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【マンガ業界Newsまとめ】楽天「R-TOON」強力布陣で始動・米国ICv2のWebtoon特集 など|6/18-106

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。

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楽天、デジタルコミック配信サービス「R-TOON」を今秋以降に提供開始- 縦読みデジタルコミックのオリジナル作品をパートナー企業各社と共同制作 -

楽天のWebtoon進出ブランドが「R-TOON」と発表されました。進出自体は既報ですが、今回はブランド名と同時にパートナー企業の発表がありました。「少年画報社」「ストレートエッジ」「ニトロプラス」「トゥーンクラッカー」とのことで、強力な企業がラインナップされています。

「少年画報社」「ストレートエッジ」については、もともと楽天ブックス・koboなどの書籍系での経緯から、「ニトロプラス」についてはアニメ文脈なのでしょう。同時にあのニトロがWebtoonの作品制作を介するという発表も行われているかたちですね。楽天の既存アニメ事業の流れか。

個人的感想ですが、この協力企業のラインナップ、良いお仕事されてるなと感じました。力の入れ具合のみならず、Webtoon進出にあたってのビジネスセンスを感じます。

国内大手ビッグテックがWebtoonに進出と言うことで、フランス語やイタリア語での記事も出ていました。ともに自動翻訳かけてご覧ください。

海外でも注目される動きなのでしょう。


国内News

先に発表されていたジャンプ+の漫画制作サポートAI「コミコパ」ですが、当初予定通り会員制に移行とのこと。そのパスワードを「あいことば」としたそうですね。面白いですね。

そのジャンプ+ですが、海外向けサービス「MANGA Plus」がユーザー獲得のみならず、海外販売でも効果を出しているようで、ジャンプ+連載の1巻新刊の売上のうち3割が日本<海外と、海外の方が売れているケースがあるとのこと。国内外の部数比5:5もジャンプ+に限っては早々に達成がありえるやもとは、一昔前には考えられない状況ですね。

2020年代に入り、特に北米のコミック全体(アメコミ・マンガ含む)については、既に日本の紙単行本を超える市場規模になりつつあるというデータもあり、海外での日本漫画の知名度となると、アニメによるの作品の浸透からジャンプマンガが圧倒的であることを考えると、その辺りが影響を与えているのかもしれません。


そのMANGA Plusの開発をしているLink-U社ですが、決算好調で営業利益2倍弱と言う上方修正をしているようです。

同社では、修正理由について、集英社が運営する3つマンガサービスの統合効果で利用ユーザー数と下記単価が拡大したことに加えて、海外向けの日本コンテンツのローカライズ受注の増加などが主な要因としている。一部サービスの広告費について、同社負担の割合が減ったことも収益の改善につながったという。

https://gamebiz.jp/news/370299

とのことで、上記の「ジャンプ海外売上好調」と、直接的に結びつくは判然としませんが、海外向けのマンガ販売において、出版社のみならず、帯同するシステム関連や販売関連の企業にも恩恵が出つつあるということなのかもしれません。


毎度お馴染み、四半期に一度の不破雷蔵さん漫画雑誌部数動向です。

青年誌の話題は後に譲るとして、
目を引いたのは、ウルトラジャンプの2倍近い伸びでしょうか。2月発売の3月特大号からジョジョシリーズ最新作『ジョジョの奇妙な冒険 Part9 ザ・ジョジョランズ』開始と言うことで、強い影響があったようです。
現在上映中の「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」も好調とのことで、この辺りも多少なりと影響を与えているところでしょうか。

小学館の少女誌「ベツコミ」がキンプリの特集で部数を伸ばしたというのも興味深いです。

関連して、こんな記事も出ておりました。

ビッグコミックオリジナルが僅差とは言え、青年誌でNo1部数を長く誇っていたヤングジャンプの部数を抜いた件についてですね。

元々週刊青年漫画誌最古参のヤングジャンプは、ヒット作品として『キングダム』『テラフォーマーズ』などを抱え根強い人気を誇るマンガ誌です。一方「ビッグコミックオリジナル」は、同じく老舗青年誌ではありますが、超巨大ヒット作を連載するというよりは、単行本より雑誌が売れる比較的高年齢向けの媒体でした。もともとは雑誌で読まれる特徴を持つタイプの媒体とも言えると思います。

