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この戦争は、どう始まったか -Wikipedia編集者(3)

10月19日 ロシア独立系メディア rusmonitor:(3,884 文字)

- ウィキペディアの編集者は、自分たちを守るために、いくつかの回避策を見つけようとしました

記事のブロッキングに対処するために、特別なバナーを貼られました
記事公開当初は、「バナーを貼ってから、初日以上に記事が読まれるようになった」とおっしゃっていましたね
1日あたり87万人、総計500万人近くです
ロシア語版ウィキペディアの中で最も人気のある記事になりました
その他にも何か対策をしましたか?

3月2日までのアクセス数の変化

- 私は、仲裁委員会の委員を務めています
仲裁委員会は6名で構成されており、意思決定を行い、セクション全体を支援することができます
ウィキペディアは集団的なプロジェクトであり、仲裁委員会も合議制であり、決定は全委員による議論で出します
委員会内での議論は誰も漏らしませんが、すでに公開されていることは話題にすることができます
ロシア語版ウィキペディアのセクションの編集者の、そのほとんどが市民権のある国家が戦争を行っているという、特異な状況下で活動する最初の委員会になりました
そして、この人たちに影響を与える決断をしなければなりませんでした

第一に、強制調停の対象となる十数個のトピックがありました
このような、議論を呼ぶテーマについては、中立性を保つ手助けをするメディエーターと呼ばれる人たちがいます
例えば、アルメニア・アゼルバイジャン紛争、バシキル・タタール問題、ダゲスタン問題、非学術主義、無神論、宗教、LGBT、そして、ウクライナのトピックなどにメディエーターがいます

ウクライナ情勢が深刻化し、メディエーターとして積極的に参加する人が少なくなったことを背景に、5回以上の経験のあるアービトレーター(裁定者)で、管理者権限を持ち、ロシア人でもウクライナ人でもない人に一時的な調停権限を付与しました

第二に、Roskomnadzorからの警告により、メディアはウクライナ戦争をテーマとした様々な情報への言及を禁止されたため、この検閲機関の影響を受けているメディアを引用元として利用することを制限しました
Roskomnadzorが管理しているメディアは、ロシアの公式見解またはロシア側の出来事を紹介するためにのみ、参照元を表示する形でのみ利用することを認めています

三つ目は、国家権力による投稿者への圧力の可能性があるため、あるロシア人編集者の「チェックユーザー」フラグを一時的に外すことにしました
彼は、ロシア当局がウィキペディア編集者として、プロバイダーからIPアドレスを強制的に入手した唯一の人物です
「チェックユーザー」とは、どのIPアドレスがどのニックネームの後ろに隠されているかを確認できる高度な権限を持つメンバーのフラグです
彼自身は完全な誠実さを示していました
この決断は、彼の誠実さとは無関係で、ただ彼を守るために行いました

そして四つ目は、実際にメディアのブロッキングが始まり、ウィキペディア自体もブロッキングされる可能性が高いということで、ご指摘された、バナーを掲載することにしました
「ウクライナ侵攻の記事を理由に、ウィキペディアへのアクセスがロシアで遮断される可能性があります。そのとき、どうするべきか。」
このバナーは、最初の一行は侵略記事へ、次の一行は記事がブロックされた場合の対処法へとリンクされています

ウクライナ侵攻の記事を理由に、ウィキペディアへのアクセスがロシアで遮断される可能性があります。そのとき、どうするべきか。

もしプーチンや、プーチンと同じような考えを持つ人々がウィキペディアをブロックしたくなったなら、静かにそうすることでしょう
そこで、トップページにバナーを貼って、閉鎖の可能性を知らせることが非常に重要でした
そして、ブロッキングされる前にこれを行うことが重要でした
なぜなら、人々がこの情報を読み、保存する必要があるからです
ウィキペディアではVPNの利用が禁止されており、VPNからの接続はブロックされるため、ブロッキングフラグが出された場合の準備を整えたのです
ウィキペディアがブロックされた場合は、ブロックフラグを配った全員に、一時的にVPNの使用を許可することになります
ロシアではVPNを禁止しようとしているという話も聞きますが、それはなかなか難しいでしょうね

- 個々の記事をブロックすることは、ウィキペディア全体をブロックすることになるので、できない、と考えてよいでしょうか?

