ルームシェアしてた変なドイツ人の話をする

こんなことを書く

ドイツに住んでた頃のシェアフラットメイトの話。
彼がヤバめの人だった話。
当時を振り返ってみると。

シェアフラットメイトの話

ドイツではシェアフラットは普通である。シェアフラットことをドイツ語でWGと呼び、とても一般的なアパート形態。

さて、ぼくはあるWGに引っ越した。そのWGは駅から近く、地区は比較的に移民が多く、文化的に外国人のぼくには馴染みやすい地区。建物自体は10年程度しか経っておらず、比較的に新しい。値段はWG相場としては若干高めであった。が、建物の新しさを考えると普通とも言えた。ぼくは結局、ここに1年半すんだ。

WGは2人住みであり、もうひとりは30代なかばのドイツ人だった。彼もまたAI、とくにデータエンジニアリングの仕事をしているということで、割と仲良くなれるかなぁ、と思ったものだ。しかし、結論から言うと、彼はヤバめの性格だった。彼の話を友人のドイツ人たちにしても、「その人、大丈夫??」と眉をひそめてたものだ。

そんな彼の話を振り返って書いてみようと思う。

第一形態: まぁ普通じゃね?

ぼくがWGに住み始めた当初、彼は離れた街で仕事しており、週末だけWGに帰ってくるという生活パターンをしていた。

彼は料理を趣味にしており、週末にホームパーティを開いていろんな人を呼んでいた。しかし、どうも買いに行く食料の個数とやってくる人の人数が合わない。来客数がいつも少なすぎるのだ。ある日、彼に聞いてみると「え?みんな初対面だよ。Facebookのグループに投稿して呼んでる。来るって返事しても来ない人がいるんだよね」。「お前。。それ、大丈夫かよ?」とぼくははじめた思ったものだ。

他には週末にはよく「ナンパ行こうぜ」と誘われて、ナイトクラブに一緒に踊りにいったものだ。まだドイツ語が拙かったぼくは当然にナンパなんて上手くできるわけもなく[1]、彼の行動を眺めた。すると、彼は左右にユラユラ揺れてるだけだった。「マジかよ!ぼくの方がまだマシに踊れるぞ」と突っ込みたくなったものだ。

第二形態: うん・・・?なんか変?

ある日、彼は解雇されてしまった。正確にいうと、彼は自主退職に追い込まれた。

これは残念ながら、彼の上司が極悪非道な人間だったようだ。したがって、クビは彼に非があるとは言いづらい。後日、彼の同僚が恒例のホームパーティに来た時に教えてくれた。いわく「プロジェクトの受注が減ったので、人員整理をしなくちゃいけなくなった。会社都合で解雇すると、会社に罰金があるので [2]、都合よさそうな従業員を言葉責めして自主退職させてる」。

彼の言葉を聞く限りでは、その極悪非道上司は密室でねっちり人格批判をし続けたそうだ。彼は感情が激昂しやすく、また、激昂すると、どもる癖があった。そういうところも批判されて、ものすごい激昂した彼は退職文書にサインしてしまったそうだ。
以上はとても不憫な話である。

そうこうしてるうちにCovidが到来し、ぼくも彼もほぼ日中ずっと家に居ることになった。彼の生活リズムはというと、朝おきては、ずっとスマホゲーム(無料)をしては、Youtubeを見て、ときどき散歩に出かける・・・そんな生活だった。

この頃から食事を一緒にすることが多くなったので、以前よりも会話が増えた。そして会話が増えるたびに、彼のおかしな性格にぼくは少しづつ気が付きはじめてきた。

ここが変だよ1: 強い思い込みと認めない姿勢

(根拠のない思い込みはドイツ人によく見られる現象なので、彼に限った話ではない。と注釈)
彼は思い込みが強く、また、間違いを認めない傾向が強かった。

ぼくがいまだに覚えてる話題に「日本マクドナルド」がある。「日本ではね、マクドナルドは米国の直営ではないんだよ。」とぼくが話すと「いや、そんなはずはない。マクドナルドは世界的に直営店舗だ」と主張してた。ぼくは以前マクドナルドでバイトしており、契約書は「日本マクドナルド」だったので、その話をしても信じない。最後には彼はWikipediaを調べはじめた。しかし、黙って何も言わなくなってしまったので、変だなぁ。と思っていた。

後日、Wikipediaでドイツのマクドナルドを調べてみると、ドイツ法人だった。lol
たぶん、彼はWikipediaで日本マクドナルドかドイツのマクドナルドの法人を知って、自分の間違いを知ったのだろう。でも、認めてしまっては都合が悪いので、黙ることにしたのだと、ぼくはそう解釈した。

ここが変だよ2: とりあえず否定

彼はいろんなことにおいて、否定の評価を口にしがちだった。こういうとこはネガティブ日本人に似ているとも言えるかもしれない。

例えば・・・恒例のホームパーティで、来客者の一人が「新しいネコをもらってきた」という話をした時。彼の最初の反応は「君のところはもう2匹もいるのだから、これ以上は必要ないだろう」だった。

