ロシアの愛国教育(3)ユナルミヤ
世代戦争:ロシアの軍事化された子供たち
2020年6月16日 (3,047 文字)
プロパガンダ、特別訓練、体系的な教育アプローチを通じ、若いロシア人たちはロシア政府の攻撃政策の一部になりつつある
「戦争・・・戦争は決して変わらない」、有名なビデオゲームシリーズの使い古されたこの言葉には、残念ながら今でも真実味がある
新しい軍事手段や軍備、理論的なアプローチはあっても、戦争の本質とその残虐性は不変なのだ
現代においても、ロシアが戦争行為と地政学的な欲望を追求し続け、社会の最も弱い部分である子どもたちに影響を与え続けていることは、非常に残念なことである
「子ども兵士」という言葉は、20世紀後半のアフリカでの紛争のイメージを呼び起こす
最近公開された映画「Beasts of No Nation」のシーンを思い浮かべる人もいるかもしれない
しかし、現実に、ここ数年のロシア連邦の社会政策では、最も若い世代を軍事システムの一部にするための準備が組み込まれている
プロパガンダ、特別訓練、体系的な教育アプローチを通じ、ロシアの若者たちはロシア政府の攻撃政策の一部となりつつあるのだ
システムの概要
ロシア政府は、主に教育制度を通じて子供たちに働きかけている
教育省から始まり、田舎の小さな学校に至るまで、いわゆる「愛国心教育」が幼い頃から行われている
愛国教育は、軍事史に関連する特定の日を祝うこと、軍事に関するイベントを準備すること、さまざまな軍事的スポーツ活動に参加することを中心とした追加授業や課外活動を通じて行われるのが一般的である
ほとんどの場合、このような努力は地元の陸軍関係者の後援の下に行われている
このような課外活動は、ほとんどの人々には関係ない、あるいは注目に値しないと思われるかもしれない
男の子なら誰でも銃や戦史など「男の子のもの」に魅了されますからね?
しかし、これらのプログラムはプロパガンダの氷山の一角に過ぎない
「愛国心教育」を担う最大かつ最も悪名高い組織が「ユナルミア」である
《Юнармия》 はロシア語で「若い」(юная)と「軍隊」(армия)を混ぜた造語である
国防省が主導する特定プロジェクトである
アイデアはショイグ大臣自身から出たもので、ショイグはプログラムの成功に強い関心を寄せている
2016年9月に開始されたこのプロジェクトは、軍国主義的精神、恒常的な戦術訓練、特定の思考パターンを目指す思想・政治教育など、ヒトラー・ユーゲントと不気味なほど似た仕組みになっている
このプログラムのウェブサイトは、子供と若者の軍事的愛国社会運動であると誇らしげに自己宣伝している
軍事的組織への特別な配慮は、アメリカのボーイスカウトやウクライナのプラストといった青年組織とユナルミヤが異なる点である
スカウトやプラストでは、若者の心と体を鍛える一環として、ある程度の軍国主義を容認している
問題は、そのような軍国主義が、ユナルミヤでは考え方の中心に置かれる場合である
子供やティーンエイジャーは最大利益主義的(注:自分が英雄になれると夢見る心)な傾向があり、その傾向を利用し、魅力的な形で提案される絶え間ない戦争の世界に「飛び込む」ように仕向けているのである
ユナルミアは、2016年以降、ロシアの若者の日常生活の中で目に見える形で存在するようになった
現在、85の連邦国家の各地域に数百の「本部」を持ち、おびただしい数の地方支部がある
さらに、子供たちと軍隊のコミュニティとの社会的・実践的な親和を図るユナルミヤの活動を促進するため、一連の補助組織(主に地元のスポーツクラブや軍隊をベースとした組織)が設立された
このような組織が存在することが真の問題ではない
真の脅威を特定するには、その根底にある論理を検証することが重要である
この種の「教育」と訓練は、戦争と戦争関連のテーマを重要な社会的・文化的機関であると見なしている、特定の考え方に基づいて行われる
このような組織で紹介される、その他の活動や研究分野は、戦争に関する物語を補足するものに過ぎない
このような戦争中心主義は、若者自身の夢や考え方に選択肢を与えないだけでなく、ロシア当局のさらなる軍事的行動を正当化する
ロシアの軍事的行動が、ロシア国民にとって容認できるものであり、国民の同意という全体的な認識において、いくらか民主的なものにさえなる
この種の「教育」と訓練の結果として生じる考え方と許容性が、真の問題の所在である
占領地におけるロシアの活動
残念ながら、子どもの軍事教育や軍国主義といった社会的な「新しさ」が、ロシアの戦車や little green men と並んで一般化し始めている
ロシア国内外の人権活動家は、いわゆるドネツク人民共和国(DPR)やルハンスク人民共和国(LPR)の領土においても、同様の社会変容が起きていることを指摘している
little green men:2014年のドンバス紛争においてウクライナ領土で活動したロシア軍の部隊。
この恐ろしいイメージは、ヨーロッパの現実とはかけ離れた世界のもに思える
しかし、子供の強制使用は、朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦のテロ指導者に限ったことではない
より「文明的」な組織であっても、自分たちの軍事的利益のために安い労働力を使うことに関心を持っているのである
現在でも、悪名高い青年部隊のちょっとした実用化を見つけることはできる
ハリコフ人権保護グループによると、ユナルミアのクリミア支部のいくつかは、ウクライナと西側に対するロシアの情報戦に直接関与している
十代の若者たちが、ロシアの「平和的政治と文明的使命」を賛美する情報資料を作成するために特別な訓練を受けている
彼らはSNS上の反対派の情報チャンネルやナラティブを打ち消し、有耶無耶にすることを任務としている
地政学的な影響
これらのプログラムは、プーチンの支配が終わった後も、不法な征服と国際法違反が継続することを示している
いわゆる 「ロシア世界」を構築するための組織的なアプローチの結果である
多くの実証主義者は、2014年以降のロシア連邦の異常な政治は、プーチン体制の姿勢の結果であると考えている
しかし、ロシア帝国の伝統の思想と、いわゆる「ロシア世界」のより現代的な承認によって育てられたロシアの若い世代は、こうした攻撃的な政治を捨てることはないだろう
だからこそ、人権への懸念に加え、こうした「教育」は危険なのである
それは、いつの日か民主主義世界を吹き飛ばす社会的時限爆弾なのである
ロシアのメディアは「我々の最高の予備軍」、「我々の軍隊の未来」、「我々の新しい武装した盾 」というスローガンを喧伝している
彼らの喧伝する物語は、戦車や飛行機などの戦争装備ではなく、「子供たち」であることを忘れてはならない
ロシアの指導者は、若い世代を「帝国」の境界線を拡大することだけを目的とした戦争好きな国民に変身させることを望んでいる
しかし、歴史の論理は実に皮肉なもので、戦争によって築かれた社会が長く存続し、その勝利を見た例はほとんどないのである
戦争は、私たちの社会と文明全体にとって本当に無くならないが、それが社会生活の中心に置かれるとき、私たちは悲劇と失望を覚悟しなければならないのだ
(終わり)
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