この戦争は、どう始まったか -Wikipedia編集者（４）

2022年12月17日 15:58

10月19日　ロシア独立系メディア　rusmonitor：（4,024 文字）

-編集部の安全を守ってくれていますね。
ロシア語版ウィキペディアの内部、つまり編集者や管理者の間では、侵攻当時から現在まで、どのような雰囲気ですか？

-さまざまな意見があります
しかし、それでも、ほとんどの編集者は、ウクライナで起きていることは戦争であり、それは悪いことだと認識しています
そして、そのコンセンサスは、しばしば客観的な報道を求めるものなのです

それに、2月25日には、ロシア語版ウィキペディアの80人以上の編集者が、ウクライナ人を支援し、戦争に反対する手紙を書いています

「特別軍事作戦」などの言葉は、侵略国家の見解なので、ロシアの公式文書を引用する場合にのみ使用できるものとし、わが国では使用が禁止されました
また、「侵略」「戦争」と言い、国連用語（「ロシアのウクライナへの侵略」）を使うべき場合もあります
このため、ウィキペディアはロシア当局から嫌われています
5月末には、ウクライナ戦争でロシアが行った焼夷弾爆撃に関する記事の削除要請が提出されました

まとめ役の編集者はこの記事をすぐには削除しなかったが、数時間後に別の管理者が削除しようとし、さらに別の管理者が記事を残すべきだと判断しました
決断を覆すことは容易ではありません
この問題は仲裁委員会に持ち込まれ、委員が最終的な判断を下すことになりそうです
そして、それは「ロシアにとって悪いことは、ウィキペディアにとって良いことだ」という精神ではないと思います
検閲の影響を排除し、ありのままの状況を伝えることを心がけています
そのトピックがウィキペディアの関連性の基準を満たし、十分に詳しく説明する権威ある情報源があり、そのトピックが中立的に提示されていれば、それはウィキペディアに掲載される権利があるのです

ちなみに、プーチンの歌「ララララ」（「プーチンはアホだ！」）は、公的な意味があると考えられており、手をつけず、Wikipediaの40以上の言語セクションにこの歌の記事が載ったままです

- Wikipediaのどの資料が捻じ曲げられ、どのような間違った結論が導き出されたのでしょうか？

- Telegramで二つの情報が発信されました
「独占情報：クラマトルスク駅への砲撃のフェイク情報の作者は、現在は西側に住む、キーウ出身の有名なウィキペディア管理者で外国のIT企業のアドバイザーをしているオレグ・ユナコフ氏である」と
「クラマトルスク駅へのロケット弾攻撃というフェイク情報」の2つのメッセージです
数十万ビューと、全てが嘘と誤りばかりの数百のコメントが付きました
「クラマトルスク駅への偽ミサイル攻撃はオレグ・ユナコフが作った」という表現自体は、「攻撃はなく、ユナコフが偽を作った」とも読めますが、攻撃はありました
問題は誰が攻撃したかであり、ほとんどの情報源はロシアがやったと言っているが、ロシアはすべてを否定している
とにかく、ロシア側の話を聞くと、攻撃したわけでもなく、誰も殺したわけでもないという
ウクライナ人は自分たちで殺し合い、自分たちを爆撃し、自分たちでレイプし、自分たちの街を破壊しているということになっている

ロシアの「評論家」は、ウクライナが攻撃され、殺され、レイプされ、破壊され、領土を奪われているという真実を書いただけで、それがロシアの「党是」と一致しないといって、プロパガンダだと主張するのです
私をこんな風に宣伝してくれるなら、どうぞご自由にという感じです
もう一度、誰かがチェックすればいいし、チェックした結果、それがゴミであることが分かるだけです

- ロシアのウクライナ侵攻に関する情報が、外国語版チャプター、特に大手のチャプターでどのように紹介されているかを監視していますか？

- 他のセクションはフォローしていませんが、英語とウクライナのセクションは確認しています
いずれも、ロシアのウクライナ侵攻に関する情報は、かなり客観的です
彼らは、物事を正しい名前で呼ぶことを恐れません
また、侵攻に関する出来事のポーランド語セクションへの翻訳も何度か行ってますが、私が見た記事では、データも正しく表示されていました

- このデータについてコメントをお願いします

最初の30項目のうち20項目が、ロシアが行っているウクライナ戦争に関連する名前やサイトであることは、何を意味するのでしょうか？

- この戦争は生活のさまざまな分野に影響を及ぼし、ロシア語を話す人々にとって大きな関心事となっています
人々はそれに興味を持ち、こうした話題の記事を訪れたことがデータに顕れています
思い起こせば、ロシアの前身であるソビエト連邦は、冷戦と欺瞞を断ち切ったのです
もはや冷戦ではないこの事態が、ロシアにとってどのような結末を迎えるのか、見届けたいと思います

