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11月、コンテナ船の混雑が緩和、露貿易は制裁で大打撃を受けた

11月7日 独経済シンクタンク (2,496 文字)

https://ifw-kiel.de/publications/media-information/2022/congestion-in-container-shipping-declines-sanctions-hit-russias-trade-hard/…


コンテナ輸送の混雑は高い水準で緩和している
これは、10月のキール貿易指標の最新データによって示されている
中国から欧州への貨物輸送の運賃は、約2年ぶりの低水準にある
世界全体および主要国の貿易額は、前月比でマイナス傾向がある(価格調整済み、季節調整済み)
露の場合、制裁措置が影響している
同国では、1ヶ月あたり約45億米ドル相当の輸入が減少している

キール貿易指標(後で解説)の最新データによると、世界の貿易量は前月比で0.8%(価格および季節調整済み)の微減だ

ドイツについては、指標値は輸入(-0.9%)のわずかな減少を指し、輸出(-0.2%)の大きな変化はない
EUの貿易も輸入(0.0%)、輸出(1.0%)が前月のレベルか、わずかに上回っており、ほとんど変化はない
米国は、輸入レベルに変化はないが(0.0%)、輸出レベルの減少(-2.7%)を示している
中国は輸入レベルに大きな変化はなく(0.9%)、輸出が大幅に増加(10.1%)したことを示している
「世界貿易は不安定な動きを見せているが、この影響はすべての国に均等なわけではない
ここ数ヶ月間、独輸出は価格調整値で横ばいの動きを続けており、困難な経済状況は明らかに独輸出業者に顕著な影響を与えている」とキール貿易指標の責任者ヴィンセント・スタマーは述べている

「中国の9月の輸出の伸びは、世界貿易の中でポジティブな異常値です これが中国の制限的なゼロコロナ戦略の緩和を示すものなのか、中国輸出の持続的なプラス傾向を示唆するものであるかどうかは、まだ不明です
毎月の貿易額の大きな変動は、歴史的に中国の貿易では珍しいことではありません」
(注:ご存じの通り、10月22日、習近平の三期目続投が決まり、ゼロコロナ戦略は今も強力に継続されている)
露では、欧米諸国の制裁措置が影響を及ぼしている
輸出(-2.6%)、輸入(-0.4%)ともに貿易量の月次推移の表示はマイナスだ
ここ数ヶ月、特にEUとの間で貿易はすでに大きく落ち込んでいた
露の公的統計機関は、対ロ制裁の影響を隠すためか、ここ数カ月間、輸入額を公表していない
2022年6月、7月、8月の夏の間、EUや中国など57の国と地域から露への輸出を分析したところ、露の輸入量は2021年に比べて1カ月あたり約24%少ないことが分かった
月間の輸入ギャップは約45億米ドルである
2021年夏、EUは露にとって最も重要な貿易相手国だったが、現在は、中国が露の最も重要な貿易相手国だ
前年と比較して、EUの露向け輸出は43%減少し、中国の輸出は23%増加している
しかし、中国から露への輸出の増加は、9月に勢いを失った
「中国の輸出は、露の対EU貿易の減少を補うには十分ではないため、欧州からの輸入の減少を補う露の努力はますます困難になっている
西側諸国による制裁措置は、露経済に大打撃を与え、露国民の消費の選択肢を著しく狭めているようだ」とStamerは述べている

このことは、露の港で荷揚げされる貨物の減少にも示されている

青:サンクトペテルブルク港 水色:ウラジオストク港 オレンジ色:ノボロシースク港 紫色:オデーサ港

露最大のコンテナ港、対欧州貿易の重要拠点サンクトペテルブルクは、10月、初めて前年比10%以下の数量になった
黒海の主要港であるノボロシースク港も前年の50%しか実現できなかった アジア貿易に重要なウラジオストク港も入港貨物が減少しており、消滅した欧米間貿易を補うことができない
世界各地のコンテナ船の混雑程度は、急速に緩和の兆しを見せている 現在、全世界の輸送コンテナで遅延しているのは10%である

今年に入り、中国から北欧への運賃は3分の2程度に下落した 標準コンテナの価格は約2年ぶりに再び5,000米ドルを下回り、貿易危機が発生する前の水準に近づいている
中国から北米への航路では、少し以前から、価格が下がり始めている
シュタマーによれば
「運賃の大幅な下落は、世界貿易にとって、ひいては独経済にとってもプラスの刺激となる
運賃が低水準で推移し、世界の海運混雑が緩和され続ければ、輸送コストの低下が輸出産業の景気後退の懸念を一部打ち消す可能性がある」 という

キール貿易指標の詳細および75カ国・地域の予測のリンク↓

https://ifw-kiel.de/topics/international-trade/kiel-trade-indicator/…


キール貿易指標の次回の更新は、11月21日、12月6日に行われる予定だ

キール貿易指標とは:
キール貿易指標は、世界75カ国・地域、EU、世界貿易全体の貿易フロー(輸出入)を推計するものです
EU、サハラ以南のアフリカ、北アフリカ、中東、新興アジアなどの地域と、50以上の個別国を対象として推計しています
これは、船舶の動静データをリアルタイムで評価して行います
キール研究所でプログラムされたアルゴリズムが人工知能を使ってデータを分析し、船舶の動きを季節調整済みの実際の前月比成長率に変換します
月2回データを更新しています
5日前後の更新は公開しています 20日前後の更新は非公開です

世界500港の入出港船舶を記録し、100の海域における船舶の動きを分析し、喫水情報からコンテナ船の有効利用率を計算します
深海港を持たない国でも、国-港の相関関係から予測します
キール貿易指標は、これまでの先行貿易指標と比較して、より早く、より包括的なビッグデータを用いた独自の大規模データベースを使う事で、統計誤差が比較的小さくなりました
さらに、キール貿易指標のアルゴリズムは、機械学習を用いているため、予測の質は時間とともに向上し続けます
(終わり)

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