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6月、ベラルーシ(1)

6月2日 ベラルーシ反政府メディア:(4,353 文字)

ウクライナは先にルカシェンコを無力化してこそプーチンを倒せる

ベラルーシ軍がウクライナに派遣されることは、ありえるだろうか?
カリノスキ連隊(ベラルーシ義勇兵部隊)の能力とは?
ベラルーシ人はどうしたらルカシェンコの独裁政権から解放されるのか?
欧州にいるベラルーシ市民活動家 Dzmitry Bandarenka にインタビューしました

Dzmitry Bandarenka (Дмитрия Бондаренко) :ベラルーシの政治家、市民活動家。政治犯。亡命中。

-戦争で全てが変わりましたが、ベラルーシの変化の可能性は高まったのでしょうか?

はい、戦争はすべてを変えました
ベラルーシの状況も変化しています
すでに変わっています
ベラルーシはルカシェンコのせいで戦争に巻き込まれ、ウクライナの指導者はベラルーシの領土に報復攻撃をしないと決断しましたが、独裁者はベラルーシの人々を大きな危険にさらす政策決定をしました
それは違憲の決定でした
なぜなら、ルカシェンコによる愚かな「国民投票」(2020)の後であっても、ベラルーシは憲法の下にあり、(他国に)軍事攻撃を行う権利は無いからです
根本的な変化も秘密裏に起こりました
ロシア軍はいつでも好きなときにベラルーシ領土に入り、ミサイル、航空機、大砲、そして軍隊を派遣し、あらゆる手段を使って近隣の国や領土を攻撃できるのです
核攻撃もベラルーシ領内から可能であると、(すでにユーリ・フェルシチンスキーが論じているように)すでに言われています

ユーリ・フェルシチンスキー:ロシア系米国人の歴史家。著書「FSBがロシアを爆破する」。

フェルシチンスキーによれば、今日、ベラルーシの形式的独立を維持することで、核攻撃の報復がベラルーシに行われる可能性があることに、プーチンは関心を抱いていると言います

ベラルーシがルカシェンコの下で形式的に独立しているに過ぎないというのは、同感です
ベラルーシ領土から外国が軍事行動をしているのです

我々は、ソ連軍が西ドイツの領土を攻撃した場合にヴィスワに核攻撃を受ける恐れのあった、1970-80年代の共産主義ポーランドと同じ立場になったのです
そこで、西ドイツへの攻撃計画に反対し、これを防ぐために米国側に情報を提供したのはポーランド参謀本部の、かのリシャルド・ジェジー・ククリンスキー大佐でした

リシャルド・ジェジー・ククリンスキー大佐:ポーランド軍の軍人。CIAの協力者となった。

事態は非常に切迫しており、欧州全体が大きな危険にさらされています
ウクライナでの戦争勃発は、当時ウクライナと西側諸国が抗議するベラルーシ人を本気で支援し、2020年にベラルーシの国民が勝利していれば回避できたはずです
しかし、そうならなかったために、今、このような事態に陥っています

–ベラルーシ軍がウクライナに派遣されることはどれほど現実的でしょうか

現在、すでにそうなっている可能性が高いことが示されています

既に、ベラルーシ軍がすでにウクライナへの攻撃に参加していることは間違いないと言えるだけの映像を見ています
ウクライナ軍も、ベラルーシのヘリがジトーミル地方に飛来したと言っています

戦闘拒否して捕虜になったグループの中にベラルーシの市民がいたことも知られています
キーウとチェルニヒウ地方のウクライナ人は、ベラルーシの制服とロシアの制服の両方の兵士たちが攻撃してきたと言っています
私たちは、あちこちの都市で、ウクライナで死亡したベラルーシ軍人が密かに埋められ、今もそうされている事を知っています

-隣国の冷蔵施設や集団墓地にルカシェンコの戦士はどれほどいるのでしょうか
そして、ルカシェンコはもっと深入りするでしょうか?

その可能性は高い、ルカシェンコには何の決定権もありません
もちろん、ロシア軍の大規模な侵攻の繰り返しはウクライナにとってより危険なものです
そして、私が知る限り、ウクライナ軍とNATO諸国の軍は、あらゆる点でベラルーシ軍の潜在力を非常に甘く見ています
しかし、ベラルーシ人が新たな侵攻をするかどうかはルカシェンコやベラルーシ人ではなく、クレムリンが決めることなのです

– ルカシェンコは、もはやベラルーシに対し何も支配していないのでしょうか?

一般的に言えば、その通りです
今日、ゼレンスキー政権の関係者が、ベラルーシ政権との関係では「現実主義」を追求し、ウクライナの小麦をベラルーシを経由してバルト海の港に運ぶという話が持ち上がっている(ウクライナの穀物輸出問題)のは奇妙なことです
私は疑問に思います
ベラルーシに核兵器が配備されたら、ウクライナはどうするのだろうかと
ベラルーシから700発のミサイルが発射されても、ウクライナ当局がルカシェンコに対する「現実政治」を変えないというなら、一体どうするのでしょうか
今日、(ゼレンスキーは)誰と取引をするべきなのか、よく考える必要があります
さらに今、ベラルーシのロシア併合の可否を問う国民投票実施計画がクレムリンの議題になっているとメディアは言っています

-この国民投票に関し、ベラルーシ国内や海外のどのような反応が予想されますか?