記事中に2008年の青年誌ランキングありますが、この上位にいる「ヤンマガ」は2019年に「ヤンマガWeb」を開始、「ヤンジャン」は10年ほど前に「となりのヤングジャンプ」5年ほど前に、マンガアプリ「ヤンジャン!」を開始。媒体としてはともにデジタル起点に単行本を出して好調です。

ヤンジャンのネット作品については、圧倒的支持を受ける『ワンパンマン』のほか、今期絶好調のアニメ『推しの子』など、ネット展開で大きなヒットを生んでいます。

ヤンマガについては『ファブル』の大ヒットの他、ヤンマガWeb上で、少しHなヤンマガらしい作品などで、次々とスマッシュヒットを出し、やはり好調。DXをほぼ完了しつつある2誌に対して、やはり紙の強いビッグコミックオリジナルが健闘したという形も、少し見えてきます。

そのビッグコミックオリジナルも、5/30にビッグ系5誌を掲載する「ビッコミ」内でネット対応を開始しました。かといって単純に同じ道を行くとも思いにくく、高年齢読者の場合、紙雑誌は判が大きいので読みやすいということなど、色々な影響があるようには思います。

昔こういうようなブログを書いてたのを思い出し、ちょっと興奮しました。
また、ビッコミ、ヤンマガWebは筆者も業務で関わるものになります。ご了承ください。


小学館てれびくん編集部も、ウェブマンガサイト「てれびくんSUPER HERO COMICS」を6/15より開始です。ガガガ文庫原作作品など、強い作品のネット上販促を狙ってのことでしょうか。


Bookliveのクリエイター向け総合プラットフォームサービス「Xfolio(クロスフォリオ)」を WOVN で4言語対応で「言語にとらわれず、すべてのクリエイターが作品を投稿できる環境を構築」とのことです。


これねぇ、良いんですけど、運営主体の人材だけは、本当に良く考えて厳選に厳選を重ねて欲しいのです。本当に成否は人次第ですから。


なるほど、レビューのAI翻訳というのは良いですね。元レビューサイト運営者としては、頑張って欲しいなと思います。

この分野はマネタイズが難しく、レビューを電子書店に貸すブクログのモデルなんかは上手にやってたなぁと思ってるんですが、確かに漫画・Weboonプラットフォームがグローバル展開化していく流れで、各国語のレビューがAI翻訳されるのは、これからの新しいビジネスになるかもですね。世もビジネスも移ろいますなぁ。


海外・WebtoonNews

*:ここから、英語記事などが増えます。自動翻訳等をご利用ください。

ICV2 WEBTOON WEEK 2023
We Focus on the Fastest-Growing Segment of Graphic Novels

米国でコミックなどのニュースを報じる老舗サイトICv2が、今週はWebtoon週間とのことで大量のWebtoon関連記事を投じています。興味深い内容も多く、一気にご紹介します。

ICv2Webtoon特集の序文的な記事ですが、Webtoonは近年グラフィックノベル(現状米国で、日本マンガやWebtoon、アメコミを束ねる言葉)の中でチャート上位を占めており、出版社は紙単行本化の印刷に向けて、パイプラインを構築していっているとのこと。

この記事の下部に、特集の目次がありますので、これらを一通り翻訳しながら眺めるだけでも大分色々わかるかもしれません。以下、いくつかピックアップします。


MARVEL

現在MARVELは多数のWebtoonを出していますが、最大手NAVERのWEBTOONに出している作品は1つのみ、残るはMarvel Unlimitedという自社メディアのみの公開とのこと。このフォーマットがファンに最適と考えているようです。

