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戦争支持者たちの「Z-ユニバース」の仕組みを読み解く

10月14日モスクワタイムズ:(2,727 文字)


戦争支持者たちの露の「Z-ユニバース」の仕組みを読み解く

ウクライナ戦争の副産物のひとつに、戦争支持派のシンボルにちなんで名づけられたウェブサイトやSNSの巨大なネットワーク、「Z-ユニバース」の出現がある
TwitterやFacebookとは異なり、露で禁止されていないTelegramで最も活発に機能している
その参加者たちは全員、親クレムリンと反ウクライナのプロパガンダを広め、戦争とウクライナ人殺害を正当化するような真偽不明の情報を発信している
Z-ユニバースは混沌としているようにも見えるが、実はとても複雑で、階層構造になっている

トップは、メドベージェフ前露大統領のような政治家とクレムリン当局者だ
次のレベルには、いわゆるドネツク人民共和国のプシーリンやチェチェンのカディロフのような知事や軍閥がいる
その下に、国営メディアのトップやトークショーの司会者たちがいる
さらにその下には、「アナリスト」と戦争特派員の層がある
一番下が、トロール(荒らし)の軍団だ
彼らのTelegram・チャンネルには何万人もの登録者がいるが、そのほとんどはボットである

9月初旬、ウクライナのハリコフ反攻により、Z-ユニバースはパニック状態に陥った
少し前まで、仮想世界で露軍は「世界第2位の軍隊」であり、その気になれば欧州のどんな首都でも奪取できる存在だった
しかし、突然、露軍はウクライナのいくつかの中規模な町すら保持できなくなったからだ
最初の反応は否定的だった
9月9日、露軍がイジュームの町から逃げ出したとき、露の戦場記者アレクサンダー・コッツは、戦争中ずっとやってきたこと、つまり偽情報を提供することを続けた
空挺部隊のヘリコプター着陸の映像を嬉々として掲載し、イジュームは絶対に陥落しないと約束した
その三日後、コッツはイジュームから数十キロ離れた別の場所から、こう書いた
「バラクレイヤ、クピャンスク、イジュームは降伏した
我々はハリコフ地方の大部分から撤退している
これは軍事的災害だ」 と、ザスタブニ・テレグラム・チャンネルで書いている
「イジューム戦線で今何が起きているのか説明できない
しかし、選択肢は一つしかない
明日、戦線崩壊の責任者は全員、大逆罪で逮捕されるだろう」
そうテレグラム・チャンネル・ジヴォフは書いている

クリミア橋の爆破は、Z-ユニバースの士気をさらに低下させた
「誰が特別作戦を指揮しているのか、もはや分からない
:そこはまだロシアなのか、それとももうウクライナなのか」
と、あるチャンネルは書いていた

この後、清算の時が来た
カディロフは、ウクライナ東部の露軍司令官アレクサンドル・ラピンを無能で、参謀総長ゲラシモフを縁故主義者だと非難した
「ラピンは役に立たない...
もし私なら、ラピンを二等兵に降格させ、勲章を剥奪し、前線に送って機関銃で恥をかかせるだろう。」 とカディロフは 書いている
傭兵集団「ワグネル」のオーナー、プリゴジンはカディロフに賛同し
「この野郎どもは全員、サブマシンガン一丁で裸足で前線に送り込むべきだ」と言っている

このような政府高官への痛烈な批判は、現在の露では極めて異例だ
しかし、彼らが決して個人的な意見を言っているのではないことを忘れてはならない
彼らは皆、クレムリンのヒエラルキーのトップにパトロンがいるのだ
カディロフとプリゴジンのパトロンは、露国家警備隊長(ロスグヴァルディア)のゾロトフであると広く考えられている

ヴィクトル・ゾロトフ:ゾロトフは、エリツィン元大統領、そしてプーチンのボディーガードを務めていた
ゾロトフはソブチャークで働いているときに、プーチンやサンクトペテルブルクの裏社会の人物と知り合いになった
プーチンの親友になったことでゾロトフは富と権力を手に入れた

ゾロトフは、露軍の失敗を利用し、戦前はプーチンの後継者と目されていたショイグの立場を弱めようと考えたのだろう
意外なことに、クレムリン関係者の中にも、ショイグへの攻撃に加わっている者がいるようだ
噂では、匿名のテレグラム・チャンネル・Nezygarが大統領府の見解を表明しているという
「ワシントンとロンドンは、露をウクライナとの本格的直接軍事衝突とNATOとの間接的衝突に引き込むことに成功した」と最近、Nezygarは書いている
これらの作戦はすべて成功した
ラピン将軍はその地位に留まったが、その頭上にスロヴィキン将軍が任命され、ウクライナにおけるすべての軍事作戦を指揮することになった
カディロフはラピンと同格の大将-大佐に昇進した

FSB元大佐、Z-ユニバースのL'enfant terrible(過激派)であるイゴール・ストレルコフ

2014年、ストレルコフは反政府武装勢力を率いてドネツクの権力を掌握し、その後ドネツク人民共和国の防衛大臣に就任したが大した成果がなく、露軍の正規軍人に取って代わられた
それ以来、ストレルコフは常に露軍司令官を批判してきた
戦争が始まった当初から、彼は総動員と「情報動員」、つまり愛国的ヒステリーを呼びかけ、軍事の必要性に経済を従わせることを要求してきた
露軍司令部を「バカ」と呼び、ショイグを「ダンボール元帥」と名付けた
ストレルコフはFSB指導部と国粋主義的な陸軍将校のスポークスマンであると考えられている
国防省、FSB、露国家警備隊(ロスグヴァルディア)といったシロビキは、誰も、自分たちのためにクレムリンの玉座を目論んでいるわけではない
彼らはプーチンに対する影響力を競い合っているのだ
ジャーナリストのユリア・ラティーニナが指摘するように
「争われているのはショイグの地位であって、プーチンの王位ではない ただ、ショイグの後継者になる者は、プーチンの後継者にもなる」

クレムリン周辺で何が起きているのか、Z-ユニバースからの信号を分析しても完全に把握することは難しい
しかし、はっきりしているのは、軍事的な失敗が権力闘争に拍車をかけているということだ
これらのことは、歴史家のティモシー・スナイダーが考える、この戦争の最も可能性の高い終わり方を指し示している
露国内で内戦や武力衝突に至ることはないが、深刻な権力闘争の論理から、主要なプレーヤーたちが戦闘可能な部隊をできるだけ多くウクライナから撤退させ、自分の国に戻すことを余儀なくされるというものだ
カディロフの場合はチェチェンであり、他の勢力はモスクワに自分の軍を近づける必要がある
そうなれば、戦争は自ずと終わるだろう
スナイダーが指摘するように 「これはもちろん、ウクライナにとっても世界にとっても、非常に良いことだ」
(終わり)

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