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【マンガ業界Newsまとめ】カカオピッコマがフランス撤退、スクエニ他各社決算 など|5/19-153

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンス IMART を主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関係のニュースを、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。
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*:今週は、英語他外国語記事が記事内に散っています。自動翻訳などご利用ください。

カカオのウェブトゥーンをはじめとするコンテンツ子会社であるカカオピッコマが欧州事業を撤退。 欧州進出から約3年後

カカオピッコマが欧州事業から撤退。ヨーロッパでは9月にサービス終了とのこと。IT関係筋からのコメントとして「事業の選択と集中のためではないか?」という見方がでています。筆者のペケートでも、リアクションが沢山ありました。
この件は、海外でもいくつかの論点でニュースになっていました。

タイトル訳:ピッコマフランスの閉鎖は、ウェブトゥーンが国境を越えて地位を確立することが困難であることを反映している

(もう一個あったんですけども、サイトがセキュリティ警告付き記事なので、自己責任で見てくださればと思います。リンクはこちら。

カカオピッコマ自身は、撤退のみを発表したようですが、記事にあるコメントから「選択と集中」という部分を拾うと、好調な日本市場に集中して、欧州は畳むという意思決定と読み取れます。

ここからは完全に私見ですが、これはNAVERの各国ローカルで作家を育成していく姿勢と、電子書店としての強みがあるピッコマの、ビジネススタンスの違いかなと思いました。

NAVERの各国への展開は、基本的にWebtoon投稿サイトを起点にし、新人を1から育成することがセットになっています。日本で言うと作品を作りながら新人賞や持込を受け付ける「漫画雑誌」のスタンスに近い印象です。

これは日本でも同じ姿勢で、LINEマンガインディーズの様々な取組がそれにあたります。事業的に言うと、長期的な赤字を覚悟してクリエイター育成の投資や市場形成から始めるというスタンスですね。(日本以外の海外での姿勢は、日本風の育成というより、投稿起点のインキュベーションというイメージですが)

一方、ピッコマは、日本でも大手電子コミックプラットフォームの中では2016年開始、2017年ブレイクという後発にも関わらず、マンガアプリ(Web含まず)の中では現在トップになっています。

既に成熟しかかっていた、日本の電子コミック市場に対して「待てば無料」という切り札をひっさげて、デジタルハックをかけて猛追したという形です。純粋に、勝負強い「電子書店」という印象です。

それを考えると、NAVERがピッコマ同様撤退することは考えにくいです。逆に、フランスはじめ欧州の電子コミック/Webtoon市場がある程度の規模感となって十分に育った後の再参入でも、巻き返せるという自信がピッコマにはあるんじゃないでしょうか。

当初、未成熟のフランス市場に進出することそのものを、私は意外に感じていて「相当な長期間掘る覚悟」をしてるんだろうなと思ってはいたのですが、今回の判断を見ると、改めてグループ全体で合理的判断をしたんだろうなという印象です。(「あなたの感想ですよね?」「はい、わたしの感想です」)


マンガ・アニメ各社決算

GW明け2週目ということで、今週も各社決算が出ています。

スクウェア・エニックスHDが純利益69.7%減を受けて「改革案」を発表。「量から質」への転換、マルチプラットフォーム、PCローンチなどPCユーザー獲得への各種取り組み、ロンドン開発拠点の機能強化など

スクエニの決算です。ゲームなども含め全体で、売上は3.8%増の3563億4400万円に対して、営利が26.6%減、経常利益で24.1%減、純利で69.7%減とあります。この期もFFを中心に様々なタイトルが出ており、売上は上げているのですが、開発の償却や広告宣伝費が重かったようです。この年度では、一部ゲームの開発中止なんて言う話題もありましたね。このタイミングで中計経営計画の刷新がなされているようです。

話をマンガに特化すると、ちょっと趣が変わります。

2024年3月期 決算説明資料P15より 

出版事業としては300億円超え、増収増益です。
『その着せ替え人形は恋をする』
『地縛少年花子くん』
『薬屋のひとりごと』
がヒットしたとのこと。中でも、小学館と並行連載中の『薬屋のひとりごと』の影響があるようですね。

