【マンガ業界Newsまとめ】Boichi新連載、少年サンデーとLINEマンガで縦横同時連載 など|4/16-98
マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。
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漫画界が新時代に突入する!「webtoon×漫画雑誌」のハイブリッド型連載が実現!
既報ですが、韓国の有力WebtoonスタジオYLAB STUDIOが、『Dr.STONE』などの作画Boichiさんを擁してWebtoonを制作するという発表がありました。
この全容が明らかになったわけですが、
・4/19(水)から、週刊少年サンデーで巻頭カラー連載(横マンガ)
・6月からLINEマンガにて連載開始(Webtoon)
とのことで「ハイブリッド型マンガ」という銘打ち、横マンガとWebtoon連載を同時進行する「新たな漫画界のパラダイム」を提案とのこと。
現在のマンガ制作・Webtoon制作の現場からすると、鼻血の出そうな高負荷な制作環境となりそうですが、もともとYLABをマーベル・DCと肩を並べる世界観で勝負しようと考えていた、代表の尹氏の考えが色濃く反映された戦略のように感じられました。
一昨年の国内Webtoon勃興開始から3年目を迎え、現在の国内市場においては、Webtoonは内外での今後の成長を見据えつつも、その市場成長を促す作品作りを、いつまで我慢して投資し続けられる勝負か?と言った時期を迎えているように思います。
成長率は落ち着きつつあるも、横マンガの市場はやはり堅調で巨大。海外Webtoon市場の見通しや将来への期待は、国内横漫画市場の牙城の前にいかに伍していくか?というところが現実的な課題かと思います。
その中で、両市場を取りに行く「横マンガ・Webtoonのサイマル進行」がどういった成果を上げて行くか?興味深いところです。
鳴り物入りの作品を、ブロックバスター戦略と言う形で大きくしていくWebtoonに対して、多産多死な環境で、過去にないヒット作品の芽を育む日本式のマンガ市場がどう反応するか?せっかくの新たな取組ですから、成功していただきたいと思いました。
Webtoon News
アップルも「縦読みマンガ」に参入とのこと。韓国スタジオの独占配信作品もあるようです。ある程度の期間をかけてリリースしているとは思うのですが、amazonなどが本格的に参入したあとにこの座組となると、ちょっと遅きに失してる感はありますね。
先にWebtoon参入を表明した鷹の爪団などのDLEですが、第1弾のWebtoonを日本テレビと共同開発。フィギュアスケートを舞台として、2.5次元俳優の橋本祥平さんを原案に据えているとのこと。ユニークですね。
仏Ubisoftの世界的ヒットゲーム「アサシン クリード」シリーズのWebtoon版が、LINEマンガ/NAVERでスタートとのこと。超ビッグタイトルのWebtoon化に海外でも話題になっています。あの、ダークでリアルなイメージがどのようにWebtoonに落とし込まれるか楽しみですね。
国内News
文芸春秋のコミックサイト「BUNCOMI」が大幅リニューアルオープンとのこと。文芸春秋のコミックと言えば、国内メディアでも有数のPVを誇る 文春オンラインの傍らで作品を読ませる形でしたが、コミック専門のトップページを準備してのぞむようですね。
いま、文春にはマンガ業界各所から人が集まっていますので、これから動きが大きくなっていくところなのでしょう。
テラーノベルは、ぶんか社と共同で青年向けコミック誌『comic Killa(コミック・キラ)』を創刊とのこと。
「よもんが」など、マンガアプリを運営するぶんか社ですが、もともとホラー作品を多数制作しており、多くのホラー原作を抱えるテラーと組むことで、双方の良さが活きる座組となっていそうです。
KADOKAWAのハルタが、Webマンガ誌ハルタオルタをスタート。
まずは、「ヒナまつり」の大武政夫さんの連載など3作品を連載開始とのこと。ハルタと言えば精緻な作画の作品が集まるイメージですが、Webでどういった展開をしていくか、楽しみですね。
LINEマンガ10周年企画の第3弾で、合併なったLINEマンガとebookjapanのそれぞれの代表、金信培(キムシンベ)さんと髙橋将峰さんという2人の現共同代表インタビューです。