ここが変だよ3:意思を言わない

これはドイツ人には珍しい現象。なぜならドイツ人の意見主張はだいたい「私がしたいから、そうするのだ」という自信あふれる姿勢が根拠になってる。しかし、彼の場合、「意思を言うと死んじゃう病」なのかと思うくらい「ぼくはこうしたい」と言わなかった。

例えば、ぼくがちょっと変な辛いチョリソーを買ってきて、調理してた時の話。彼はやってくると「このチョリソーはもっとスパイスを入れた方がいい」と言う。ぼくはチョリソーそのものの味に興味があったので、必要ないと断った。それでも彼はしつこいくらいにスパイスを主張する。ぼくが「わかった!チョリソー食べたいの?それなら半分あげるから別々に調理しよう!」と提案する。すると、彼は「違う。チョリソーの美味しい食べ方が・・・」とまぁ、こんな様子だ。

第三形態: あ、これヤバイ人かも!

そうこうしてるうちにCovidによるロックダウンは長引く。彼はずっと無職のままだったが、就職活動は続けていた。この時期、インタビューはずっとビデオインタビューだったので、ぼくは彼のインタビューの様子を知ることができた。
残念ながら外国人のぼくから見ても「それはナイだろ・・・」と思えるインタビューばかりだった。例えば・・・

  • 話が食い違うと激高して、吃りがち。

  • 声がでかい。どっちかというと叫びがちの声。

  • 言ってることがよくわからない。結局「何したの?」 [3]

インタビューしてないときは、Youtubeでニュース放映をみて、何か叫んでる始末。友人に電話をかけてはずっと愚痴を言ってばかりいる始末。

ぼくも家にいると、なんだか嫌な気分になってきたので、日中はシェアオフィスをかりて、そこで仕事してた。さらには、この頃から徐々に旅行が制限付きで解除されはじめたので、ぼくはベルギーやらポルトガルやらに旅行を楽しんでた。

決定打:こいつはダメだ

ぼくが1週間のポルトガル旅行に行く前の話だ。BBQをして大量の海老の殻ゴミが発生した。
そして1週間後、ぼくが旅行から帰ってみると・・・キッチンのゴミ箱には・・・ウジが大量発生していた。
彼によると、1週間ずっと家にいたらしい。なぜウジに気が付かなかったのか・・・。
これはもう一緒に住めるレベルを超えていると判断し、ぼくは引っ越すことにした。
ちょうど、フランスで新しい仕事の機会が来ていたので、ドイツからフランスへと引っ越したのだった。

当時を振り返ってみると

ヤバイ人だったことに疑いはない。パーティによく来てた来客者(いまでは友だち)は「なぜか」ぼくだけを遊びに誘ってくれるようになった。まぁ、そういうことなのだろう。

思うに彼は劣等感とプライドの塊なのではないかと思う。
劣等感の根拠は、彼の家族は医者の家族で、兄弟たちも医者、というところに起因してると思う。詳しい名前は避けるが、兄弟たちはエリート級の機関で仕事しており、すでに結婚もしている。彼だけは医者にならなかった。そして、結婚どころか彼女もいない。彼の生い立ちの話を聞くと、どうも家父長制が強そうな家の雰囲気を感じた。その時は吃っててよくわからなかったのだが。それならば、劣等感を感じてても不思議ではない。

それでも、彼も仕事をしており、収入がよかったことでプライドを保てていたのだろう。それがいきなり人格否定からの退職に追い込まれてしまった。プライドに傷が付く。さらに、就職活動がうまくいかないことでさらに苛立ったのだろう。。。これは日本人でも就職活動でプライド高い人が失敗するのに似ている。

彼のコミュニケーションの「ん?変??」というところもおそらくプライドの高さに起因しているのだろう。

教訓

彼のような人は日本にもいるだろう。というか、ぼくは日本でも似た人に会ったことはある。よく聞く話だが、ドイツも文化的には少し日本に似たところはありそうだ。

劣等感とプライドというのは、自分で意識すればコントロールできるものだ。問題は、劣等感を意識できないまま、行動を乗っ取られてしまうことだろう。こうなると、言動はなんだか嫌らしい言動になってしまう。人間関係すら悪化させてしまう。

ぼくもいつ行動を無意識の劣等感に呑まれるかわかったものではない。ときどき、彼のことを思い出しては、自分の意識を再確認しようと思う。



[1] 外国人なんだから、英語でいいのに。。。といまのぼくは思う。しかし、当時のぼくは頑なにドイツ語を話そうとしていたのだ。
[2] ドイツの労働法は日本以上に厳しい。
[3] まぁ、ぼくのドイツ語力が足りなかったことは認める。ただし、それ以上に彼の方言と発音の悪さが上回ってたことは影響してそう。


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