また、同時に発表された中期経営計画には、『ハガレン』荒川弘さんの新作『黄泉のツガイ』が、今後成長に注力していくIPとしてピックアップされています。

新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)P11より

『黄泉のツガイ』は今既刊7巻ですが、最初から面白くて軌道に乗ってる感じですよね。荒川先生は何本描いても安定して面白いのがホント凄いですね。作品の趣から、アニメ化するとまた跳ねそうです。出版部門としては、「既存の路線のままグローバル展開を行う」とのこと。

決算資料は、こちら。

東映アニメーション通期売上高が過去最高 商品販売や海外配信権が牽引

前年に『ONE PIECE FILM RED』や『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットがあり、心配された今期ですが、売上微増の利益は小幅減にとどまったとのこと。ドラゴンボールのゲーム収入が前期に及ばなかったが、『THE FIRST SLAM DUNK』「ワンピース」のライセンス事業が好調とのこと。

今期(2025年3月期)には『ドラゴンボールDAIMA』がありますね。どうなるか。

日本テレビ24年3月期のアニメ事業売上げ80%増 アンパンマンの中国番販も貢献

第4四半期にスタジオジブリの売上が加わり、「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」のヒット「アンパンマン」の海外番販など、好影響とのこと。

テレビ東京ホールディングス 「アニメ・配信」で営業利益の2/3以上

テレ東は営業利益の2/3をアニメが稼ぐ。
『SPY×FAMILY』配信、『ポケットモンスター』の商品化『NARUTO』の海外配信『ブラッククローバー』ゲーム化など。アニメ売上の海外比率は83%。

ソニーG、 2024年3月期決算は金融分野の大幅減益響き営業益7.2%減の1兆2088億円 ゲーム事業は増収増益を達成

取り立てて、アニメ・マンガ関連の話題はありませんが、映画部門のアニメを起点に、今後もIPビジネスを強化とのこと。めちゃコミの買収などがなれば、ある程度影響がありましょうか。

KADOKAWA通期決算 アニメ・映像は過去最高業績、配信・ライセンスが好調

先週のまとめでも扱ったKADOKAWAですが、アニメーションビジネスジャーナルの数土直志さんのテキストが、さすが良くまとまってます。2025年3月期アニメには『推しの子』のほか、「リゼロ」「このすば」「オーバーロード劇場版」に「トリリオンゲーム」と、IP展開全開という感じですね。


国内News

3月に発表された「BLアワードが2024」の授賞式が、先週開催されました。

長年、BLを追われていた藤本由香里先生もコメントされています。私も参加させていただいたのですが、月並みですけども熱気が凄かったです。10部門各3位までが発表され、1位の方にはコメントの機会があるのですが、Webtoon部門で韓国の作家さんが来日されたことに会場がどよめき、同時に作家さんも受賞を大変喜んでいたことが伝わりました。

授賞式の見せ場が「男性フラメンコショー」ということで、作家・版元・プラットフォームと、女性率9割くらいの会場が大変盛り上がり、主催側もさすが大変良くわかってらっしゃるんだなぁと思いました。往年のアイススケート高橋大輔のショーを見ているような、魅惑的なステージでした。参加者が楽しい良い授賞式だなぁと思いました。これは、呼ばれた方嬉しいでしょうね。特別感がある、良い授賞式でした。


講談社の電子書籍ストア「じぶん書店」が5月でサービス終了とのこと。
同サービスは、メディアドゥセルシスによるシステム提供でした。


Bookliveの個人出版サービス、7年で売上15億円到達とのこと。地道に積み重ねられてきた感がありますね。


とらのあなが、シンガポールの同人イベント参加とのこと。イベント参加は台湾とアメリカに続きですかね。ひとつ前のBooklive同様、個人出版系の動きです。


漫画家協会が、漫画家のお悩み相談フォーム設置とのこと。
個人的にも、この取組に協力したいという業界に精通する弁護士さんの話を聞いていたりしまして、効果的に機能していくことを祈っております。もう数件の問い合わせが入っているとか。


これはなかなかの記事ですね。コナンの興収すごいですねぇ。


毀誉褒貶のクールジャパン機構のこれまでを、経産省のクールジャパン政策課長と、エンタメ学者の中山淳雄さんが振り返るという、これは良く書けたなーという記事です。

ここまで約10年、政府の投資が1400億円、これを呼び水に民間から2900億円が投資されたとのこと。全部で3期投資してますが、結果が出てるのは1期で、数字的にも大分へこんでいるのがわかります。

