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この戦争は、どう始まったか

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ロシアのウクライナ戦争の当事者となった人々のオムニバス
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#オレクサンドル・ブレウス

この戦争は、どう始まったか -Index

順番に読み進めてもらえれば、この戦争について十分な理解を得られるように配置しました 戦争が始まったとき、どのような状況になり、どんな理由で、どう行動したのか 何が生死を分けるのか 様々な立場の人たちの、それぞれの背景と行動、そしてその結果を知ることは、いつか戦争の当事者となることがあれば、必ず役に立つと思います 戦争が始まる直前、直後の判断は最も重要です 開戦直後を切り抜けることができれば、貴方と貴方の大事な人たちが無事に生き残る可能性は大幅に高まるでしょう そして、何をしな

この戦争は、どう始まったか -オレクサンドル・ブレウス(1)

(4,523 文字) ウクライナでは戦争犯罪の疑いが5万件あると言われている そのうちの一つについて調べました 道端で死んだその男の話を初めて聞いたとき、私はその男の名前を知らなかった その話は、ロシアがウクライナに侵攻開始して数日のうちに行われた、戦争犯罪の可能性のある話の一つに過ぎなかったのだ ロシア兵に殺された被害者であるウクライナ人は、ノヴァ・バサンと呼ばれる地の付近で、爆破された車の側に放置されていたという 最初にこの男の話が目についたのは、違いがあったからだ

この戦争は、どう始まったか -オレクサンドル・ブレウス(2)

(4,332 文字) ボブロビッチャの罠 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した ユリアをキーウ郊外に残し、オレクサンドルは愛犬クリフォードとともに、幼い頃住んでいたボブロビッチャに向かった クリフォードはユリアの犬と仲が悪かった そこで、オレクサンドルの計画は、クリフォードを置いてすぐにキーウに戻り(車で2時間)、ユリアと妹をウクライナ西部へ避難させ、最終的には国外へ脱出させるというものだった しかし、突然、数日間のキーウ夜間外出禁止令が出されたため、実質的にボブ

この戦争は、どう始まったか -オレクサンドル・ブレウス(3)

放置されたオレクサンドルさんの遺体 オレクサンドルが殺された2日後、自転車に乗っていた女性、テティアナ・バリショベツは現場に戻ってきた 彼女は道路に横たわるオレクサンドルさんの遺体を思い、耐えられなかったのだ しかし、彼女の知らない誰かが先にそこに来ていた オレクサンドルさんの遺体には薄い布がかけられ、それを固定するためのレンガがいくつか置かれていたという 彼女はその記憶にとらわれている 「頭から離れないんです、だって......仕事の行き帰りのたびに見ているんです」