近いところでは、キャプテン・マーベルシリーズの新シリーズ派生も開始予定とのこと。


DC

一方DCは、バットマン、スーパーマンなどのDC ユニバース作品を無料公開する戦略をとっているそうです。これについては、認知向上に貢献しており、そこから単行本印刷などに繋げる形を狙っているとのこと。日本の雑誌と単行本の関係性に近いのですかね。


NAVER WEBTOON & Wattpad

世界最大のユーザー数を誇るアプリ「WEBTOON」、買収したもともと北米最大級の小説投稿プラットフォーム「Wattpad」、この2つを抱えて北米進出を進めるNAVERは、 ファンからプロへのパイプラインを構築し、その小説原作をWebtoon、印刷したコミックにつなげていく戦略に手ごたえを感じているようです。


Archie Comics

出版社アーチ―・コミックスは、Webtoonの良い点を長編ストーリーテリングがしやすいと言っています。今までのアメコミ形式の作品作りに比べて、印刷を前提としない分、長編を作りやすいというところでしょうか。


漫画家、スティーブ・ベネットの場合

漫画家として、自分もそうだが家族もWebtoonを読んでいるとのこと。いわゆるプロなわけですが、『ロア・オリンポス』のような米国産ヒットWebtoonのほか、普通に韓国産のWebtoonも楽しんでいるとのこと。


アップル、ウェブトゥーン事業に参入

Appleが韓国Webtoonスタジオを抱えてWebtoonに参入したわけですが、韓国Kenaz社は、NAVER・Kakaoの2強支配から逃れるために、Appleと3年間の独占契約を結んだとのこと。むしろこの情報を知りませんでした。


コラム:ウェブトゥーンがコミック経済をどう変えるか

Wetboonの勃興は、北米の漫画市場に大きく影響を与えたようです。これまで国内産のアメコミ市場では、ジャンルと言う面において限定的だったのに対し、Webtoonではロマンティックコメディ(日本だとブロマンスか)やファンタジーなど、あまり北米に無かった作品を増やしているのとのこと。

また、小売業やライセンサーなどにも、その印刷版が書店に並ぶことで影響を与えてるとのこと。どうも一連の記事を見ても、日本ではあまり収益性のあるビジネスと認識されてない「Webtoonの紙単行本化」が、かなり大きいインパクトを持ってるようですね。この辺は、日本の安価な単行本より、米国のコレクション的なアメコミカラー冊子文化のほうが、印刷という面ではWebtoonと相性が良かったのかもしれませんね。

また、クリエイターの仕事面については、トップ層はそれなりに潤いつつも、下位層については要求に対する収入が釣り合わない部分もあり、現在の投資期が過ぎた後にモデル崩壊の懸念などもあるようです。このあたりは、社会的大ヒットが出ると変わってくるんでしょうが、なる早で出さないとねと言うジレンマですね。Webtoonにとってはまだ見ぬ地平ではあります。

【ICv2Webtoon特集の総括】
日米ともに、Webtoonについて市場規模を明言する数字がいまのところまだ決定版的に出てないため、実際のところはまだ何とも言えないが現状ではあります。
ただ、ここ2年盛り上がり、現在実行フェーズに入っている日本のWebtoon業界と、このICv2特集で勇んで語っている米国のWebtoon感は、期待値や温度感が大分違いそうです。

私の印象としては、米国の方が期待値や伸びしろが高い気はしていて、やはり今後のWebtoon輸出は、手堅いアジア圏に対して、夢のある北米市場と言う切り分けイメージでしょうか。
日本のWebtoon勢も伸びる余地の大きい北米にどう合わせて行くかというところが大きいように感じました。この7月のAnimeExpo@Los(7/1-4)Comi-Con@Sandiego(7/20-23)などで、この辺りの手ごたえを感じてこれるかどうかが重要そうです。そこで韓国勢がどう動くかも含めて、注視していけると良いように思いました。