ベラルーシ人自身が、我が国に何が起こるのかを考えなければいけません
ウクライナ人が自国の独立と領土を守るために武装して立ち上がるのを目にしました
彼らは軍事同盟を頼り、軍事支援や最新兵器の供給を求めました
ベラルーシ人も同じようにすべきです
非暴力による抵抗は、内戦においては可能です
しかし、(ロシアによる)部分的な占領だけでなく、(ロシアによる)独立と国際法的人格(国家主権)の喪失の脅威がある場合、他に道はありません
人々は、武器を手にして自分の国を守る義務があります
もう十分です!
それ以外の選択肢はないのです!
この場合、チハヌスカヤ事務所は、国際政治に成功し、多くの国際交流を行っているので、今日は、(ロシア軍による)ベラルーシの完全占領と独立喪失の脅威に対し、ベラルーシの人々に対する軍事支援を訴えることに集中するべきです

チハヌスカヤ・スヴァトラーナ:2020年選挙でルカシェンコの対抗馬だった大統領候補者。ロシア軍の介入後、ポーランドに亡命。

ベラルーシの政治家は、ウクライナ人に対しても軍事支援を求めるべきです
なぜなら、これらは単なる机上の空論ではないからです
今にも、ベラルーシ人が独立を失ったり、報復核攻撃の対象になったりする可能性すらあるのです

-この 2年間で、チハヌスカヤ事務所にはほとんど期待できないと分かりました

まあ、彼らも話を聞こうとはしてくれます
耳にタコができるほど話をしたので、制裁の必要性を主張しなければならないと理解したのでしょう
少なくとも、(制裁のおかげで)ベラルーシにおける政治犯の殺害は止まりました
結局のところ、武力と制裁だけがルカシェンコ政権に大きなダメージを与えると彼らも理解したのです

ベラルーシ首相ロマン・ゴロフチェンコ:ベラルーシの大統領が指名する。実質的に権力は無い。

ベラルーシ首相ロマン・ゴロフチェンコの「輸出は160-180億ドルに及ばない」という発言は、年間予算約100億ドルしかないベラルーシにとって、保有外貨がゼロになることを示唆しています
予算編成のためには30〜40億ドルをねん出しなければいけません
従って、インフレ率は年間数百パーセントに達する可能性もあります
(10月から「(数週間の)値上げ禁止」が定期的に実施されるようになった。)

ルカシェンコの「ディーゼルを樽で売り、栄養剤の袋を積みこむ」という最近の発言は、制裁が効いていることの表れです

チハヌスカヤ事務所には何の期待もしていません
しかし、ベラルーシの先祖と子孫に対し、我が国の独立を維持する義務があることを、誰もが理解し、心に留めておく必要があります
多くのベラルーシ人が、自由と公正な選挙のためには街頭で闘わなければならないこと、抗議行動に出なければならないことを理解するのに、何十年もかかりました
ベラルーシ人は少なくとも2020年にはこれを理解していました
しかし、今は、それだけでは十分ではないのです
武器を手に持ち、自由を守り、ベラルーシを独立国家として維持するための同盟者を求める準備が必要です

-武力でベラルーシの独立を守る必要があるということですね

人々が武器を持たず、事実上、今日の陸軍と特務機関はすべてルカシェンコの独裁政権とロシアの占領者の側にいる状況で、どうすればいいのでしょうか

第一に、この行動が必要かつ不可避であることを理解する必要があります
非暴力的な行動では不十分です

第二に、ベラルーシの武装組織を作るために組織的な努力をすることです
私たちは、ウクライナで軍事組織の創設に従事したベラルーシ男性、ベラルーシ人の英雄の存在を知りました
同盟国を探す必要があります、ためらってはいけません
ウクライナ人が自国を守る権利を持つように、私たちベラルーシ人も同じことを要求しなければいけません

第三に、ルカシェンコ政権に対する制裁が解除されることがないよう、あらゆる手段を尽くさなければいけません
これほど厳しい制裁を受けながら、1000万人(ベラルーシの人口)を養わなければならいような縄張りを維持する理由は、プーチンには本当は無いのです

第四に、海外にいるベラルーシ人との連帯と、ベラルーシの独立を守るために、いつかは国に戻るという何万人もの人々の覚悟です
まあ、法執行機関にいる何万人ものベラルーシ人にとっても、反対派と戦うことと、侵略国の側で発言し、自分の国と直接戦うことは全く別のことだと思います
ベラルーシ人の精神状態は、すでに変わってきています
今では、海外に出た退役軍人や特殊部隊の将校たちが、さまざまな国で(反ルカシェンコの)ベラルーシ部隊に参加しているのを見ています

-制裁とウクライナでの露軍の敗北は、ベラルーシ軍の傾向にどのような影響を与えるのでしょうか

ウクライナでのロシア軍の精鋭部隊の敗北は、ベラルーシ軍指導部に非常に強烈な印象を与えました
かつて、ロシアの「スーパーランボー」たちが、たとえばマリジナ・ホルカやブレストに演習に来たとき、ベラルーシ人は彼らを賞賛の目で見ていました
リビア、シリア、チェチェンを経て、高度な武器や装備を持っていたからです

マリージナ・ホルカ:ベラルーシの都市

ブレスト:ベラルーシの都市

しかし、突然、これらの部隊がたった1ヶ月で完全に破壊されたのです
特殊部隊だけでなく、空挺部隊全般の主力部隊がウクライナ軍に叩き潰されたのです
このことは、すでにベラルーシ共和国の軍事指導者の行動に影響を及ぼしています

(つづく)


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