豪州備忘録29日目
今日がオーストラリア最後の日曜日である。残りの留学期間は一週間を切ったのでこれからどんどんオーストラリア最後の〇〇が増えていくのだろう。でも人生先は長いしオーストラリアに行かないとも限らないのでいちいち感慨に浸らないように努めている。まあとにかく最後の週末をどう過ごすかというのはけっこう私にとって重大な問題だった。特に何もせずのんびり過ごすもよしどこかに出かけるもよしだが、昨日ブリスベンからゴールドコーストまでなかなかの移動をしたので私はいささか疲れすぎていた。それで結局シティから少し外れた公園の周りを散歩することにした。
シティのはずれに大きめの公園があるからそこで友人たちとサッカーをしたり本を読んだりするつもりだった。なんとなくのどかでこういう生活に憧れていたのだが、いざそうなってみるとバイトもせず消費だけを繰り返す生活というのは逆に不健全な気もする。お金だけはどうしても消えていくから心のどこかで安心できないでいる。
大きな公園に着くと近くで大きな音楽が流れているのが聞こえた。音楽の方に向かってみると広場でフェスティバルが行われていた。すっかり忘れていたが、今月の23日まではブリスベンフェスティバル開催中でブリスベンの各地で催し物があるのだ。今回出くわしたのは「MOSAIC」という名前のフェスティバルで多文化交流をテーマにしているようだった。広場の中心にステージがあり、その周囲を囲むように屋台がいくつか出店していた。私が見た時にはちょうどサンバがステージの前で披露されていた。
ステージではアフリカのダンスとかウクライナの歌とかがあって盛り上がっていた。屋台でもアフガニスタンやチベット料理などちょっとヤバそうな地域の食事があって面白かった。人はまあまあの賑わいで、椅子はほとんど埋まっていてテーブル席もあったがいくつかは図々しいおじさんが一人で占拠していた。なのでしばらくは立ってステージを見ていた。テーブルが空いたので急いでテーブルに着くて、せっかくなので屋台の料理を食べてみることにした。
いろいろ珍しい料理があったが普段なら絶対食べないであろうアフガニスタンのバローニという料理を選んだ。バローニはネギやらソースやらを小麦後の薄い皮で包んでパリパリに焼いた料理である。屋台のおじさんに「バローニひとつちょうだい。」といったらおじさんに「あんた日本人かい?」と聞かれた。それで日本の話で盛り上がって料理を受け取ろうとしたところ「君はナイスガイだからこれタダでいいよ。」言われた。ほんとに。「マジで?」と聞いても「OK!OK!」と言ってくれたので私はおじさんと固い握手を交わして店を後にした。ありがとうおじさん。
そのあとお金が浮いたのでドリンク売り場でビールを買った。公共の場での飲酒はオーストラリアで禁止されているためノンアルコールビールだった。そのとき片手には熱々のバローニを持っていて、それを見た通りすがりのお姉さんに「それどこで買ったの?!私も食べたいんだけど!」と話しかけられた。みんなフェスティバルでテンションが上がっているのか今日はけっこう話しかけられる。場所を説明して、テーブルに戻った。
ステージ企画は佳境になり、ラッパーが軽快なダンスで場を盛り上げたり、素敵なジャズ集団がラストを飾ったりしていた。たまたま出会ったフェスティバルだったが思ったより楽しくてラッキーだった。こういう日を人生の最後に迎えたいと思った。