北米のことを聞かれると必ず答えているのですが、現地のことは現地に行かないと、まずわかりません。そして実際に行くと、ちょっと行ったくらいじゃ、全然分かったことにならないと判るんですがw それでも、行かないで適当語ってるよりははるかに大きな一歩を踏み出しています。実務で少しでも関わりがある方が北米市場を知るためには、是非どちらかには行ってくださいませ。

またこの2つのイベントも、それぞれ「アニメ」と「本」がそれぞれ根幹ということで、本質的にはかなり違うものですので、両方行けるとより良いです。悩ましかったのは、パリのJAPAN EXPOが毎年、仲の悪い裏番組みたいにAnimeExpoと重なるような日程で開催してたのですが、今年は7/13~ということのようで、重なっては無いみたいですね。全部行こうとすると、地球1周くらい移動することになっちゃいますがw

---ICv2 Webtoon特集ここまで


米国のLightningWorks社が、同名のマンガNFT取引のビジネスで、250万ドル資金調達したというニュースなんですが、論調から、やはり北米でコミックはコレクションなんだなと感じました。日本では、中古電子書籍の流通スキームとしてNFTを使う例が出て来ていますが、やはり米国とは伝統というか文化が違う感じですね。


韓国、コンテンツラボブルーとREDICEは、カナダUbisoftのグローバルIP「ディビジョン」のWebtoon化を行うとのこと。全世界4000万人のプレーヤーがいたというゲームのビッググローバルIPですね。


カカオが「OROR ep」という新しいプラットフォームのβテストを開始。
Webtoonのストーリーの中に自分が入り込み、他のキャラクターと対話し、物語の結末を変えることができるとのこと。「ストーリーチェンジャー」になれるインタラクティブなチャット アプリなんだそうで、すごいですね。AIが台詞やストーリーを生成するということなんでしょうか。


ベトナムの記事で、Webtoonの普及と映像化などの国際展開に触れてます。


序盤の『推しの子』『あかね噺』の北米ウケの話は、どうあってもやっぱりジャンプ強いなと言うお話ですね。

後半の翻訳者のお話、今後AIの普及が翻訳周りの環境を後退させるか、推進するかですが、個人的にちょっと光明に感じていることもありまして、最近はむしろ翻訳者がAIを駆使して、より活躍するという合わせ技的な未来なども来てくれるかも知れないなと思ったりしています。


これすごいですね。


AI・画像生成関連

これは今週界隈で話題になりましたね。以前『ぱいどん』という作品でモーニングにAIを絡めた連載をした手塚治虫作品一連の流れですが、引き続き物議を醸していますね。個人的には、面白く出来たらみんなの目線が変わるんだろうなと思います。


「『ハンチョウ』AI回」無料公開中とのこと!人の手の極地たる福本作品と、AIの取り合わせは、業界の方なら一見の価値ありと思います。味ですよね、やっぱり。これ、福本先生の作風を別の方がスピンオフして完璧に再現している作品でやっていることが、また味わい深いです。


Adobeは着々と進めていますね。


これらはこれで技術が少しずつ蓄積しつつありますね。


良きにつけ悪きにつけ、VRのOcculusの時同様、日本人が食いついているのですね。


これも物議を醸しましたね。
「乱造が進み、モデル崩壊」という見方もありますが、一方で「AIが自律的にコンテンツを作り始めている(メタに自己学習を開始している)」という、若干SF的でありつつ、ちょっと説得力ある言説も聞こえています。

読み手のフィードバックをAIがインプットできるようになったら、というか実質的にはもう出来てる気もしますが、多くの人のPCやスマホとネットを介して、大きなシナプスが形成され、AIコンテンツをメタに進化させているのやもしれません。

というか、ここではエンタメ業界文脈の話をしてますが、AIが総体として人類を自律的に学習しているのが、現在のメタなフェーズなんだろうとなとは思います。


記事のみ紹介


告知関連

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個人的に、今週感じ入った、あきまんさんのツイートです。


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