記事の中ではそれぞれのマンガへの思いを語っていますが、もともとYahoo/ebookjapan側の高橋さんが、LINEマンガの成り立ちなどについて語っているのが興味深いです。それは勿論お詳しいとは思うのですが、そこから思うに、締めにもあるように高橋さんが国内担当、金さんが海外担当という役割分担があるというところなのでしょう。
また、LINEマンガを取り巻く将来像について、今のスマホがデバイスとして全盛の時代がいつまで続くかわからないということを前提としつつ、IPを多様に展開する形をイメージしているのが印象的でした。
一般的な国内横マンガのように、「まずはアニメ化」的な指向と言うよりは、より拡散的にIPを扱って行こうというところでしょうか。
もうちょっと聞きたい無いなぁという所としては、絶賛成長中のNAVERによるグローバルへの足掛かりとして、LINEマンガが日本側の窓口としてどんな役割を担っていくか?あたりでしょうか。
<筆者の所属する会社のニュースです>
3月に白泉社「ヤングアニマルWeb」秋田書店「ヤンチャンWeb」と相次ぎWeb雑誌「コミチ+」を提供。末には小学館、秋田書店の2社から出資を受けたコミチの代表、萬田大作氏のインタビューです。
これはちょっとユニークで、マンガをプロモーションしていく際にお笑い芸人やインフルエンサーにサポートしてもらうというのは良くある話なのですが、公式でアンバサダーにするというのは面白いですね。
SKEの二次元同好会というのはまた良いですね。強そうです。No9はマンガレビューサイトの運営などにも関わってきているため、そうしたところの強みが活きていると思います。
「ゼブラック」「ジャンプ+」といった集英社のデジタル系の取組が、しおりやカフェギャラリーなど、リアル向けの取組を続けていますね。なにかそうしたきっかけがあったのでしょうか。
メディアドゥが2022年度の通期決算の結果、純益で32.9%減と発表しました。大手紙取次トーハンとの取組でNFT事業などを進める中、LINEマンガの契約終了(2つ目の記事)が大きく響いているとのこと。とはいえ、現状1016.67億円の売上を、2年後には1200億円、4年後には1500億円に伸ばすとしています。
韓国コンテンツ振興院(KOCCA)というものがありまして、位置取り的には日本のCOOL-JAPAN機構と並ぶものです。やってることは全然違いますが。
それで、私は国際漫画賞などの運営をしていたことから、この両者と接点があったのですが、やはり段違いにKOCCAの人の方が優秀と言うか、的を得た行動をしていたような印象があります。
日本側は「勉強に来ました」という姿勢のまま、何故か勉強のまま実務が進んでしまい、なにやら役に立たない取組に沢山のお金が投じられている惨劇を数多見てきました。
一方、KOCCAの人は私に会うなり質問攻めで「なんで日本のこのやり方は上手く行くのか?」と、私のというか、日本の知見や経験を少しでも得ようとする姿勢は鬼気迫るものがありました。個人的に、後者の方がお付き合いをしていて気持ち良いです。本気の人が好きなので。
この一連の記事では、日韓の環境の違いという前提踏まえたうえで、KOCCAが取り組んできた「人と設備(場)に投資する。作品や内容には口を出さない」という基本姿勢が明らかになっています。
本当にそうです。それが一番です。さすが飯田さん、良い記事です。
海外News
JETROによる、2021年の中国コンテンツ市場調査ということで、映画・テレビ、アニメ、音楽、出版、ゲームにメタバースと、多岐に渡る調査になっています。
JETROは不定期かつ業種や範囲もランダムで、ときたまこういう調査をしてくれるのですが、今回は出版関連・エンタメで中国です。とても広い範囲のデータが出ています。
さて出版ですが、新聞・出版産業、というくくりになっています。
その新聞出版作業の総売り上げは1.86兆元(約36.27兆円)とのこと。範囲もかなり違いましょうが、昨年の日本の出版産業規模は約1.6兆円ですので22.6倍規模と言うところでしょうか。(産業としての範囲が大分違いそうです。特に、コピー・印刷という日本ではこういう指標の際にあまり足さない分野が70%のシェアになっており、参考程度にです。)
残念ながら紙も含めた市場では「漫画」を切り出しての数値はありませんでした。
それでも拾って行くと「ネット動漫」=アニメとマンガのネット販売が293.4億元(5.7兆円)となっています。やはりかなり大きいですね。
また、オーディオブックのユーザー数が4.2億人2000億円程の市場に育っているなど、興味深い数値が出ています。
この記事は、先週業界で話題になりました。