- «на Украине»という表現は、今でもウクライナ人から非難されているのでしょうか？（«на Украине» と «в Украине» の区別で論争があった）

- これは、2005年に作成されたロシア語版ウィキペディアの現在につづく形式に基づくものであって、私の意思ではありません
アメリカのウィキペディアのロシア語セクションは、この変更にまだ対応していません
我々の仲裁委員会は、«на Украине» が、非常に多くのコミュニティで十分に正当性を持っていないか、あるいは正当だと認識されていないことを認識しており、利害関係者が賛成と反対のすべての議論を1つのページに集めることを推奨しました

そして、2022年7月17日、ルール改正の是非を問う投票を実施しました
その結果、87名の参加者が「«на Украине» ではなく «в Украине» 」に対して「イエス」に賛成票を投じました
「ノー」の意見では、「『«в Украине»であって «на Украине» ではない』というルールは、この一年間変更する必要は無い」に140人の参加者が投票しました
つまり、この形式が見直されるのは2023年7月18日になります
ですから、このルールは、今後変更される可能性があります

- 個人的、人間的なレベルでは、この戦争についてどう感じていますか？

- この戦争は、ウィキペディアの編集者を含む多くの人々の心を揺さぶりました
マリウポリ封鎖の記事を作成・執筆しているうちに、マリウポリにいる妻の親族との連絡が途絶えました
何週間も、生きているかどうかわからなかったんです
しかし、その後、幸運にも、大きなグループで包囲された都市を離れることができ、脱出することができたことが 3月15日に分かりました
すぐにはわからなかったことで、後でわかったことですが、彼らが去った後、9階建ての建物はロシアの砲撃で完全に破壊されてしまったそうです
家族の中でただ一人生き残り、親族が皆殺しにされたことが分かり、気が狂ってしまったおじいさんもいます

かつてソビエト連邦だった国が、同じ地政学的な存在であったもう一つの国を盗もうとしているのは、控えめに言っても非常に不愉快なことだと思います
しかも、民間人を殺し、建築されたモニュメントを破壊することによって、それを実現しているのです
両国に親戚がいる人も多く、この戦争は世代を超えて敵対心を蒔き散らしている。
しかし、最悪なのは、問題がたった一人の男ではなく、彼を支持するその国の8割の人にあるということです
私の理論は単純です
悪い国家は存在せず、むしろ国家の後に人々を抑圧する政府が存在する、というものです
同じ韓国人という民族でも、国が二つに分かれると、二種類の人間が生まれています
しかし、そのような政府はいずれは滅びるはずです
唯一の問題は、どのような代償を払うのか、ということです

（終わり）

11月1日　ウクライナメディア：

ロシアは、ロシアとウクライナの戦争に関する記事に対して「ウィキペディア」に再び罰金を科しました

モスクワのタガンスキー地方裁判所は、ウィキペディアからロシアのウクライナ侵攻に関する2つの記事を削除することを拒否したとして、ウィキメディア財団に200万ルーブル（32.5千ドル以上）の罰金を科しました
メドゥーサによって報告されています
同誌によると、命令は「ロシア侵攻時のウクライナ市民の非暴力抵抗」と「ロシアによるウクライナ侵攻の評価」の記事に対してのものです

4月にはすでに、ロシア・ウクライナ戦争に関する記事と、爆発物の作り方に関する情報を含む火薬に関する記事（裁判所の見解では）の削除を拒否したウィキペディアに罰金を科しています
罰金の総額は500万ルーブル（8万1千ドル以上）でした

7月以降、Roskomnadzorは検索エンジンに対し、ウィキメディア財団のプロジェクトをロシアの法律違反者としてマークするよう義務付けています

ロシアは軍事検閲を導入し、「ロシア軍の行動に関する意図的な虚偽の情報を公に流した」場合に刑事責任を負わせることにしています
特に、ロシア当局は、ウクライナに対する戦争を戦争と呼ぶことを禁止し、「特別作戦」と呼び、ウクライナにおける自軍の犯罪を隠蔽しています

ロシア語版ウィキペディアの記事「ロシアのウクライナ侵攻（2022年）」の著者は、ウクライナにルーツを持つアメリカ人、オレグ・ユナコフ氏でづ
インタビューで、自身の仕事、戦争への姿勢、プーチンについて語っています
プーチンは、無料のオンライン百科事典の「質」に満足していないと言い、ウィキペディアのロシア版を作るというアイデアを支持しています