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失敗は悪くない 失敗が教えてくれたこと

誰もが仕事をすれば、慣れるまで失敗はつきものです。私も編集部で働いて間もない頃に、大きな失敗を何度もしました。

編集の仕事は企画、取材依頼、取材、執筆、校正と、いろいろあるけれど、中でも私が一番好きだった仕事は「インタビュー取材」でした。

一対一で、どこまで相手の深い言葉を引き出せるか…その緊張感とワクワクする気持ちが、ゾクゾクするほど楽しみだったのです。

他の人には話したことがないような話を、いかに引き出せるかはこちら次第であり、いわば真剣一発勝負の世界。

それだけに、緊張感を持ちつつも、相手をリラックスさせられるくらいの力量がないと、話も堅くなり、だいなしになってしまいます。

…と、今では、こんなことを書いていますが、ものすごい大失敗をおかしたことがありました。

それは、初めて職場の先輩にくっついて、俳優さんのインタビューに行ったときのこと。

先輩の隣でちょこんと座って話を聞いていた私に、いきなり俳優さんが「僕の○○の映画見た?」と、聞いてきたのです。

その方の新作しか見ていなかった私は、「はい」と嘘をつくこともできたのですが、万が一、途中で見てないことがわかってしまっては大変なことになると思い、正直に「申し訳ありません。それは見ていません…」と言うと、「えー?!見てないの?それ、ひどくない?見てよー」と、若干怒りぎみになってしまい、慌てた先輩が、謝りつつも無理やり話をまとめてくれたおかげで、とりあえずその場は丸くおさまりました。

しかし、取材後、先輩からお叱りを受けました。当然のことです。インタビューの基本は、相手が「ここまで自分のことを調べて知ってくれているのか?」と、思わせてこそ、あなたになら…と、いろんな話を誠実にしてくれるものだからです。

それなのに、何にも考えず、先輩の後について行くだけだった私は、本当に情けなく、謝ることしかできませんでした。

それ以降、取材する姿勢が変わり、インタビューが大好きになりました。ところが!

今でも大活躍されている俳優のTさんの待ちに待ったインタビューが行われたときのこと。話の途中でペンのインクが出なくなってしまい、私は急いでデスクに戻りました。

通常、インタビュー時は、テープレコーダーで録音するのですが、私がペンを取りに行ってる間にも、そのテープレコーダーは回っていました。

そして、無事に取材が終わって、テープレコーダーを聞き返してみると…

俳優Tさんが「あー、もう眠いわぁ。眠くなっちゃったから寝ていい?」と、マネージャーに話している声が録音されているてはありませんか。それを聞いて、大ショックを受けました。

私のインタビュー取材が、まるで、つまらない…そう思われていたのかと取れる発言に、ショックを受けたのです。

もちろん、単に寝不足で眠いわぁと言ったのかもしれませんが、面白い取材だったら、そんな発言は出なかったはずだ、、と、深く反省しました。

質問力は記事の内容を大きく左右します。それだけに、事前の準備と自身の人柄、人格を磨くことは欠かせません。

痛い痛い失敗が、私に教えてくれた数々のことを、今も忘れず胸に刻んでいます。

そこから私は、インタビュー前にインタビューする相手の書籍や映画など、あらゆるリサーチを事前に行ってから、具体的な質問内容を考え、相手の引き出しをひとつでも多く引き出す人間力を磨いていこうと、いろんな人に会い、ユーモアの取り入れ方や相づちの打ち方、場の緊張のほぐし方、第一印象や挨拶の仕方などを学びました。

そしてその後、インタビューコラムの担当になり、デスクから「俺に並ぶ記事を書けるようになったな」と、お褒めの言葉をいただいたときの感動は忘れられません。

なにしろ、始めた頃は「まず、インタビュー記事の書き方から学んで。この記事をいくつか読んでみて」と、読むところから始まったわけですから…

失敗は辛いけれど、失敗しなければ学べないこともたくさんあることは事実。失敗があったからこそ、今がある。そう言える日は必ず来ます。

仕事だけでなく、人生においても…

失敗を恐れず、いくつになっても、挑戦することを忘れずにいたい。失敗こそが成長させてくれるから。