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少しきけんなことをして、じぶんで安心を掴まえる
大人になった自分に、たまにはお布団から抜け出して木に登って寝てみよう!というようなことを思わせる。
この絵本は私が幼いころに母に読んでもらった本だ。
実家の引っ越しの時に処分してしまったので大人になってなんとかネットで探し出し購入した。思い入れの強い絵本。
マーシャよるのおさんぽはまだロシアがソ連だったころの絵本。
1980年代に『ソビエトの子どもの本』シリーズとして出版されていたようだ。現在市場にはほとんど出回っていない。
わたしは当時眠ることが苦手な子どもで、いつも夜が怖かった。
そんなわたしにとってなんとなく身近で、大人になってからもふと思い出す絵本といえばこの本だった。
なかなか寝付けない女の子マーシャが、夜に抜け出して動物たちの寝床で寝ようとするけれどやっぱり自分のお布団が一番いいわ、というおはなし。
この絵本で幼い私の心をわしづかみにしたのが比喩表現と豊かな色使いだった。
冒頭でマーシャは自分の気持ちを
《あついような、むねが くるしいような きもち》
と表現し、枕を《ふとっちょの ぶくぶくの いやなまくら》、毛布を《おもくて ちくちくする》という。
とげとげしい言葉遣いと、眠れないことへのイライラや少女のわがままっぷりを存分に感じて共感する。
しかしひと通りの冒険が済んだ後には、
さあ ベッドに いきましょう、あったかい もうふの なかへ・・・・あれは、ちっとも ちくちくなんか しないわ、それどころか、とっても いいもうふ。まくらだって やわらかい ー
ぬきあし さしあし、そーっと、じぶんの へやへ はいりました。ゆかから、もうふをひろいあげ、まくらを もとの ばしょにおいて、やわらかな じぶんのベッドに もぐりこみました。
という表現があり、この本は締めくくられる。
いまでも眠れない夜にはこの表現を思い出すと、暑苦しい布団がとても愛おしい寝具に早変わりするので不思議だ。
綺麗な色とふわふわのやわらかい寝具は眺めているとうとうとしてしまう、不思議な絵本。
広く見渡してみると自分の今いる場所は思うより悪くないと感じることもある。
昔も今もわたしが変わらず好きなもの、大切にしたいことに気づかせてくれるのは絵本だ。
転ばぬ先の杖が数多にある時代。
何をするにもHow toがあって、SNSやYouTubeでなんでも教えてくれる。家具を買うにも料理を作るにも。
失敗しないように先を行く人が教授してくれる世の中は効率的で、みんなで何かを進めていくようなそんな優しさも感じる。
でもその一方でみんなが同じ場所に行きつく退屈さと、どう切り分けていくのかも大事だ。
たまには ”とまり木のうえでめんどりとおんどりにはさまれて眠る” のも悪くないのかもしれない。
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