マーベルのリーダー、パルムッター氏が、投資効率を重要視していたら解雇されたという記事で、経営者としてはそういう考え方もあるやもですが、エンタメ分野で個々の興行収入(コンテンツ売上)を重視しないことには、クリエイターへの還元が先細るので、未来は無いんじゃないかと業界の人なら考える気がするのですが、プロ経営者がディズニーのトップだったという話というところでしょうか。
なんともアメリカらしいお話でした。
<英語記事です。自動翻訳など活用してご覧ください>
キャプテンアメリカとMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に関する記事です。フィギュアと合せてコミックカバーそのものが商品になっています。アメコミらしい感じですね。
米国のリアル書店復活にコミックのインパクトが大きかったという記事です。配信によるアニメ人気から来るコミックの需要は子供向けが中心になり、この場合はECよりリアル書店への恩恵が大きかったという文脈です。説得力があります。
ちなみに『BULUEGIANT』がアメリカで人気とタイトルから読めなくもないですが、これは筆者の方の願望だったようです。あと、この方国内電子コミックの実情にあまり詳しく無いようですが、米国事情に詳しい方のようなのでさもありなんです。それくらい環境が違うんですよね。日米は。
2021年のNAVER上で活躍した作家の収益が、年間で10億円を超えたというケースをもって、米経済紙フォーブスもWebtoonに注目しているというお話です。
AIイラスト・画像生成関連
多くのクリエイターが気にしている、AIによる仕事の変化。中国のゲームイラストレーターのケースが記事となり話題になりました。仕事が減ったり、社員イラストレーターが解雇されるなどというケースもあるようです。
イラストばかりか、訳ありで起用できなくなった声優の声をAIで再現して使用するなど、えらいことになっていますね。
また、例えば1日1シーン作っていたところを、AIによる省力化で1日40シーン作る新たな工程を要求される現場もあるなど、便利になるほど忙しくなる法則のようなケースもあるとか。中国は色々早いですね。これがこの後どうなるかのか。。
画像生成AI「Stable Diffusion」の開発企業である英Stability AIの日本法人代表、ジェリー・チー氏が、質問に答える形の記事です。
色々な要素はありますが、やはりまだ開発してる側もこなれてないというか、リリース以来ずっとやってきても、これからどうなるかは判らないという感じだろうなと言う印象です。
基本的に、本や電子書籍、映像などの、所謂正規版権ものを販売する立場のAmazonも画像生成AIに参入とのこと。ちょっと参入するビジネスのイメージがつかないですね。
ライブ会場に、ユーザーが生成した画像がパネルとして表示されるとのこと。エンタメの形まで変わっていきますね。
話題のChatGPTは本来テキストを入れてテキストが帰ってくるものですが、Stable Diffusionと合わせ技で、欲しい画像の指示をAIが代わりに作ってくれるというもののようです。
講談社では、過去の文字やマンガ等、AIで掘り起こしてより多くの販売に繋がる仕組みを試行錯誤中とのこと。
記事のみ紹介
告知関連
一般社団法人ABJによる「STOP!海賊版」の取組の中で、動画が作られているのですが、これが本日現在で170万回再生越えです。
マンガ好き的にはかなりグッとくる内容です。
是非、サビの変調するところまで聞いてください。
お陰様で、この「マンガ業界Newsまとめ」は、予定通りなら4/30の回で100回を迎えてしまいます。番外編とかも書いてるので、100本はもう超えてるんですが、週1なのでナンバリング回だけでだいたい2年です。3日坊主の私が良く続きました。
ということで、いつもの芝辻さんとのスペースやろうと思ます。何をやるか、他に誰を呼ぶか、まだ決めてませんが、良ければご予約どうぞです。
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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンかTwitterのフォロー、よろしくお願いします!
現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。
コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。
コミチに関するお問い合わせは、こちらまで。
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