プラットフォーム系で失敗しながらも、それでも食系の投資でそれなりの成果を出したりしてるんですね。そうなのかぁ。そしてセンタイみたいな継続事業もまだあるんですね。なるほど。


「Culture Weavers」台湾で最も多くのオリジナル漫画作品を商業出版している蓋亞文化編集長、李亞倫さんのインタビューです。

台湾の漫画編集者となると、なかなか見えてこない存在ですが、なるほどこんな方がいらっしゃるのねという記事でした。渋い話も、実情の話も色々です。


良い記事です。マンガ読者に高齢者が増えて行ってるのは、良くも悪くもですよね。


今週のマンガワン編集部動画がめちゃくちゃ面白かったです。
次回へのヒキがすごいです。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

ジャンプTOONの連載情報、紙誌面で紹介されております。『ハイキュー!!』来るんですね。ちなみに、ペケートを引用させていただいてる李ヒョンソクさんは、第1回のジャンプTOONアワードの特別審査員です。

x公式アカウントでは、作品ちら見せと、事前登録案内が開始しています。
アプリDL予約のページまで行くと、開始が5/29となっていました。

海外でもニュースになっており、期待感が伝わります。


株式会社サトクリフがWebtoon初作品です。taskey原作のようですね。


何作か他社原作付きで作品を出しているギークピクチュアズですが、初のオリジナル作品をdブックとLINEマンガで開始とのこと。


先週に引き続き、今週もLINEマンガから国産Webtoonスタジオ関連の話題です。No9を筆頭に、GIGATOON Studio、booklistaSTUDIO、HykeComic、コルクなどの名前が挙がっています。


海外News

libroさんの北米ニュースまとめです。オレンジ社出資のニュースから、翻訳について詳しく書かれていて興味深いです。

ここから何本か、ここで紹介されていた記事を続けます。

CCCがカンボジアで6店舗出店計画とのこと。
総合商社の双日との共同出資とのこと。海外では、紙のマンガが売れていることを考えると、海外好調の紀伊國屋ともども、CCCには期待したいところです。


レイヤー衣装がしっかりしてますね。正規版権なのかしら。


タイトル訳:アニメエキスポに『デリシャス・イン・ダンジョン』の作者九井諒子氏、クローバーワークス代表取締役清水アキラ氏が出演

私も今年はAnimeExpoに行こうと準備中なのですが、米国で九井先生の話を聞けそうで、ラッキーです。『ダンジョン飯』に対するアメリカの反応が楽しみです。


「イカゲーム」の続編?後継?「The 8 Show」(邦名:~極限のマネーショー)とのこと。既にNetFlix公開済みで、見てみようと思いました。


タイトル訳:メタネーションとMEMETOONがグローバルウェブトゥーンおよび短編チャレンジサービスに関するパートナーシップ契約を締結

韓国企業によるWebtoonのNFT&Web3.0系の提携です。インドネシアなどで展開するようですね。結構ハイコンテキストだと思いますが、動向は追いたいところです。


コミコン@プラハ・チェコ

コミコン@テッサロニキ・ギリシャ

コミコン@バルト・リトアニア

各国、色んなコミコンがあります。


AI・画像生成関連

各所で話題になった「GPT-4o」ですが、コミコパが早速導入です。編集者的回答がマグネットコーティングされたみたいな理解で良いでしょうか。

同アル社の動きとしては、MANGA Plus Universeの試行1か月の期間も終了して、良いデータも取れたようで、これから再起動に向けて楽しみですね。


ソニーミュージックがAIに警鐘です。この辺、文化庁の言う所の「享受的か否か」という解釈がどうなるか、ですね。


これはワコムさん、とばっちりで災難でしたね。


こちらは抑えておきたいところですね。


赤松健さんの国会質問動画です。
基本的には、先日の文化庁のAI見解の内容ですが、すべきことをしっかり手順を踏んで進めている安定感が感じられます。(続く「クリエイター支援」もちょっと聞きたい)
政府与党内に送り込まれた、たった一人の業界代表議員として、1期目からかなり手堅くお仕事をされてるんじゃないでしょうか。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

コアミックス社のサイレントマンガオーディション、セルシス・クリスタが協力する形で開催されているページ(英語)


記事のみ紹介


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