておくことになる
弾薬を置いたまま部隊が移動するなら... 弾薬が足りなくなる
トラックが部隊と一緒に動くなら、補給地点まで誰も受け取りに戻れない

NATO軍はソフトウェアと人工知能を使用してロジスティクスを計画するが、ロシア軍は将校たちがやっている
ロシア軍が十分な数のトラックを持っているかどうかはもう問題ではない
戦争を始めたときから、もとから少なかったトラックは、その多くを失い、鉄道から100km離れた部隊に供給できる量はさらに少なくなった
ロシア軍は20世紀の軍隊だが、19世紀の遺物と技術に支えられている......
そして今、21世紀の装備を持った軍隊と戦争をしているのだ
かつて、NLAW、ジャベリン、スティンガーがキーウの戦いでウクライナの勝利に役立ったように、 時間はかかるが、CAESAR、AHS Krab、PzH 2000、特にGMLRSは、ドンバスとヘルソンの戦いでウクライナの勝利に役立つだろう
理由:素人は戦略について話します
専門家はロジスティクスについて話します

参考:米軍のロジスティクス管理


(終わり)

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