- (ロシアでは、)ウィキペディアは10年前から禁止サイトとして登録されているのです
Roskomnadzorにできることは、ウィキペディアがロシアにアクセスするのをブロックすることだけです
そして、ロシアにとって自国という概念は、今日はウクライナのある地域を占領し、明日はトランスニストリアを占領するかもしれない、といった具合に広がっています

2016年、プーチンはこう言っています
「ロシアの国境に終わりは無い」
だから、他の国から(注:プーチンの言う「ロシア」から)ウィキペディアへアクセスするのをブロックすることはできません
ロシアのブロッキングは、経験の浅いユーザーだけが対象で、そうではないユーザーはそのブロッキングを回避することができます

2015年8月、Roskomnadzorはウィキペディア運営に対して、アストラハン地方判事命令で、「キャラス(麻薬)」に関する記事の削除を正式に要求しました

これはロシア政府のブロッキング後の最初の事件として知られているものです
インターネット上で何かを隠そうとすると、隠そうとしているものがより有名になってしまうという、ストライサンド効果が働きました

ロシア語版ウィキペディアの記事「キャラス(麻薬)」はインターネット・サービス・プロバイダーによってブロックされました
しかし、ウィキペディアはSCPプロトコルで動作しているため、転送された全てのスクリプトが読みこめないように修正されるだけで、プロバイダーは個々のページをブロックすることはできません
特定の記事をブロックしようとして、ロシアでは、ウィキペディアの全ての記事をブロックすることになりました
何を馬鹿なことを、と思ったのか、翌日、ロシアの国会議員たちは「条文は変わっていないが、違反はない」と書いてきて、ブロッキングは解除されました

もしRoskomnadzorがウィキペディアをブロックしたいのであれば、静かにそうするでしょう
ーたぶん、すぐにそうなるでしょう
そうならないように、より多くの人が真実に触れることができるようにしたいですね
しかし、ロシアは、独自の内部インターネットを構築した中国のような道を歩むのかもしれません

- ロシア語のウィキペディアがブロックされたら、ロシアではアクセスできなくなるのでしょうか
それとも、その部分は世界中どこでもブロックされるのでしょうか?

-ウィキペディアのすべてのセクションはwikipedia.orgの中にあり、無料の電子百科事典データは米国に帰属しています
そして、ロシアでウィキペディアの記事や全体をブロックすることは、ロシア国内の情報市場に規制をかけることになります
したがって、ウィキペディアのロシア語版セグメントは、他国のユーザーとは異なり、ロシアだけで見ることができなくなります

また、ロシア語のウィキペディアは、ロシアの領土内の人だけによって編集されているわけではありません
ウクライナ、ドイツ、アメリカ、イスラエルに多くの編集者が住んでおり、「ビューロクラット」(コミュニティの全参加者たちの投票決定で管理フラグを与えられた人々)もその中に含まれています

Roskomnadzorの様々な人々が、非営利組織がウィキペディアを運営していると思ってWikimedia.ruと話をしようとしても、それは無駄なことなのです
彼らは違うことをしているのです、つまり、ウィキペディアの利用を広めようとしているだけなのです
しかし、残念ながら、この組織、Roskomnadzorの人たちは、今見る限り、ロシアの「党是」に固執しています
私の好みじゃありませんね

重要なのは、Roskomnadzorはウィキペディアに対して何の影響力も持たないということです
ウィキペディアが、例えばRoskomnadzorの要請に応じていくつかの記事を削除するかどうかは、ロシア語ウィキペディアコミュニティ全体(ロシア人はそのうち50%以下)によって決定されるものなのです
そして、これまでのところ、人々が検閲に屈するべきだと判断するようなことは起きていません
今は戦争中であり、ロシアの事例が模範的な事例だとは言い切れません
しかし、もしこれがアメリカのような他の国で起こったとしても、同じ反応が起こるでしょう

ロシアでは、ロシアで活動し、一定の影響力を持つ企業はすべてロシアに事務所を置くべきという考え方があります
実際に、誰が来て、誰が命令し、誰が罰金を科し、脅迫をするかは決まっているのです
なぜこれまでウィキペディアがロシアに事務所を置かなかったのか?
なぜなら、ロシアの法律は、少なくとも今のところ、営利を目的とする組織にしか適用されていないからです
そして、ウィキペディアは非営利団体です

(つづく)

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